極道恋事情

一園木蓮

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ダブルトロア

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 一件落着の後、隼は長男夫婦に新しい命が宿っていることを知らされた。妻の香蘭も非常に慶び、ファミリーは一気に幸せに湧いたのだった。
「さて、息子たちよ。ウィーンではゆっくりと過ごせなかっただろうからな。焔たちが日本に帰る前に仕切り直しというのもなんだが、広東オペラの席を用意した。場所はシーチュー・センターだ。ウィーンのオペラとはまた趣きが違うだろうが、皆でひと時の思い出を作っていってくれれば嬉しい」
 シーチュー・センター、通称戯曲センターは香港の西九文化区にオープンした比較的新しい文化施設だ。広大なシアターでは広東オペラなどが演じられていて、香港の新しいランドマークとも言われている場所である。
「ここならば家からも近いし、美紅の体調の面でも問題なかろう。焔や遼二たちも楽しんでいってくれ」
 隼の手配で、一同は広東オペラを観劇してから帰国してすることとなった。ウィーンでは開幕直後に拉致されたりとたいへんだったが、またひと味違った雰囲気の劇場を満喫できそうだ。周や鐘崎も、そんな隼の心遣いを有り難く思うのだった。演目はかの有名な三国志演義で、皆は悠久の大地へと思いを馳せながら香港でのひと時を楽しんだのだった。



◇    ◇    ◇



 そうして帰国の時がやってきた。本来ならばウィーンから直接日本へ帰る予定だったのだが、事件方々こうして香港にも立ち寄れて、両親の顔も見られたことだしと、周や冰にとっては良き旅となったことに違いはない。
 ファミリーに見送られて、空港ではまたしばしの別れを惜しむかのように皆で握手を交わし合っていた。
「次に会う時は兄貴たちの子供の顔が拝めるな」
「お義姉様、くれぐれもお身体をお大切になされてください。赤ちゃんが産まれる頃に飛んで会いに参りますね!」
 周と冰にそう言われて、兄の風と美紅も名残惜しそうに微笑んだ。
「その時は俺たちもお祝いに駆け付けさせていただきますよ!」
「だな! 焔の叔父ちゃんと一緒に会いに来るからなぁ!」
 鐘崎と――そして紫月の方はお腹の子に向かってそんなふうに話し掛けている。
「おいおい、”叔父ちゃん”じゃなくて”お兄ちゃん”な!」
 周はまだお兄ちゃん呼びにこだわっているようだ。美紅のお腹の前で屈んでいる紫月らを見下ろすように小鼻を膨らませながら、チラリと片目を開けては『うんうん!』と腕組みをしている様子に、皆からドッと笑いが上がった。
「じゃあな、兄貴。義姉さん、親父とお継母も! また帰って来ます。どうぞお元気で」
 ファミリーに見送られながら周らは香港を後にしたのだった。



◇    ◇    ◇


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