極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
760 / 1,212
身代わりの罠

しおりを挟む
 次の日、丸の内にあるグラン・エーへと向かった鐘崎親子は、そこでエージェントの女と初顔合わせとなった。医師の鄧と共に初日だけは周も一緒だ。到着と同時に地下駐車場で粟津帝斗が迎えてくれた。
「いらっしゃい。久しぶりだね、遼二! 元気そうで何よりだ」
「お前さんもな。今回はまた世話を掛ける」
「事情はお父上からうかがっているよ。エージェントのメビィさんが特別室でお待ちだ。今は僕の父が対応している」
 地下の駐車場から特別室へ抜ける道順の説明を受けながら待ち合わせ場所へと向かう。
「この通路は一般のお客様には開放していないからね。一旦警備室を経てから駐車場へ合流できるようになってる。監視の追尾はそこでかわせるから」
 帝斗の説明に続いて僚一がつけ足す。
「移動用の車を車種違いで五台ほど常駐させておく。行き帰りの変装に合わせて、都度見合う車を使ってくれ」
「了解した」
「変装用の荷物は朝一で紫月から預かったよ。既に特別室のコネクティングルームへ届けてあるから」
 鐘崎親子が出向く前に紫月と若い衆が搬入業者に化けて運び入れてくれたそうだ。これで事前の準備は完璧である。
 そうして特別室に着くと、帝斗の父親とエージェントの女が待っていた。
「初めまして、メビィです。あなたが遼二さん? ホント、クラウスさんにそっくりね」
 女はまだ変装はしておらず素のままだったが、なかなかに見目良い美人だ。やり手というだけあってか物怖じしたところはなく、どちらかといえば自信にあふれているといった堂々たる雰囲気だった。
「これが変装後のイメージですわ。クラウスの奥様の遥さんでしたわね。彼女に似せてメイクしてみましたの」
 女が差し出した写真は大層良く化けられていると言える。
「これならば周囲に怪しまれることもなかろう。大したものだな、メビィ」
 僚一に褒められてメビィは得意気な笑顔を見せた。
「今から私たちは夫婦ね。よろしく遼二さん」
 にこやかに微笑まれて、鐘崎も『よろしく頼む』と会釈で返した。
 その後、皆で今一度ブライトナー夫妻の行程を確認し、来日から出国までの一週間の細かい動きを日毎に分けてスケジューリングしていった。
「僚一、その間、鄧には今回の任務に専念してもらえる。汐留の方には鄧の他にも常駐の医師がいるので、こちらのことは気にせんでくれていい」
 周がそう言ってくれるので、僚一らも心強い。
「俺は今のところ直接の出番はねえが、今後一週間は常に身体を開けておけるよう調整済みだ。何かあればいつでも遠慮なく言ってくれ」
「すまんな、焔。頼りにしているぞ」
 立地的にも鐘崎組よりは周の社の方が近いし、すぐに助力できる体制は整えておくと言ってくれる。心強いことだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...