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カウント・ダウンを南国バカンスで
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部屋に戻るとさすがに時差ボケのせいか、すっかり眠気が襲ってきた。
「疲れたろう? 今日は早めに休むか」
周がベットカバーをどかしながら手招きをする。
「うん、でもちょっとその前に……少しだけこうしててい?」
布団に潜り込むと同時に、珍しくも冰の方からしっかりと周の懐へと顔を埋めた。
「――どうした? お前がこんなふうに甘えてくるなんて珍しい」
「……そ、そう?」
腕の中で真っ赤に頬を染めながらも、モジモジとしている。何か言いたげなのだが、おそらくは上手く言葉にならないのだろう。
「もしかして昼間のことを気にしているのか?」
髪を撫でながらそう訊くと、図星といったようにしてビクリと顔を上げた。
「女たちが寄ってきたからな。妬いてくれたのか?」
周は愛しげに瞳を細めながら笑う。
「や、妬いてとか……そ……ゆんじゃなくて……その」
冰はますます赤面で茹で蛸状態だ。
「あ、あのね……。女の人たち、皆綺麗だったし……み、水着とかもその……セ、セクシーで。俺、その……白龍カッコイイし、いろいろドキドキしちゃって……」
さすがに妬いてしまったとは正直に言い出せない。というよりも、冰にとってはヤキモチという感情よりもカルチャーショックに近い思いの方が強かったからだ。
周とは固い絆で結ばれているし、どれほど強い愛情をかけてもらっているかもよく解っているのだが、実際に綺麗な女性たちのグラマラスな胸元などを目の当たりにしてしまうと、万が一にもそちらの方に興味を惹かれてしまうのではと心細くなったりしてしまうのだ。変な話だが、いかに好きな料理があっても毎日では飽きるし、たまには違ったものも食べてみたい――というのは例えが悪いが、冰にとってはそれに近いような心配が沸々としてしまったわけだ。
言葉はしどろもどろで言いづらそうにしているが、冰よりは年齢も経験も大人の周には、そんな言い出しづらい思いが手に取るようであった。
「大袈裟な話だがな。例えば仮に――世界中の美女が言い寄ってきたとしても、俺にはお前しか見えねえから心配するな。どんなにグラマーだろうが美人だろうが、お前に適うわけもねえ」
周はしっかりと懐に頭ごと抱え込みながらそう言って、愛しげに額へとキスを落とした。
「白龍……んと、ありがと……。俺、ごめんね。ヤ、ヤキモチなんか焼いちゃって……みっともない」
「バカだな。みっともねえどころか、俺にとっては最高に嬉しい愛情だ。お前に妬いてもらえたんなら、あの女たちにも感謝せにゃならんくらいだ」
そう言って髪を撫でていると、腕の中で小さく『グスン』と鼻をすする音がした。
「泣くヤツがあるか」
「だって……だ……て、俺ったらこんなにしてもらってるのに……全然余裕がなくて……。まるで子供で……紫月さんみたいに余裕で笑ってられる大人になりたいのに……こやって白龍に我が侭言っちゃって慰めてもらったり……迷惑かけて」
「迷惑だなんて思ってねえ。それどころか、お前がそれほど俺を想ってくれてるってのが解ってめちゃくちゃ嬉しいんだからな」
クイと顎を持ち上げて、軽く唇を奪いながら額をコツンと擦り合せる。すると冰は堰が切れたようにポロポロと大粒の涙をこぼしたのだった。
周にとってはますます感激だ。可愛くてどうしようもない気持ちに駆られてしまった。
「疲れたろう? 今日は早めに休むか」
周がベットカバーをどかしながら手招きをする。
「うん、でもちょっとその前に……少しだけこうしててい?」
布団に潜り込むと同時に、珍しくも冰の方からしっかりと周の懐へと顔を埋めた。
「――どうした? お前がこんなふうに甘えてくるなんて珍しい」
「……そ、そう?」
腕の中で真っ赤に頬を染めながらも、モジモジとしている。何か言いたげなのだが、おそらくは上手く言葉にならないのだろう。
「もしかして昼間のことを気にしているのか?」
髪を撫でながらそう訊くと、図星といったようにしてビクリと顔を上げた。
「女たちが寄ってきたからな。妬いてくれたのか?」
周は愛しげに瞳を細めながら笑う。
「や、妬いてとか……そ……ゆんじゃなくて……その」
冰はますます赤面で茹で蛸状態だ。
「あ、あのね……。女の人たち、皆綺麗だったし……み、水着とかもその……セ、セクシーで。俺、その……白龍カッコイイし、いろいろドキドキしちゃって……」
さすがに妬いてしまったとは正直に言い出せない。というよりも、冰にとってはヤキモチという感情よりもカルチャーショックに近い思いの方が強かったからだ。
周とは固い絆で結ばれているし、どれほど強い愛情をかけてもらっているかもよく解っているのだが、実際に綺麗な女性たちのグラマラスな胸元などを目の当たりにしてしまうと、万が一にもそちらの方に興味を惹かれてしまうのではと心細くなったりしてしまうのだ。変な話だが、いかに好きな料理があっても毎日では飽きるし、たまには違ったものも食べてみたい――というのは例えが悪いが、冰にとってはそれに近いような心配が沸々としてしまったわけだ。
言葉はしどろもどろで言いづらそうにしているが、冰よりは年齢も経験も大人の周には、そんな言い出しづらい思いが手に取るようであった。
「大袈裟な話だがな。例えば仮に――世界中の美女が言い寄ってきたとしても、俺にはお前しか見えねえから心配するな。どんなにグラマーだろうが美人だろうが、お前に適うわけもねえ」
周はしっかりと懐に頭ごと抱え込みながらそう言って、愛しげに額へとキスを落とした。
「白龍……んと、ありがと……。俺、ごめんね。ヤ、ヤキモチなんか焼いちゃって……みっともない」
「バカだな。みっともねえどころか、俺にとっては最高に嬉しい愛情だ。お前に妬いてもらえたんなら、あの女たちにも感謝せにゃならんくらいだ」
そう言って髪を撫でていると、腕の中で小さく『グスン』と鼻をすする音がした。
「泣くヤツがあるか」
「だって……だ……て、俺ったらこんなにしてもらってるのに……全然余裕がなくて……。まるで子供で……紫月さんみたいに余裕で笑ってられる大人になりたいのに……こやって白龍に我が侭言っちゃって慰めてもらったり……迷惑かけて」
「迷惑だなんて思ってねえ。それどころか、お前がそれほど俺を想ってくれてるってのが解ってめちゃくちゃ嬉しいんだからな」
クイと顎を持ち上げて、軽く唇を奪いながら額をコツンと擦り合せる。すると冰は堰が切れたようにポロポロと大粒の涙をこぼしたのだった。
周にとってはますます感激だ。可愛くてどうしようもない気持ちに駆られてしまった。
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