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カウント・ダウンを南国バカンスで
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「失礼な! 私はこの方にお仕えする者ですぞ! はしたないご想像はおやめなされ!」
真田が憤りを口にしたが、男たちは引っ込む様子がない。
「仕える者って何だよ。まさか執事とか?」
「そんな見苦しいウソはよしなって! ホントはアンタがお相手なんじゃねえの? 爺さん、アンタも好き者だなぁ。いい歳こいてこんな可愛い子ちゃんをたぶらかしてさー。いい加減引退しなって。後は俺らが引き受けて、この可愛い子ちゃんにとびきりのイイ思いさせてやるからさ!」
次第に下品な方向に話がそれていく。つまりこの男たちは冰と身体の関係を持ちたがっているのが丸分かりだ。そもそもクルーザーで沖へ出ようなどと言っているが、何が目的かなど聞かずとも想像がつくというものだ。
「冗談ではありませんぞ! この世がひっくり返っても貴殿らのような輩にこの方をお渡しするわけには参りません! この真田、身命を賭して死守いたします!」
冰を抱き締める勢いで真田は必死だ。このままでは真田に危害が加えられかねない。そう思った冰は、咄嗟にこう言い繕った。
「父です! この人は僕の父なんです!」
ところが、男たちには別の意味での父と受け取られてしまったようだ。
「はいはい、要するに”パパ”ね!」
まるでパトロンだろうといったふうに鼻で笑う。
「キミもまだ若いんだからさ。こんなお年寄りの”パパ”よりも俺たちみたいに若くて新鮮なエキスを覚えた方がお得だぜ! 試しに一発ヤってみりゃキミにも新しい世界が開けるって!」
「そんなワケだからさ。爺さん、ちょっとこのお坊ちゃまを貸してくれよ」
男の一人が冰の腕を掴みかけた時だった。プールから二人が絡まれているのに気付いた紫月がすっ飛んでやって来た。
「おい、コラ! 兄ちゃんたちよー、その手を離しな! その子に手ェ出したら後悔すっことになんぜ!」
冰の腕を掴んでいた男の手を捻り上げて、合気道の技で軽々その場へと押さえ込んだ。
「痛てててッ! な、何しやがる、こんちくしょう!」
焦る男たちを見下ろしながら紫月は余裕の表情で笑った。
「てめえら、こんなところをこの子の旦那に見つかったらタダじゃ済まねえぞー。下手したらタマ取られて地獄行きだ」
「は、はぁ!? 地獄行きってなんだ……。脅かすんじゃねえ」
「だいたい……さっきっからその爺さんもてめえも口揃えて旦那旦那って言うが、どこにそんなモンがいるってんだ!」
本当にいるのなら今すぐここに連れて来てみろと食ってかかる。と、その時だった。地鳴りのするような声で、
「ここに居るが?」
後方から投げられた短いひと言を聞いただけで、男たちは一気に肝を冷やしたようだった。
「え……?」
「――は?」
おずおずと男二人が振り向いた時だった。そこには般若のような顔をした周と鐘崎がヌゥっと顔を突き出しながら立っていた。
「そいつは俺の嫁だ」
クイと軽々男の腕を引っ張ったと思ったら、トンと胸板を突っついただけで男はその場に尻もちをつかされてしまった。
「な、な、何しやがる貴様……」
もう一人が尻もちをついた男を庇うようにして抱き上げながら威嚇の言葉を口にするも、体勢は既に逃げ腰だ。
「他人の嫁に粉かけてきたのはてめえらだ。望むなら遠慮なくあの世へ送ってやれるぞ」
表情は柔和な笑顔だし、冗談めいたユーモラスな言葉に聞こえなくもないが、ゆっくりと動く瞳は笑っていない。一見穏やかな紳士の雰囲気を纏っていながら、懐には抜き身の刃を忍ばせていそうな雰囲気の周に男たちは震え上がった。今ここで引き下がらなければ、気付いた時には本当にあの世かも知れない。
「わ、分かった」
「もういいって」
すごすごと後退り、周から距離を取ると、くるりと踵を返して一目散に逃げていった。
真田が憤りを口にしたが、男たちは引っ込む様子がない。
「仕える者って何だよ。まさか執事とか?」
「そんな見苦しいウソはよしなって! ホントはアンタがお相手なんじゃねえの? 爺さん、アンタも好き者だなぁ。いい歳こいてこんな可愛い子ちゃんをたぶらかしてさー。いい加減引退しなって。後は俺らが引き受けて、この可愛い子ちゃんにとびきりのイイ思いさせてやるからさ!」
次第に下品な方向に話がそれていく。つまりこの男たちは冰と身体の関係を持ちたがっているのが丸分かりだ。そもそもクルーザーで沖へ出ようなどと言っているが、何が目的かなど聞かずとも想像がつくというものだ。
「冗談ではありませんぞ! この世がひっくり返っても貴殿らのような輩にこの方をお渡しするわけには参りません! この真田、身命を賭して死守いたします!」
冰を抱き締める勢いで真田は必死だ。このままでは真田に危害が加えられかねない。そう思った冰は、咄嗟にこう言い繕った。
「父です! この人は僕の父なんです!」
ところが、男たちには別の意味での父と受け取られてしまったようだ。
「はいはい、要するに”パパ”ね!」
まるでパトロンだろうといったふうに鼻で笑う。
「キミもまだ若いんだからさ。こんなお年寄りの”パパ”よりも俺たちみたいに若くて新鮮なエキスを覚えた方がお得だぜ! 試しに一発ヤってみりゃキミにも新しい世界が開けるって!」
「そんなワケだからさ。爺さん、ちょっとこのお坊ちゃまを貸してくれよ」
男の一人が冰の腕を掴みかけた時だった。プールから二人が絡まれているのに気付いた紫月がすっ飛んでやって来た。
「おい、コラ! 兄ちゃんたちよー、その手を離しな! その子に手ェ出したら後悔すっことになんぜ!」
冰の腕を掴んでいた男の手を捻り上げて、合気道の技で軽々その場へと押さえ込んだ。
「痛てててッ! な、何しやがる、こんちくしょう!」
焦る男たちを見下ろしながら紫月は余裕の表情で笑った。
「てめえら、こんなところをこの子の旦那に見つかったらタダじゃ済まねえぞー。下手したらタマ取られて地獄行きだ」
「は、はぁ!? 地獄行きってなんだ……。脅かすんじゃねえ」
「だいたい……さっきっからその爺さんもてめえも口揃えて旦那旦那って言うが、どこにそんなモンがいるってんだ!」
本当にいるのなら今すぐここに連れて来てみろと食ってかかる。と、その時だった。地鳴りのするような声で、
「ここに居るが?」
後方から投げられた短いひと言を聞いただけで、男たちは一気に肝を冷やしたようだった。
「え……?」
「――は?」
おずおずと男二人が振り向いた時だった。そこには般若のような顔をした周と鐘崎がヌゥっと顔を突き出しながら立っていた。
「そいつは俺の嫁だ」
クイと軽々男の腕を引っ張ったと思ったら、トンと胸板を突っついただけで男はその場に尻もちをつかされてしまった。
「な、な、何しやがる貴様……」
もう一人が尻もちをついた男を庇うようにして抱き上げながら威嚇の言葉を口にするも、体勢は既に逃げ腰だ。
「他人の嫁に粉かけてきたのはてめえらだ。望むなら遠慮なくあの世へ送ってやれるぞ」
表情は柔和な笑顔だし、冗談めいたユーモラスな言葉に聞こえなくもないが、ゆっくりと動く瞳は笑っていない。一見穏やかな紳士の雰囲気を纏っていながら、懐には抜き身の刃を忍ばせていそうな雰囲気の周に男たちは震え上がった。今ここで引き下がらなければ、気付いた時には本当にあの世かも知れない。
「わ、分かった」
「もういいって」
すごすごと後退り、周から距離を取ると、くるりと踵を返して一目散に逃げていった。
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