極道恋事情

一園木蓮

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孤高のマフィア

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 するとディーラーは薄く笑みながらカードを三枚滑らせて男の前へと差し出した。
 開いたカードを見るなりさっきまで焦れていた男の目つきがパッと明るさを取り戻す。交換した三枚によってなかなかにいい目が揃ったからである。男が手にしたカードは絵札のスリーカード、ここはポーカーのテーブルだったのだ。
 男は今度こそもらったと言わんばかりに意気揚々と勝負に出ようと身を乗り出した。だが冰はまたしても男の肩に手を置くと、それを止めにかかった。
[降りてください。そのままでは相手の思う壺ですよ]
 男は正面を向いたまま冗談じゃないというオーラを滲み出してみせたが、冰はますます圧をかけるようにグイと肩先に指を食い込ませると、『この勝負は降りろ』と合図を送ってみせた。
[あなたは感情を顔に出し過ぎです。とにかく降りなさい。早く!]
 仕方なく男が降りると、ディーラーはわずか不機嫌そうに眉根を寄せた。つまり、そのまま勝負に出ていれば確実に負けたという証拠である。
 男にしてみればワケが分からず驚き顔のまま次のターンが始まると、冰は引き続き広東語で『とりあえず一枚要求しろ』と男に告げた。
 すると今度は先程とは比べ物にもならないワンペアという目が揃う。残念そうに肩を落とす男の様子を見て、冰はやれやれと溜め息をつきたい気分にさせられてしまった。こうもあからさまに態度に出されては、ディーラーはもちろんのこと同じテーブルに着いている客たちの目にも男が持っている駒が透けて見えてしまうからだ。だが、それならば逆手に取ればいい。冰はまたしても驚くようなことを口にしてみせた。
[勝負に出ましょう。あなたが今持っている全てのチップでレイズしてください。できれば自信満々ではなくクサクサした態度でやっていただけると尚いい]
 レイズとは他の客たちよりも上回る金額で勝負に出ろという意味だ。だがカードは単なるワンペアである。
 それこそ冗談じゃないと男がいきり立つ雰囲気が感じられたが、冰は肩に置いた指先を更に食い込ませて言われた通りにしろと圧をかける。
[いいですか? 全てのチップですよ。ケチればあなたが損をするだけです]
[……ッ! アンタいったい……]
[早くなさい。周りに気付かれたら終いです]
[……チッ……! クソ……ッ]
 男が言われるまま半分自暴自棄のような形で全額を投じ勝負に出ると、なんと結果は彼の大勝ちとなり一気にテーブルが湧いた。今まで負け越した分を取り返したどころか、お釣りがわんさと転がり込んでくる快挙だ。散々負け越していた男にとっては一攫千金にも等しい奇跡である。
[嘘だろ……まさかこんなワンペアなんかで……]
 感極まった男が背後を振り返ると、もうそこに冰の姿はなかった。
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