極道恋事情

一園木蓮

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謀反

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 羅の計画では、他にも自分たちと同じように周一族のやり方に不満を抱いている者は少なからずいるので、その者たちに声を掛ければ鉱山から原石を運び出す手段や人員は割合容易に整うだろうという。
 ただ、問題がひとつ。肝心の鉱山に入るには現場での厳しい警備によって、周家の血筋の者が直に出向かない限り、簡単には原石の保管場所まで案内してはもらえないらしいということだった。
「あのファミリーはな、年に数度は必ず一族の誰かが現地に出向いて視察を行っているんだが、代理の者だけで行ったんじゃ山にはおろか麓の村にすら入ることもできねえって話だ」
 そこさえクリアできれば後の手筈はすっかり整っているのにと男は悔しそうに歯軋りする。
「こうなりゃ一族の誰かを無理矢理にでも拉致して鉱山まで引きずって行くってのも手だが、さすがに香港にいるボスと長男の周風には手が出せねえ。周りにゃ鉄壁ってくれえのガードが眼を光らせていやがるからな。唯一可能なのは日本の東京にいる次男坊だが……俺たちが犯人だとバレたらそれこそボスは黙っちゃいねえだろう」
 次男を拉致して薬物でも盛ってしまえば、鉱山まで連れて行く自体はなんとかなるだろうと羅は言う。だが問題はその後だ。如何に香港よりもガードが甘いとしても、次男坊の側にも精鋭の側近と言われる者たちが付いている。すぐに香港のファミリーの元へと報告がいくのは間違いない。
 犯行を別の誰かになすり付けるにしても、さすがにそこまで都合のいい輩など思い付かないと言ってはまた歯軋りを繰り返した。
 そんな様子を見ていた舎弟が思い付いたように身を乗り出してこう言った。
「そうだ! でしたら……兄貴! 耳よりな話がありますぜ!」
「耳よりな話だ?」
 羅は怪訝そうに眉根を寄せながらも半信半疑で舎弟を見やった。
「実はちょいと面白い話を耳にしましてね。兄貴もご存知でしょうが、つい数ヶ月前のことですよ! 日本の九州にある闇カジノに出入りしていて、しょっ引かれた野郎がいたでしょう。なんでもそこで売り買いしようとした若い日本人が実は周ファミリーの次男坊の連れ合いだったとかで、ファミリーからえらい制裁を食らったっていう」
「ああ……そういやそんなことがあったな。あの野郎、陳とかいったか。そん時の一件が仇になってファミリーから絶縁されたと聞いたがな」
 二人が話しているのは半年ほど前に冰と里恵子が拉致され、九州の博多で繰り広げられた事件のことだ。
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