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身代わりの罠
33(身代わりの罠 完結)
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「さて、俺たちも帰るとするか」
「おう!」
「そういえばな、一之宮! さっきお前とあの女が仲良さそうに喋ってるのを見て、こいつがキィキィ言いながらヤキモチを焼いてたぞ?」
周が鐘崎の首根っこを抱えるように腕を回して、ニヤっとしながら意地悪く笑う。
「そうそう! お前さんに粉かけるような輩がいたらブっ潰すとか言ってたよねぇ」
帝斗までもが『フフン』と胸を張るオマケ付きで、ニヤニヤと嬉しそうだ。
鐘崎はいたたまれない顔つきで片眉を上げてはバツの悪そうに視線を泳がせつつも、ガラにもなくその頬を朱に染めてしまった。
「ほええ? なになに? 遼、お前妬いてくれたんか?」
紫月が冷やかすと、鐘崎はフッと視線をゆるめながら存外素直に笑った。
「ああ。妬いた」
「マジ?」
「大マジだ!」
カハハハと紫月は笑い、鐘崎の腕を肘で突きながら、とびきり嬉しそうに頬を染めてみせた。
じゃれ合う二人を見守る周と帝斗の視線もまた、そこはかとなく幸せに満ちている。
「なんだカネ、今日はえらく素直じゃねえか」
「ふふふ、遼二は元々素直なのさ!」
「その通り! むっちゃ素直な永遠の少年ってところだな!」
三人に好き放題言われて鐘崎は形無しだ。
「ま、けどそこが俺にゃ堪んねえっつか、とりま自慢の旦那だからさぁ」
ペロりと舌を出しながらフォローの言葉も忘れない。そんな嫁さんに、鐘崎は破顔するほど幸せそうに瞳を細めてしまった。
「おお、おお! お熱いことで結構だな、カネ!」
「ホント! 羨ましい限りだねぇ」
友らの冷やかしの言葉ひとつ、すべてが幸せで堪らない。
「ああ。ああ……本当にな。ずっとお前に側にいてもらえるよう、俺も精進しなきゃいけねえ」
またもや素直にそんなことを口走った鐘崎を取り囲んで、
「おや、本当に素直だこと!」
「雪でも降るんじゃねえか? なぁ、カネ!」
「カハハハ! そう心配すんな、遼。俺ァ、てめえがもう要らねっつっても、一生側でまとわり付いててやっからさぁ」
「紫月……」
それは本当か? というように瞳をまん丸くして感嘆の表情でいる。
「……約束だぜ。こんな俺だが……ずっと……生涯ずっと側にいて離れねえと」
「任せろ!」
再び破顔するほどに嬉しそうな顔をした鐘崎を、両脇から周と帝斗が突っついた。
「あー、熱い熱い! 熱くてやってらんねー」
「ホントだねぇ。何か冷たい物でも奢ってもらわないと!」
周と帝斗がからかえば、
「おー、いいね! んじゃアイスクリームでも食ってくかぁ!」
ちょうど目の前にあったカフェレストランのショーケースを指差しながら、すかさず紫月が身を乗り出してはしゃぎ顔だ。
「おいおい、一之宮! アイスクリームかよ。相変わらず甘味大魔王だな」
「僕はアイスティーがいいね」
「俺、アイスコーヒーな!」
ショーケースを覗き込んではすっかり奢ってもらう算段になっている様子に、鐘崎はタジタジと頭を掻いては笑った。
「いいぞ。お前らには世話になったことだしな。この際アイスクリームなんてケチなことは言わねえ。とびきり豪華なディナーを振る舞わせてもらうさ!」
「おや! それは光栄!」
「そんじゃ冰にも連絡せにゃ!」
「やったね! んじゃ、冰君を迎えに行きがてら東京戻るか! 今日はお疲れさん会で打ち上げといくべ!」
笑い声の絶えない、そんな穏やかな一日が今日もまたゆっくりと暮れていくのだった。
身代わりの罠 - FIN -
「おう!」
「そういえばな、一之宮! さっきお前とあの女が仲良さそうに喋ってるのを見て、こいつがキィキィ言いながらヤキモチを焼いてたぞ?」
周が鐘崎の首根っこを抱えるように腕を回して、ニヤっとしながら意地悪く笑う。
「そうそう! お前さんに粉かけるような輩がいたらブっ潰すとか言ってたよねぇ」
帝斗までもが『フフン』と胸を張るオマケ付きで、ニヤニヤと嬉しそうだ。
鐘崎はいたたまれない顔つきで片眉を上げてはバツの悪そうに視線を泳がせつつも、ガラにもなくその頬を朱に染めてしまった。
「ほええ? なになに? 遼、お前妬いてくれたんか?」
紫月が冷やかすと、鐘崎はフッと視線をゆるめながら存外素直に笑った。
「ああ。妬いた」
「マジ?」
「大マジだ!」
カハハハと紫月は笑い、鐘崎の腕を肘で突きながら、とびきり嬉しそうに頬を染めてみせた。
じゃれ合う二人を見守る周と帝斗の視線もまた、そこはかとなく幸せに満ちている。
「なんだカネ、今日はえらく素直じゃねえか」
「ふふふ、遼二は元々素直なのさ!」
「その通り! むっちゃ素直な永遠の少年ってところだな!」
三人に好き放題言われて鐘崎は形無しだ。
「ま、けどそこが俺にゃ堪んねえっつか、とりま自慢の旦那だからさぁ」
ペロりと舌を出しながらフォローの言葉も忘れない。そんな嫁さんに、鐘崎は破顔するほど幸せそうに瞳を細めてしまった。
「おお、おお! お熱いことで結構だな、カネ!」
「ホント! 羨ましい限りだねぇ」
友らの冷やかしの言葉ひとつ、すべてが幸せで堪らない。
「ああ。ああ……本当にな。ずっとお前に側にいてもらえるよう、俺も精進しなきゃいけねえ」
またもや素直にそんなことを口走った鐘崎を取り囲んで、
「おや、本当に素直だこと!」
「雪でも降るんじゃねえか? なぁ、カネ!」
「カハハハ! そう心配すんな、遼。俺ァ、てめえがもう要らねっつっても、一生側でまとわり付いててやっからさぁ」
「紫月……」
それは本当か? というように瞳をまん丸くして感嘆の表情でいる。
「……約束だぜ。こんな俺だが……ずっと……生涯ずっと側にいて離れねえと」
「任せろ!」
再び破顔するほどに嬉しそうな顔をした鐘崎を、両脇から周と帝斗が突っついた。
「あー、熱い熱い! 熱くてやってらんねー」
「ホントだねぇ。何か冷たい物でも奢ってもらわないと!」
周と帝斗がからかえば、
「おー、いいね! んじゃアイスクリームでも食ってくかぁ!」
ちょうど目の前にあったカフェレストランのショーケースを指差しながら、すかさず紫月が身を乗り出してはしゃぎ顔だ。
「おいおい、一之宮! アイスクリームかよ。相変わらず甘味大魔王だな」
「僕はアイスティーがいいね」
「俺、アイスコーヒーな!」
ショーケースを覗き込んではすっかり奢ってもらう算段になっている様子に、鐘崎はタジタジと頭を掻いては笑った。
「いいぞ。お前らには世話になったことだしな。この際アイスクリームなんてケチなことは言わねえ。とびきり豪華なディナーを振る舞わせてもらうさ!」
「おや! それは光栄!」
「そんじゃ冰にも連絡せにゃ!」
「やったね! んじゃ、冰君を迎えに行きがてら東京戻るか! 今日はお疲れさん会で打ち上げといくべ!」
笑い声の絶えない、そんな穏やかな一日が今日もまたゆっくりと暮れていくのだった。
身代わりの罠 - FIN -
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