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紅椿白椿
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「あ! 姐さん、お疲れ様っス!」
「今日も自治会だったんスね。このとこえらく頻繁みてえで」
「おう。今年はウチ、イベント設営の担当だからさ。夏祭りの準備で忙しいんだわ」
「そうっスか。お疲れっス!」
と、泰造と小川に気付いた紫月がにこやかな声を上げた。
「親方! 駈飛ちゃんも。今日も剪定? お疲れなぁ!」
フレンドリーに声を掛けられて小川は目を輝かせた。
「姐さん! お世話になってます!」
小川は例の不法侵入事件以降、この紫月には駈飛ちゃんと呼ばれていた。謝罪に来た時の態度が好感を持たれたようで、以来親しみを込めて接してくれるこの姐さんが小川も大好きであった。
「はぁ……相っ変わらず美人だなぁ。若頭さんは超絶男前だし、姐さんはめちゃめちゃ美人だし。マジ最高っスよね!」
奥の組事務所へと入って行く紫月と若い衆らの後ろ姿を見送りながら、小川はデレデレと頬をゆるませていた。
「おいコラ、駈飛! デレたツラしてんじゃねえ! ったく、てめえはあのご夫婦のこととなると仕事そっちのけでデレやがる……! っと、しょーもねえヤツだ」
泰造にゲキを飛ばされて、小川はタジタジと舌を出してみせた。
「すんません。けどなぁ、マジ似合いってーか……眺めてるだけで溜め息もんなんだからしょーがねえっスよ」
小川は初めてのあの日から鐘崎と紫月には尊敬というか憧れというか、ファンにでもなってしまったかのような感情を抱いていていたのだった。だからこそ今しがた若い衆らが話していた話題にも興味が尽きない。どこかの娘が若頭に気があるような話向きが気に掛かって気に掛かって仕方なかった。
「あーあ、ヘンなことにならなきゃいいけどなぁ……。どこぞの女が若さんに横恋慕とか、マジ勘弁して欲しいね」
ボケーっと立ち尽くしながらも眉根を寄せる。
「そりゃ最初はさ、野郎同士でチュウとか目の当たりにしちまって……ビックリしたし、ビビリもしたけどさぁ。けど若頭さんも姐さんもすげえあったけえ人だったし、おまけに超絶イケメンに超絶美人だろ? あの二人が仲良くやってる姿を見れんのが俺の癒しっつかさ。近頃じゃ楽しみになりつつあるんだよなぁ」
ブツブツと独りごちる様子にまたもや泰造からのゲキが飛ぶ。
「駈飛! ボサっとしてねえでこっち持ってろ! ったく、何度言わせんだ」
「あ、へーい! すいやせん。今行きやーす!」
いそいそと仕事に戻っていく小川であった。
そんな小川や若い衆らの危惧が具体的になったのは、それから数日後のことだった。
それはとある日の夕方、珍しくも邸にいた鐘崎が犬を連れて散歩に出掛けようとしていた時だった。例によって紫月は自治会の会合に出ていたので、迎えがてら若い衆と共に犬たちを散歩させようかという話向きになったのだが、門を出たところで訪ねて来た鞠愛と鉢合わせてしまったのだ。
「今日も自治会だったんスね。このとこえらく頻繁みてえで」
「おう。今年はウチ、イベント設営の担当だからさ。夏祭りの準備で忙しいんだわ」
「そうっスか。お疲れっス!」
と、泰造と小川に気付いた紫月がにこやかな声を上げた。
「親方! 駈飛ちゃんも。今日も剪定? お疲れなぁ!」
フレンドリーに声を掛けられて小川は目を輝かせた。
「姐さん! お世話になってます!」
小川は例の不法侵入事件以降、この紫月には駈飛ちゃんと呼ばれていた。謝罪に来た時の態度が好感を持たれたようで、以来親しみを込めて接してくれるこの姐さんが小川も大好きであった。
「はぁ……相っ変わらず美人だなぁ。若頭さんは超絶男前だし、姐さんはめちゃめちゃ美人だし。マジ最高っスよね!」
奥の組事務所へと入って行く紫月と若い衆らの後ろ姿を見送りながら、小川はデレデレと頬をゆるませていた。
「おいコラ、駈飛! デレたツラしてんじゃねえ! ったく、てめえはあのご夫婦のこととなると仕事そっちのけでデレやがる……! っと、しょーもねえヤツだ」
泰造にゲキを飛ばされて、小川はタジタジと舌を出してみせた。
「すんません。けどなぁ、マジ似合いってーか……眺めてるだけで溜め息もんなんだからしょーがねえっスよ」
小川は初めてのあの日から鐘崎と紫月には尊敬というか憧れというか、ファンにでもなってしまったかのような感情を抱いていていたのだった。だからこそ今しがた若い衆らが話していた話題にも興味が尽きない。どこかの娘が若頭に気があるような話向きが気に掛かって気に掛かって仕方なかった。
「あーあ、ヘンなことにならなきゃいいけどなぁ……。どこぞの女が若さんに横恋慕とか、マジ勘弁して欲しいね」
ボケーっと立ち尽くしながらも眉根を寄せる。
「そりゃ最初はさ、野郎同士でチュウとか目の当たりにしちまって……ビックリしたし、ビビリもしたけどさぁ。けど若頭さんも姐さんもすげえあったけえ人だったし、おまけに超絶イケメンに超絶美人だろ? あの二人が仲良くやってる姿を見れんのが俺の癒しっつかさ。近頃じゃ楽しみになりつつあるんだよなぁ」
ブツブツと独りごちる様子にまたもや泰造からのゲキが飛ぶ。
「駈飛! ボサっとしてねえでこっち持ってろ! ったく、何度言わせんだ」
「あ、へーい! すいやせん。今行きやーす!」
いそいそと仕事に戻っていく小川であった。
そんな小川や若い衆らの危惧が具体的になったのは、それから数日後のことだった。
それはとある日の夕方、珍しくも邸にいた鐘崎が犬を連れて散歩に出掛けようとしていた時だった。例によって紫月は自治会の会合に出ていたので、迎えがてら若い衆と共に犬たちを散歩させようかという話向きになったのだが、門を出たところで訪ねて来た鞠愛と鉢合わせてしまったのだ。
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