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ダブルトロア
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そうしてオペラ観劇の日がやってきた。周ら旦那組はクライアントと接待の会食に出掛ける。ホテルの部屋ではタキシードに着替えた冰と紫月らが互いの出立ちを褒め合ってはキャッキャとはしゃいでいた。
「おー、冰君カッコいいじゃね!」
「紫月さんこそー! 今日はまた一段と素敵です!」
着替えを終えた鐘崎と紫月が隣の冰らの部屋へ迎えにやって来たのだ。観劇組の二人は黒のタキシードに黒の蝶タイ、カフスボタンは以前香港で買ったそれぞれの名にちなんだ宝石の物だ。
「あ、やっぱ冰君もそのカフス持って来たんだな!」
紫月が自分のカフスを見せながら嬉しそうな声を上げている。
「ええ。香港で皆さんと一緒に白龍が選んでくれた物です。紫月さんのも素敵ですねー!」
「うん! 俺ンも遼が選んでくれたやつ」
周と鐘崎はダークスーツ姿だが、カフスはそれぞれ伴侶とお揃いで買った物を身につけていた。
「一緒に観に行ってやれなくてすまんな」
「お前らが帰る頃には俺たちも戻れるだろう。楽しんで来いよ」
旦那たちがそんなふうに送り出してくれる。
「うん、ありがとね白龍!」
「遼たちも気ィつけてなぁ」
そんな話をしていると、風と美紅もやって来た。
「うわぁ! お姉様、すごく素敵ですー!」
「ホント! 超綺麗だ」
美紅のドレスはその名にちなんだ真紅のシルクだ。襟周りには凝った刺繍とラインストーンが散りばめられていて、キラキラとゴージャスに輝いている。ドレスの上に羽織っている丈の短いファーコートも彼女の美貌を引き立てていて本当に美しかった。
それをエスコートしている風の方も淡い色合いのシルク製のスーツ姿だ。周や鐘崎のダークスーツも言うことなしに格好良いが、こうした淡い色合いが似合うのも風ならではといえる。
「お兄様も素敵ですね!」
「うんうん! 上品な雰囲気が風兄ちゃんにピッタリだね!」
「ありがとうな、冰、紫月!」
義弟らに見せる微笑みもスーツさながらよくよく品がある。周と鐘崎はどちらかといえば凄みのある粋な印象だが、この兄は王道の王子様な雰囲気が何ともいえずによく似合ってしまうのだ。
「それじゃそろそろ出掛けるか。観劇前のディナーの店は予約してある。場所は曹と鄧に伝えてあるから」
一同は揃ってロビーまで降りてから、それぞれ迎えの車へと乗り込み、そこで別れた。
外はちょうど日が落ちたばかりで、まだ空がうっすらと明るく、宵闇が降りる少し前でとても美しかった。ウィーンの街並みにイルミネーションが灯り出して雰囲気も上々だ。
「今日のレストランはフレンチの専門店だ。観劇前だから軽めのフルコースだが、ワインは周風がセレクトしてくれている」
助手席に乗った曹が皆を振り返りながら期待していいぞとガッツポーズを繰り出す。そんな曹も鄧もやはりタキシード姿なので、普段よりもまた一段と男前ぶりをアップしていた。
「デザートはザッハトルテとベルギーショコラのアイスクリームだそうだよ」
「うっは! やったね! ショコラ尽くし」
早速に食指が疼きそうだとばかりに紫月が満面の笑みを見せる。
「紫月君も冰君も甘い物には目がないとか」
「そうなんですよ。特に紫月さんは甘味大魔王なんて言われてますもんねー」
「大魔王か。そいつぁすごい!」
あははは――と、車内は賑やかな笑い声であふれて楽しげだ。まさかこの直後にとんでもない企てが待っているなどとは、誰もが思うはずもなかった。
◇ ◇ ◇
「おー、冰君カッコいいじゃね!」
「紫月さんこそー! 今日はまた一段と素敵です!」
着替えを終えた鐘崎と紫月が隣の冰らの部屋へ迎えにやって来たのだ。観劇組の二人は黒のタキシードに黒の蝶タイ、カフスボタンは以前香港で買ったそれぞれの名にちなんだ宝石の物だ。
「あ、やっぱ冰君もそのカフス持って来たんだな!」
紫月が自分のカフスを見せながら嬉しそうな声を上げている。
「ええ。香港で皆さんと一緒に白龍が選んでくれた物です。紫月さんのも素敵ですねー!」
「うん! 俺ンも遼が選んでくれたやつ」
周と鐘崎はダークスーツ姿だが、カフスはそれぞれ伴侶とお揃いで買った物を身につけていた。
「一緒に観に行ってやれなくてすまんな」
「お前らが帰る頃には俺たちも戻れるだろう。楽しんで来いよ」
旦那たちがそんなふうに送り出してくれる。
「うん、ありがとね白龍!」
「遼たちも気ィつけてなぁ」
そんな話をしていると、風と美紅もやって来た。
「うわぁ! お姉様、すごく素敵ですー!」
「ホント! 超綺麗だ」
美紅のドレスはその名にちなんだ真紅のシルクだ。襟周りには凝った刺繍とラインストーンが散りばめられていて、キラキラとゴージャスに輝いている。ドレスの上に羽織っている丈の短いファーコートも彼女の美貌を引き立てていて本当に美しかった。
それをエスコートしている風の方も淡い色合いのシルク製のスーツ姿だ。周や鐘崎のダークスーツも言うことなしに格好良いが、こうした淡い色合いが似合うのも風ならではといえる。
「お兄様も素敵ですね!」
「うんうん! 上品な雰囲気が風兄ちゃんにピッタリだね!」
「ありがとうな、冰、紫月!」
義弟らに見せる微笑みもスーツさながらよくよく品がある。周と鐘崎はどちらかといえば凄みのある粋な印象だが、この兄は王道の王子様な雰囲気が何ともいえずによく似合ってしまうのだ。
「それじゃそろそろ出掛けるか。観劇前のディナーの店は予約してある。場所は曹と鄧に伝えてあるから」
一同は揃ってロビーまで降りてから、それぞれ迎えの車へと乗り込み、そこで別れた。
外はちょうど日が落ちたばかりで、まだ空がうっすらと明るく、宵闇が降りる少し前でとても美しかった。ウィーンの街並みにイルミネーションが灯り出して雰囲気も上々だ。
「今日のレストランはフレンチの専門店だ。観劇前だから軽めのフルコースだが、ワインは周風がセレクトしてくれている」
助手席に乗った曹が皆を振り返りながら期待していいぞとガッツポーズを繰り出す。そんな曹も鄧もやはりタキシード姿なので、普段よりもまた一段と男前ぶりをアップしていた。
「デザートはザッハトルテとベルギーショコラのアイスクリームだそうだよ」
「うっは! やったね! ショコラ尽くし」
早速に食指が疼きそうだとばかりに紫月が満面の笑みを見せる。
「紫月君も冰君も甘い物には目がないとか」
「そうなんですよ。特に紫月さんは甘味大魔王なんて言われてますもんねー」
「大魔王か。そいつぁすごい!」
あははは――と、車内は賑やかな笑い声であふれて楽しげだ。まさかこの直後にとんでもない企てが待っているなどとは、誰もが思うはずもなかった。
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