極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「おわ――ッ! ちょ……まだいやがったってか!? 丹羽さんたちが敵のヤサを押さえに行ってくれたんじゃねかったんかよ!?」
 思わず紫月がそう声を上げたのに、僚一が苦笑で答える。
「どうやらこいつらは敵が雇ったっていう傭兵上がりのボディガードといったところか……。ヤサの方には見当たらなかったんで、どこかに隠れていやがるとは思ったがな」
 相手は十人まではいないようだが、見るからに場慣れした精鋭という雰囲気だ。日本刀を携えた者が三人ほどで、残りの者はこの街の常識である着物すら着ておらず、いかにもといった戦闘スタイルである。十中八九、銃も所持していることだろう。
「万が一にもここでぶっ放されたらまずい。飛燕、斬り合いを任せていいか――」
 僚一が訊くと、「もちろんだ!」と言って飛燕はうなずいた。
「じゃあ、そっちは頼んだぜ。俺と源さんが囮になってヤツらを引き受ける。春日野と橘は援護を頼む」
 僚一は銃撃戦になった場合を想定して、ひとまず群衆のいるこの場から離れ、街外れにある敵のアジトの方に向かって彼らに後を追わせる作戦に出るようだ。
「遼二と焔はこのまま紫月の援護に付いてくれ!」
 敵方の剣士は三人である。剣術ができる飛燕と綾乃木、そして紫月が相手をするしかないわけだが、剣士の内の一人は二メートルをゆうに超える大男が混じっている。筋肉も見るからに隆々で、例えて言うならアニメによくある巨大な剣を片手で振り回しそうな巨漢なのだ。日本刀でまともにやり合えるかどうかも分からないような桁違いの大男に対して、飛燕と綾乃木に紫月の三人では心許ない。そんな危惧もあって僚一は息子の遼二と周を加勢に残したわけだ。
「俺たちもなるべく早くカタを付けて戻るつもりだ。頼んだぞ!」
 そう言い残して傭兵集団に向かって行った僚一の後ろ姿を見送りながら、紫月はピクピクと眉根を逆立てていた。
「や、親父ー……! 頼んだぞって……言われても……。つか、もう行っちまったし……! マジで勝てる気がしねえー」
 大男は見るからに強敵で、目の前に立たれるとその影の中にすっぽり埋もれてしまいそうだ。紫月とて長身の部類に入るし、それよりも俄然体格のいい鐘崎や周でさえも子供に見えてしまうほどなのだ。あとの二人は体格的には自分たちと遜色ないが、技には自信があるぞと顔に書いてある。つまりそれなりに腕も達つということだろう。飛燕と綾乃木が斬り合って互角に持ち込めるかどうかといった雰囲気である。
「つーコトは……当然俺ら三人であのデッけえのを相手しなきゃなんねえわけ?」
「そのようだ……」
「しかし――マジでご立派なこった」
 さすがの鐘崎と周も大男を見上げながら頬をヒクつかせて苦笑気味でいる。唖然といった調子で立ち尽くす三人を見下ろしながら、大男は得意気に笑ってみせた。
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