極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「奴らが雇ったボディガードの中には国際的にも名が知られている大物が混じっていてな。禁止薬物を所持していただけじゃなく、実際に使ったこともあって相当重い刑が課せられるだろう。当分はムショから出て来れんな。そんな大物を我が国でふんじばれたことで警視庁は蜂の巣を突いたような騒ぎに歓喜している。大手柄だと報奨まで出るそうだぜ」
「そいつは良かったじゃねえか。するってーと、修司坊も昇進か?」
 僚一がニッと笑むとすかさず皆からも拍手が湧き起こった。
「いや、俺は今の部署でやり残したことが山積みなんでな。まだまだこのままいさせてもらう所存だ」
 とはいえ丹羽の若さで現在の捜査一課長という地位だけでもえらく出世頭なのは確かだ。彼にとっては昇進や地位がどうというよりも自分に与えられた責任を全うしたいのだろう覚悟が窺えた。
「そういえば例の花街だが、乗っ取り犯たちが巻き上げていた上納金がそっくり敵の金庫から見つかってな。まあ全額とまではいかねえだろうが、ほぼほぼ納得の形で各茶屋に返金できそうだ。敵も貯め込むだけは貯め込んでいたようだが、あの地下世界じゃそうは使い切れずにいたらしいな」
 丹羽の言葉に一同は瞳を輝かせた。中でも一番に身を乗り出したのは紫月である。
「ってことは、三浦屋の親父さんたちにも金が戻ってくるってことか?」
「ああ。きちんと返金できるようこれまで巻き上げられた額などを細かく調査するつもりだ。少し時間は掛かるだろうが、俺たちが責任を持ってやり遂げる」
「そっかぁ、良かった! これで伊三郎の親父たちも無理なく店を立て直せるな!」
 まるで我が事のように喜ぶ紫月に、皆も安堵と喜びを分かち合うのだった。
「その伊三郎氏だが、お前さん方が鐘崎組だと知ってえらく驚いていたぞ。いつかは鐘崎組に助力を申し出るつもりでいたそうだが、それ以前にお前さん方を拉致して強制的に働かせたことを悔いていてな。とんでもねえことをしちまったと驚愕していた」
 そういえば美濃屋の蓉子も街を上げていつかは鐘崎組に助力を願い出たいという話が持ち上がっていたと言っていたのを思い出す。
「ま、でも結果的には万々歳だったんだし、これで良かったんじゃね? 伊三郎の親父おやっさんたちが俺らを拉致ったのも何かの縁だったってことだよ」
 呆気らかんと笑う紫月に、
「なんてったって俺たちは伊三郎さんの子供ですもんね!」
 冰も嬉しそうにうなずいた。
「少し落ち着いたら皆んなで伊三郎の親父さんに会いに行くか」
「そうだな。今度はちゃんと客としてな」
 鐘崎と周がそんなふうに言ってくれるのが紫月も冰も嬉しかったようだ。
 その後、丹羽から今回の助力に対する報酬の手続きなどの説明を受けて、茶会はお開きとなった。周と冰は夕飯を待たずに帰るようである。鐘崎らはせっかくだから一緒に食べていけばいいのにと誘ったのだが、ひと月も社を留守にしてしまったので本来の業務が山積みなのだそうだ。
「またゆっくり寄らしてもらう」
 冰の肩を大事そうに抱きながら帰っていく周を皆で見送った。
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