極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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「班長、どうやらこの奥へ行ったのは間違いないようです! この先にこんな物が落ちていました」
 チームのメンバーが拾ってきたのは煙草の吸殻であった。それを目にするなりロンが眉を吊り上げる。
「なんてことしやがる……! 坑道には稀に天然のガスが漏れ出すことだってあるんだ! ひとつ間違えば大爆発を起こしかねない!」
 何も知らない素人の羅たちが吸ったもので間違いなかろう。ロンは大急ぎで坑道を奥へと進んでいった。
 幸か不幸か道筋には煙草の吸い殻の他に空のペットボトルや菓子パンの袋、他には乾電池なども捨てられていて、羅たちがここを通ったことを示していた。おそらくは持参してきた懐中電灯の電池が切れて入れ替えたのだろう。ペットボトルやパンの袋があるということは、彼らもある程度の長丁場を想定していたのかも知れない。それらをそのままゴミとして放置していくことにもチームとしては憤りを隠せないといったところだった。
 場慣れしているロンたちが準備してくれた装備品を身に付けていても、気を許せば現在地が分からなくなるほどに辺りは闇に包まれていて真っ暗である。普段採掘が行われる際には巨大な照明類が持ち込まれるそうだが、今はそれもない。何よりも物凄い湿度のせいでか、息をするのもやっとといったところで、額からは汗が滴り落ちてくる。慣れない冰らにとっては過酷な環境といえた。
 こんな所にしっかりとした装備もなく長時間居れば、体力の消耗どころか命の危険に関わりそうだ。普通のスーツ姿だったという周のことを考えれば、一刻も早く彼を見つけて救出しなければと焦るばかりだった。
 しばらく進むと、また少し広々とした空洞に出たが、今度は道が四方に向かって分かれていることに気がついた。
「ここから先はこれまで来た道のように平坦な所ばかりではありません。地下河川が通っている所もありますし、万が一その道を選択していれば非常に危険です!」
 ロンの言うには先日からの大雨によって水かさが増えているのは間違いないそうだ。
「しかし四方向とはな……。ヤツらがどの道へ入ったのかが分からんことには厄介だな」
 鐘崎がタブレットで坑道の地図を見ながら渋顔でいる。
「おそらくですが、素人が進みやすいと判断するなら一番平坦に見えるこの道じゃねえかと思うんですが……」
 ザッと四つの穴を見渡せば、確かに一つだけ平坦な道がある。他の三つは急激な上り坂になっていたり、大きな岩がゴロゴロしていたりして、進むには困難だ。
「だがこの道を行ったとすれば非常にマズイっす!」
 ロンによればそこは地下河川に通じているというのだ。
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