極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
689 / 1,212
謀反

26

しおりを挟む
 ロンの話では掘り出した鉱石は比較的入り口から近いところにある広い空洞に集められるとのことで、羅辰らがそこから荷運びを行なっているものと推測できた。
「ですが、掘り出した鉱物はつい先週に粗方運搬車が持って行っちまったんで、集積場には殆ど残っていねえはずですが」
 トラックに積まれた量から見ても、空洞にあった量と一致するという。なるほど鉱石が積まれているトラックを見ても、まだ満載には程遠く、思っていたより量が少ないことから、羅たちにとっては当てが外れたといったところなのか。
「しかしヤツらは何処へ行ったというんだ。誰一人見当たらないというのは変じゃねえか?」
「まさか鉱石の量が少なかったんで、他にも無いかどうか探して歩いてるんじゃあるまいな」
「勝手に坑道の中をうろついているとも考えられる……」
 だとすれば非常に危険だと言って、ロンは顔色を蒼くした。
「冗談じゃありませんぜ! ここの坑道は他所から比べりゃ平坦な造りではありますが、素人だけで奥へ入るのは危険過ぎる! しかもこのところの大雨で地盤が緩んでいるこんな時です。落盤で道が塞がることだってあるんだ!」
 ロンは落盤があった際に対応する為の機材なども装備すると、チームを率いて早速に探査へと乗り出す準備に取り掛かった。当然、冰や鐘崎ら同行する者たちにも手厚い装備品が貸し出される。
「姐さん、慣れねえとちょっと窮屈かと思いますが、安全の為です。辛抱なさってくだせえ」
 ロンは甲斐甲斐しく皆への装着を手伝うと、いよいよ坑道へと向かう。
「何かあればすぐに応援に駆け付ける。遼二、頼んだぞ!」
 父の僚一からそう託されて、鐘崎はしっかりとうなずいたのだった。
 坑道を少し進むと掘り出した鉱石が集められるという空洞が見えてきた。なるほど広い空間で、そこから表へと荷運びを行う台車などが散乱している。
「やはりこれを使って鉱石をトラックに積んだのは間違いないようッスね。しかし……手荒な扱いをしやがる」
 荷運びに使った台車や鉱石が入れられていた木箱などが方々に散らかっていて、泥や砂などで汚れたまま放置されている。普段使う大切な道具が雑に扱われていることに溜め息まじりで眉根を寄せているロンの様子にも鐘崎らは驚きを隠せなかった。きっと彼はこちらが思う以上にこの仕事に誇りを持っているのだろうことが窺えるからだ。
 変われば変わるものである。今の彼を見ていると、以前に自分たちの拉致を試みた輩とは思えないほどの変わりようである。これも冰への尊敬と、罪を犯した彼を赦してここでの仕事を与えた頭領・隼の処遇の賜であるとすれば、ほとほと感心せざるを得ない。そんな感慨に浸っていると、先に様子見に行かせていたチームの先導隊がロンの元へと戻って来た。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

処理中です...