771 / 1,212
身代わりの罠
16
しおりを挟む
「では女の方はカネに任務以外で何らかの感情を抱いているということか?」
「さあ、そこまでは何とも。単に遼二君がイイ男だから、この女性の方でも浮かれているのかとお見受けしておりましたが……」
若いエージェントだし、組んだ相手が男前とくれば浮かれても仕方ないかと思えるが、それにしても鐘崎の性質上、進んでこんなことをするとも思えない。
「そういえば遼二君が気になることを仰っていましたね。なんでもこの女に『浮気をしたいと思ったことはないのか』と訊かれたとか」
「浮気だ? まさかそれに乗っかるようなバカじゃねえはずだが」
鐘崎が紫月に一途なことは言わずと知れているが、仮に魔が差したとするなら、よほど女が巧みだったということか。それにしても信じ難い。
「もちろんはっきり否定したと仰っていましたよ。遼二君にとっては任務以外で余計なことに首を突っ込まれるのは非常にうっとうしいといった感じでしたが……」
鄧の言うには鐘崎は心底面倒臭そうにしていたとのことだった。
「そ、そんなことより……この掲示板って紫月さんが見てる可能性もあるわけでしょ?」
冰がハラハラとした表情で気に掛けている。こんな淫らな画像を紫月が見たとしたら、いくら彼でもさすがに平常心ではいられないだろうと思うのだ。
「李、カネの現在地を調べてくれ」
「は! お待ちください」
すぐに鐘崎の刺青に取り付けてあるピアスのGPSを検索する。
「出ました! 鐘崎さんは現在グラン・エーにいらっしゃると思われます」
「ということは、昨夜このまま泊まったのは事実ということか」
周が渋顔で眉根を寄せる。
「カネのことだ。これも何か任務に関するカモフラージュという可能性の方が高いが、それにしてはわざわざ裏の世界にいる全員が目にする掲示板にこんなモンを上げる意味が分からねえ。こいつぁ……今頃各方面で騒ぎになってることだろう……」
「白龍……」
冰は何を置いても紫月のことが心配だという顔つきで、訴えるように見上げてくる。
「そうだな。僚一も源次郎さんも今はブライトナー夫妻に付きっきりだ。こっちの方までは気がついてねえ可能性が高い。一之宮のところへ行ってみるか」
「うん……うん、そうしようよ!」
周は冰を連れて紫月を訪ねることにし、鄧にはグラン・エーに出向いて至急鐘崎と落ち合ってくれるようにと伝えた。
「李はここに残って各所からの連絡を取りまとめてくれ。状況によってはカネの親父にもすぐに知らせねばならん。それから念の為、これらの画像と音声の分析を頼む。もしかしたら故意に作られた偽画像という可能性もある」
この手の代物をネット上に撒くということは、普通ならば動画で上げる方がより効果的だ。それをわざわざ音声と画像に分けたという点が、周にとってはどうにも引っ掛かってならない様子だ。
「分かりました。すぐに解析にかかります!」
そうして一同はそれぞれの目的地へと向かった。
◇ ◇ ◇
「さあ、そこまでは何とも。単に遼二君がイイ男だから、この女性の方でも浮かれているのかとお見受けしておりましたが……」
若いエージェントだし、組んだ相手が男前とくれば浮かれても仕方ないかと思えるが、それにしても鐘崎の性質上、進んでこんなことをするとも思えない。
「そういえば遼二君が気になることを仰っていましたね。なんでもこの女に『浮気をしたいと思ったことはないのか』と訊かれたとか」
「浮気だ? まさかそれに乗っかるようなバカじゃねえはずだが」
鐘崎が紫月に一途なことは言わずと知れているが、仮に魔が差したとするなら、よほど女が巧みだったということか。それにしても信じ難い。
「もちろんはっきり否定したと仰っていましたよ。遼二君にとっては任務以外で余計なことに首を突っ込まれるのは非常にうっとうしいといった感じでしたが……」
鄧の言うには鐘崎は心底面倒臭そうにしていたとのことだった。
「そ、そんなことより……この掲示板って紫月さんが見てる可能性もあるわけでしょ?」
冰がハラハラとした表情で気に掛けている。こんな淫らな画像を紫月が見たとしたら、いくら彼でもさすがに平常心ではいられないだろうと思うのだ。
「李、カネの現在地を調べてくれ」
「は! お待ちください」
すぐに鐘崎の刺青に取り付けてあるピアスのGPSを検索する。
「出ました! 鐘崎さんは現在グラン・エーにいらっしゃると思われます」
「ということは、昨夜このまま泊まったのは事実ということか」
周が渋顔で眉根を寄せる。
「カネのことだ。これも何か任務に関するカモフラージュという可能性の方が高いが、それにしてはわざわざ裏の世界にいる全員が目にする掲示板にこんなモンを上げる意味が分からねえ。こいつぁ……今頃各方面で騒ぎになってることだろう……」
「白龍……」
冰は何を置いても紫月のことが心配だという顔つきで、訴えるように見上げてくる。
「そうだな。僚一も源次郎さんも今はブライトナー夫妻に付きっきりだ。こっちの方までは気がついてねえ可能性が高い。一之宮のところへ行ってみるか」
「うん……うん、そうしようよ!」
周は冰を連れて紫月を訪ねることにし、鄧にはグラン・エーに出向いて至急鐘崎と落ち合ってくれるようにと伝えた。
「李はここに残って各所からの連絡を取りまとめてくれ。状況によってはカネの親父にもすぐに知らせねばならん。それから念の為、これらの画像と音声の分析を頼む。もしかしたら故意に作られた偽画像という可能性もある」
この手の代物をネット上に撒くということは、普通ならば動画で上げる方がより効果的だ。それをわざわざ音声と画像に分けたという点が、周にとってはどうにも引っ掛かってならない様子だ。
「分かりました。すぐに解析にかかります!」
そうして一同はそれぞれの目的地へと向かった。
◇ ◇ ◇
21
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる