721 / 1,212
謀反
58
しおりを挟む
「んもう! 白龍も鐘崎さんも……どうして男ってこう恥ずかしいことばっか平気で言うんだろう」
両手で顔を押さえてアワアワとしている冰に、
「何言ってー! 冰君だって男だべ?」
紫月までもが冷やかしながら肩をツンツンとつついてくる。
「ヤダ、もうー! 紫月さんまで!」
すっかり茹蛸状態の冰に、全員がドッと湧く。賑やかな笑い声に包まれるダイニングのパノラマの窓からは、その幸せあふれる数々の笑顔を讃えるかのように降りそそぐ午後の陽射しが大都会の街並みをキラキラと照らし出していたのだった。
その日の夜は周の快気祝いということで、鐘崎らや医師の鄧、李と劉に運転手の宋も加わって、皆で祝膳を囲むこととなった。
真田が張り切って用意した膳には言葉通り鯛のお頭付きと赤飯、それに合わせた純和食の豪勢な食卓が華やかだ。いつもは周と二人のダイニングはまるで花が咲き誇ったように賑やかな設えとなって、冰も喜び倍増であった。
その倍増が更に倍増となったのは、皆で乾杯を始めようとしていた時だ。なんと香港からファミリーが駆け付けて来たのだ。
父の隼に継母の香蘭、兄の風に義姉の美紅、そして今回は実母のあゆみも一緒だった。
冰からの報告の電話を受けて、即座に飛んでやって来たのだそうだ。あの後すぐに着替えもそこそこにして大急ぎで飛行場へと向かったという。
ファミリーのサプライズともいえる心遣いに周はもちろんのこと、冰もまた嬉し涙を誘われるほどに喜んで、快気祝いの宴は幸せに満ちあふれたのだった。
「焔、今回は本当にすまなかった。俺がブレーンを決めた人事が発端となってお前には気の毒な思いをさせてしまった」
申し訳ない、この通りだと深く謝罪をした兄の風と共に、その妻の美紅も揃って頭を下げた。
「白龍にも、それに冰にも周りの皆様にも……多大な心配とご苦労を掛けてしまったわ。本当にごめんなさい」
「兄貴! 義姉さんも……! 頭を上げてくれ。兄貴のせいじゃねえんだ。それに鉱山まで助けに来てもらって、礼を言わなきゃならねえのは俺の方だって」
「そうですよ。皆さんが全力で助けてくださったお陰で俺も白龍もこうして無事でいられたのですから!」
周も冰も恐縮してしまう。兄の風も美紅も周らの言葉を有り難く受け止めて、再度頭を下げた。
「ところで焔、羅辰らと一緒にいた例の香山という男だがな。あれからヤツの行方に関して調べを進めていたんだが、ようやくと詳細が掴めたところでな」
父の隼が口を挟んだ。
鉱山の落盤によって羅辰らの遺体が発見されたのは過日報告を受けた通りだが、その中に香山の存在はなかった。香山には冰も現地で顔を合わせており、ロンが出口までの道のりを教えたはずである。だが、その出口で待機していた隼たちの前にも香山は姿を現さなかったというのだ。
おそらくはロンから道順を聞いた後に、また道に迷ったものと思われたが、その後の行方は知れずじまいだった。鉱山でも見掛けた者はいないというし、遺体が発見されたわけでもない。気に掛かった隼が風と共に調べを進めたところ、ようやくとその行方が掴めたというのだ。
両手で顔を押さえてアワアワとしている冰に、
「何言ってー! 冰君だって男だべ?」
紫月までもが冷やかしながら肩をツンツンとつついてくる。
「ヤダ、もうー! 紫月さんまで!」
すっかり茹蛸状態の冰に、全員がドッと湧く。賑やかな笑い声に包まれるダイニングのパノラマの窓からは、その幸せあふれる数々の笑顔を讃えるかのように降りそそぐ午後の陽射しが大都会の街並みをキラキラと照らし出していたのだった。
その日の夜は周の快気祝いということで、鐘崎らや医師の鄧、李と劉に運転手の宋も加わって、皆で祝膳を囲むこととなった。
真田が張り切って用意した膳には言葉通り鯛のお頭付きと赤飯、それに合わせた純和食の豪勢な食卓が華やかだ。いつもは周と二人のダイニングはまるで花が咲き誇ったように賑やかな設えとなって、冰も喜び倍増であった。
その倍増が更に倍増となったのは、皆で乾杯を始めようとしていた時だ。なんと香港からファミリーが駆け付けて来たのだ。
父の隼に継母の香蘭、兄の風に義姉の美紅、そして今回は実母のあゆみも一緒だった。
冰からの報告の電話を受けて、即座に飛んでやって来たのだそうだ。あの後すぐに着替えもそこそこにして大急ぎで飛行場へと向かったという。
ファミリーのサプライズともいえる心遣いに周はもちろんのこと、冰もまた嬉し涙を誘われるほどに喜んで、快気祝いの宴は幸せに満ちあふれたのだった。
「焔、今回は本当にすまなかった。俺がブレーンを決めた人事が発端となってお前には気の毒な思いをさせてしまった」
申し訳ない、この通りだと深く謝罪をした兄の風と共に、その妻の美紅も揃って頭を下げた。
「白龍にも、それに冰にも周りの皆様にも……多大な心配とご苦労を掛けてしまったわ。本当にごめんなさい」
「兄貴! 義姉さんも……! 頭を上げてくれ。兄貴のせいじゃねえんだ。それに鉱山まで助けに来てもらって、礼を言わなきゃならねえのは俺の方だって」
「そうですよ。皆さんが全力で助けてくださったお陰で俺も白龍もこうして無事でいられたのですから!」
周も冰も恐縮してしまう。兄の風も美紅も周らの言葉を有り難く受け止めて、再度頭を下げた。
「ところで焔、羅辰らと一緒にいた例の香山という男だがな。あれからヤツの行方に関して調べを進めていたんだが、ようやくと詳細が掴めたところでな」
父の隼が口を挟んだ。
鉱山の落盤によって羅辰らの遺体が発見されたのは過日報告を受けた通りだが、その中に香山の存在はなかった。香山には冰も現地で顔を合わせており、ロンが出口までの道のりを教えたはずである。だが、その出口で待機していた隼たちの前にも香山は姿を現さなかったというのだ。
おそらくはロンから道順を聞いた後に、また道に迷ったものと思われたが、その後の行方は知れずじまいだった。鉱山でも見掛けた者はいないというし、遺体が発見されたわけでもない。気に掛かった隼が風と共に調べを進めたところ、ようやくとその行方が掴めたというのだ。
11
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる