824 / 1,212
ダブルトロア
36
しおりを挟む
「まあアレだよね。今回は偶然にもこの日本刀が手に入ったってのが大きかったスよね。実は以前、ウチの組に暴走族の鎮圧に手を貸してくれって依頼が来たことがあったんですよ。そん時に遼と組の若い奴らと一緒に乗り込んで行ったんですけど、さっきと同じようなパフォーマンスを披露してね。そしたら族のヤツらがおとなしくなってくれて、鎮圧はあっけなく成功したんです。ヘンな話ですが、その後は一気に和気藹々になってね。ウチん組に入りてえって言い出すヤツまで出てくる始末で」
例え国は違えども、同じような暴走グループなら思考は似たようなものではないかと思ったのだそうだ。
「ヤツらには到底無理だろうって大技を見せつけることで鎮圧したってことだな?」
曹がなるほどとうなずく傍らで、
「アレですね、昔流行ったチキンレースのようなものでしょうか。断崖絶壁まで二台が全速力で走り、どちらがよりギリギリまで行けるかっていうやつ」
昔はそれで度胸と根性を測り、負けた方は素直に引き下がったものですよと、鄧も懐かしそうに笑った。
「チキンレースとは、これまた鄧浩の口からそんな言葉が出るとは!」
曹がまたもや受けながらも、紫月の技を讃えてみせた。
「しかしまあ、あの状況で咄嗟にあんなことを思いついて、しかも実際にやってのけてしまうんだから! やはり紫月君はすごいお人だ。それも日本刀で峰打ちとは、あの長刃を目にしただけでも外国人の彼らにとっては腰が抜けただろうな」
「しかも仕草が逐一粋なんですよ。あんなに不安定な体勢で峰打ちというのも信じ難いが、刃による切り傷は一切つけないというのは、もはや神業としか言いようがありませんよ。私は離れた位置で全貌を拝見できたので圧巻でした!」
曹と鄧にベタ褒めされて、紫月は照れ臭そうに頭を掻いた。
「うわぁ、俺も見たかったなぁ」
冰が暢気な声を上げると、
「何言ってー! 冰君のトイレットプリーズっちゅう演技もサイコーだったじゃね!」
そうですねと言って皆で盛り上がった。適材適所というのだろうか、皆それぞれに自分の役割をきっちりとこなしながらも、仲間を信じて互いの背中を預け合うことができた。窮地を乗り越えられたのはそんな絆が築けた賜物だと、誰もが清々しい表情を輝かせるのだった。
◇ ◇ ◇
例え国は違えども、同じような暴走グループなら思考は似たようなものではないかと思ったのだそうだ。
「ヤツらには到底無理だろうって大技を見せつけることで鎮圧したってことだな?」
曹がなるほどとうなずく傍らで、
「アレですね、昔流行ったチキンレースのようなものでしょうか。断崖絶壁まで二台が全速力で走り、どちらがよりギリギリまで行けるかっていうやつ」
昔はそれで度胸と根性を測り、負けた方は素直に引き下がったものですよと、鄧も懐かしそうに笑った。
「チキンレースとは、これまた鄧浩の口からそんな言葉が出るとは!」
曹がまたもや受けながらも、紫月の技を讃えてみせた。
「しかしまあ、あの状況で咄嗟にあんなことを思いついて、しかも実際にやってのけてしまうんだから! やはり紫月君はすごいお人だ。それも日本刀で峰打ちとは、あの長刃を目にしただけでも外国人の彼らにとっては腰が抜けただろうな」
「しかも仕草が逐一粋なんですよ。あんなに不安定な体勢で峰打ちというのも信じ難いが、刃による切り傷は一切つけないというのは、もはや神業としか言いようがありませんよ。私は離れた位置で全貌を拝見できたので圧巻でした!」
曹と鄧にベタ褒めされて、紫月は照れ臭そうに頭を掻いた。
「うわぁ、俺も見たかったなぁ」
冰が暢気な声を上げると、
「何言ってー! 冰君のトイレットプリーズっちゅう演技もサイコーだったじゃね!」
そうですねと言って皆で盛り上がった。適材適所というのだろうか、皆それぞれに自分の役割をきっちりとこなしながらも、仲間を信じて互いの背中を預け合うことができた。窮地を乗り越えられたのはそんな絆が築けた賜物だと、誰もが清々しい表情を輝かせるのだった。
◇ ◇ ◇
11
お気に入りに追加
877
あなたにおすすめの小説


鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。




淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる