極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「ホステスたちを勧誘……ですか。ではやはり我々もそうした目的で目をつけられてしまったわけですな」
「そのようだ。既に女たちだけでは稼ぎも詰んでいる。それ故、新たに男色を好む客をターゲットに男遊郭にも手を出さざるを得なかったということだろう。客探しももちろんだが、働き手も当然必要だ。茶屋の者たちは度々外界に出てはスカウトに血眼になっていたようだからな」
「……もしかして丹羽君はここのご主人とも昔からの馴染みですかな?」
 ここの主人は確かに強引なところもあるが、花街の仕事に誇りを持っているように感じられたのもまた事実である。もしかしたら元々は天職として生き甲斐を持って経営していた店を守る為に、悪どいことに手を染めざるを得ないでいるのかも知れないと源次郎は思った。
 丹羽もまた、ある意味ではその通りだと言ってうなずいた。
「ここの親父は江戸の時代に吉原全体の茶屋をまとめていた者の子孫だそうだ」
「なるほど……! ということはもしかして三浦屋四郎左衛門の……」
 三浦屋の四郎左衛門とは当時の吉原を仕切っていたとされる人物のことで、出入り口の大門の側に会所という施設を置いていたまとめ役のことである。
「その通りだ。さすがは源次郎殿だな。主人の伊三郎氏は実際に会所を切り盛りしていた四郎兵衛の子孫らしいが、この街を作る時にも要となって計画を進めた人物で、相当の私財も投げ打って一世一代の夢を追っていたらしい。まあ伊三郎ってのは本名で、茶屋の者たちは江戸の頃に倣って未だに彼のことを四郎兵衛のお父さんと呼んでいるらしいがな」
 やはりか。初披露目の時もそうだったが、花魁をモノにするという名目である今宵も丹羽のような常識のある人物を花魁相手の客として選んだことからしても、ここの主人はこの商売に誇りを失っていないと思われる。
「あのオッサン、伊三郎っていうのか。そういやまだ名前を聞いてなかったよな」
 紫月がそう言えば、冰も倫周も全くだとうなずいた。
「花魁道中をした時にお店の入り口の看板に三浦屋って出てたので、ああそういう屋号なんだーって思ってましたけど、そういえばご主人のお名前は知らなかったですよね」
「うん、お父さんって呼べって言われただけだったもんねー。すっかりそのイメージで覚えちゃってて本名とか気にならないままだった」
 何とも脳天気なことだが、とにかくはここの主人のまずまともといえる扱いのお陰でか、拐われてきた皆が無事であったことが何よりだと丹羽は苦笑していた。
「それで、ご主人の伊三郎さん、いや四郎兵衛さんとお呼びした方が良いのですかな。彼は丹羽君の素性もご存じなのか?」
 つまり警察が動いているという事実を知っているのかという意味だ。源次郎が訊いたが、それについてはまだ明かしてはいないらしい。
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