極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「問題はそこだ。剣でやり合うのは紫月と飛燕任せになる。遼二もガキの頃から飛燕の道場で剣術を学んではいたが、今のままの状態じゃどの道使い物にはならんだろうな。何にせよ薬に打ち勝って記憶を取り戻さなきゃ始まらん。あとは飛燕の道場を手伝っている綾乃木も剣術には長けているから助力を願っておいた」
「そいつは心強えな」
「詳しいことは修司坊に伝えてある。今夜には紫月の親父の飛燕と綾乃木も施設に入り込めるように手配してある。お前らは三浦屋に帰って修司坊と連携してくれ。表向きは何も知らないまま営業を続けるふりをして、秘密裏に武器庫にあるブツを運び出すのが第一目的だ」
「分かった。だが、カネのことは……」
「遼二のことは俺が責任を持って敵方に堕ちるのを防ぐ。正直なところヤツが記憶を取り戻せるかどうかはヤツ自身の精神力にかかっていると言って過言じゃねえが……。いずれにせよ例の女を相手にするには俺が遼二に成り代わる必要がある。倫周に言って至急傷のメイクだけはしてもらわねばならん。源さんを護衛につけてできるだけ早く倫周をよこしてくれと伝えてくれ」
「分かった。そっちは任せてくれ。三浦屋に帰り次第ここへ向かってもらうが……心配なのはやはりカネのことだ。ヤツの記憶はどうすれば取り戻せる」
「DAに関しちゃ解毒薬というのはねえからな。何か遼二の記憶を揺さぶる衝撃というか、きっかけのようなもんがあれば或いは――とも思うが、今の段階じゃおそらく俺のツラを見ても見知らぬ他人としか映らんだろうな」
「だったら一之宮はどうだ。ヤツに会わせれば何か思い出すかも知れねえ」
「その可能性もあるが、花魁である紫月をむやみに外へ連れ出して敵に見つかりでもしたら厄介だ。今は極力動かねえに越したことはない。とにかく遼二のことは物理的には守るから安心しろ。紫月にもそう伝えて、くれぐれも無茶な行動は慎むように言ってくれ」
「……分かった」
 周と橘はこの場を僚一に任せて、一旦三浦屋へと戻っていったのだった。



◇    ◇    ◇



 一方、その三浦屋の方では鐘崎らに薬物が盛られた経緯について源次郎と春日野が調べを進めていた。可能性としては料理か酒に混入されたと考えられるが、他の皆は何ともないことから花魁の座敷に出される膳の中に何らかの細工が成されたと仮定して、まずは厨房近辺から探りを入れていった。
 しばらくすると、春日野が少々気になることを聞きつけたと言い、源次郎の元へと飛んで来た。厨房で食材を出し入れしている下男たちが休憩中に話していた愚痴の中に引っ掛かる話題があったというのだ。
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