極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「しかしこれだけの施設を海の底に造るとはな。建設に膨大な時間と費用が掛かったろうが。そんな予算をどっから捻り出したかってのも気になるが、丹羽の方ではどの辺りまで情報を掴んでいるわけだ?」
 鐘崎が訊く。
「ここは元々戦時中に使われた軍の施設だったんだ。秘密裏の会議はもちろんのこと、兵器の開発なども行われていたらしい」
「――ってことは、この地下空間自体は元からあったってわけか」
「そういうことだ。いくら先祖代々の夢とはいえ、さすがに吉原の子孫たちだけでは海底にこんな大穴を開けるなんざできっこねえからな。補強に多少の費用は掛かったろうが、一から建設する手間は省けたわけだ」
 なるほど、それであれば納得である。
「国としてもこれだけの空間をただ眠らせておくのもどうかと持て余していたわけでな。そこへ吉原の子孫たちが新たな花街として譲って欲しいと持ち掛けてきたわけだ」
 このままでは老朽化が進み廃墟同然となってしまう。埋め立てるにしても莫大な費用が掛かるだろう。秘密裏に近い高級花街としてなら国としても施設を譲り渡すのはやぶさかではないとのことで、双方の思惑が一致したらしい。
「それぞれの茶屋は皆で分担して建てたらしいが、補修工事も合わせるとそれだけでも十年以上は費やしたようだ。オープンして一年かそこらはマトモに商売できていたようだが、程なく乗っ取り犯たちがやって来て街は様変わりしちまった。橘が見たという祠も当初は大事に祀られていて、年始や花見の季節には芸妓たちであふれる賑やかな場所だったとか」
 丹羽はここへ客として通いながら、遊女たちからそういった情報を様々仕入れていたわけだ。
「ここが由緒ある花街から単なる遊郭に変わっちまったのもヤツらが来てからだ。芸妓たちは皆遊女にさせられて上納金との闘いが始まった。それこそ江戸吉原そっくりそのままの再来になっちまったというわけだ」
 皮肉な話だと丹羽は苦笑した。
「それで、お前ら警察は乗っ取り犯を潰す為にどう動くつもりなんだ」
 ある程度は手順が決まっているのかと鐘崎が訊く。
「ああ。まず敵の人数だが、確実に把握できているだけでも四、五十人は出入りしている様子だ。常にこの地下に住んじまってるのは幹部連中の十人程だが、他の奴らは外とここを行ったり来たりしながら食い物や日用品なんぞを運び入れているようだ」
 入れ替わり立ち替わりなので詳しい人数までは分からないが、実際にはもっと多くの輩が出入りしていると見ていいだろうと丹羽は言った。
「ヤサがある例の祠の近くに武器庫があることも突き止めている。奴らは一応ここのルールに則って和服を着ているようだから、常に真剣を携えていやがる。むろんその他にも銃器類が持ち込まれているようだ。まずはその武器庫を押さえて戦力を削ることが第一目標だが、奴らが傭兵上がりのテロリスト集団を抱え込んでいるのは確かだ。こちらもそれに引けを取らねえ人材が必要だ」
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