極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
572 / 1,212
三千世界に極道の華

95

しおりを挟む
「本日のお茶はマリアージュ・フレールの季節限定さくら茶をお淹れしました。苺ショートにも合うと思いますよ」
 清水が気を効かせて昨日皆を迎えに出た時に調達してきたそうだ。
「わっはぁー! 剛ちゃんサンキュなぁ!」
 姐さんの紫月に大喜びされて清水も嬉しそうだ。『剛ちゃん』と、こうして下の名前でフランクに呼んでもらえることも清水にとっては光栄なことだった。
「姐さんにそう言っていただけると皆様がご無事でご帰還された実感が湧きます。やはりこうしてお顔を拝見できる日常が何よりと心に沁みますね」
 そんなふうに言いながら淹れたての茶を次々と注いでくれる。皆はしばし豪華なティータイムを満喫したのだった。そんな中で昨日の敵との戦いが見事だったという話が持ち上がり、冰などは本当に凄かったですと感動の様子で目を輝かせていた。
「紫月さんたちの剣術がホント凄すぎて、映画かアニメの主人公のようでしたよー!」
 真剣での生の斬り合いなどそれこそ映画かドラマの中でしか見たことがないだけに、より衝撃的というか感動的だったようだ。
「そういや俺らの飛天! 一度も成功したことなかった割には、昨日は上手くいったってのが奇跡だよなぁ」
 紫月が暢気な感心顔でケーキを頬張っている。鐘崎と周も同じ思いのようだ。
「確かにな。高坊の頃は何度やっても上手くタイミングが合わなくて苦労した記憶しかねえわな」
「ああ。だから昨日一之宮があんなに高く飛び上がったのを見て驚いたんだ。以前は高さが足りねえっつって失敗のし通しだったのにな」
 しかも十数年ぶりにトライしたにしては一発でタイミングが合ったことに驚きを隠せない。不思議顔の三人を横目に、僚一と飛燕がその理由を教えるべく話に割って入った。
「あの頃おめえらが編み出そうとしてた技は実戦用だったからな」
「実戦用?」
 飛燕の説明に紫月がポカンと口を開けて首を傾げる。その先は僚一が続けた。
「まあ自覚のねえままに考えた技なんだろうが、あれは命が懸かった真剣勝負を目の前にした時に初めて本量を発揮できるタイプの技だったからな。当時お前たちが何度やっても成功しなかったのは、それが練習だという思いがあったからさ」
「おめえらが考えてたあの技はな、紫月が猛ダッシュして焔と遼二坊の肩を踏み台にする瞬間が要になるんだ。あの頃は紫月が二人の肩を踏み切る時に遠慮が生まれていた。頭のどこかで二人に申し訳ねえという思いがあって体重を消すタイミングがほんの一瞬ずれていたんだ。そうするってーと、踏み込む瞬間の脚力のバネが生かしきれずに飛び上がっても高さがでねえ――とまあ、そんな具合だったのさ」
「だが昨日は命が懸かった実戦だ。踏み台にする二人に遠慮する気持ちよりも敵を倒すことに意識が働いて、本来の技の力が存分に発揮されたというわけだ」
 僚一と飛燕から交互交互にそう言われて、三人は目から鱗が落ちたかのように唖然としながら互いを見合ってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

処理中です...