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三千世界に極道の華
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「江戸そのもの――ね。花魁を抱えてるってことは、つまりあんたは数ある茶屋の中でも大手の主人ってわけか」
「おっしゃる通り。飲み込みが早くて助かりますな」
「何だってまたそんな大それた施設をこしらえたわけだ? 見たところ相当デカい企業が絡んでいるようだが――」
「まあ企業というのとは少々意味合いが違いますがね。組織――といった方が近いでしょうかな。私共とて数十年かけてようやくと実現に漕ぎ着けた一大プロジェクトでしたからな。まさに”夢”なのですよ」
「夢――ね? おたくらが企業だろうが組織だろうが興味はねえし、どんな夢を描こうが実現させようが、それ自体をどうこう言うつもりはねえがね。それよりも何故俺たちがここへ連れて来られたってことだ。しかもいきなり見ず知らずの連中に眠らされて、気が付いたらここに居たってのがな。俺たちには理由を説明してもらう権利くらいはあると思うがな」
「おっしゃる通りですな。失礼をしたことはお詫びする。ではご説明しよう。皆さんをここへお招きした理由ですが――是非ともここで働いていただきたいと思いましてな」
言葉じりは丁寧だが、ニヤっと品のない企みめいた笑みは善人のものでは決してない。男はいよいよ本性を現わそうとしていた。
「言っておきますが、ここは外界とは隔離された特別な場所です。一度ここに入ったからにはもう二度と外へは出られませんぞ。皆さんには一生ここで働いていただくことになります」
さも当然といったように下卑た笑いをみせる男を前に、皆は思いきり眉根を寄せさせられてしまった。
「おいおい、ふざけんのも大概にして欲しいね。強制的に連れて来られた上に二度と外へは出られねえだと? それじゃ拉致監禁じゃねえか。明らかに犯罪だな」
レイが強気の啖呵を切るも、男の方は余裕の態度のまま鼻でせせら笑うだけだった。
「言ったでしょう、ここは外界とは完全に隔離された場所だと。皆さんが知っている外の常識は通用しないのですよ。つまり――犯罪もクソもないというわけだ」
心なしか、だんだんと話し方も荒くなってくる。男が一語発するごとにじりじりと本性を剥き出していく様子に舌打ちしたい気分にさせられた。
「は――、まるで独裁者の言うこったな。時代錯誤もいいところだ。俺たちがおとなしく『はい、そうですか』と言いなりになると思っていやがるのか?」
「あなた方がどう思おうと、それこそ私の知ったことではない。ご承諾いただけないとおっしゃるのならば――」
男がチラリと視線を動かすと、サッと部屋の扉が開いて、数人の屈強な男たちが木刀やら短刀らしきものを手に姿を現わした。その全員がすべて着物姿の浪人風情である。こんなところにまで江戸情緒を徹底したのは感心だが、やっていることは暴君そのものだ。
「言うことを聞かなきゃ暴力かよ――えらく勝手な話だな」
「どうとでも。だが、命は惜しいでしょう? ここで楯突いて痛い目を見るよりも、素直に従った方が身の為ですぞ? それに――働きに見合うだけの充分な報酬と何不自由ない贅沢な生活をお約束する。悪い話では決してないと思いますぞ」
男は部下たちに下がるように目配せをすると、勝ち誇ったような不敵な笑みと共にそう言った。
「おっしゃる通り。飲み込みが早くて助かりますな」
「何だってまたそんな大それた施設をこしらえたわけだ? 見たところ相当デカい企業が絡んでいるようだが――」
「まあ企業というのとは少々意味合いが違いますがね。組織――といった方が近いでしょうかな。私共とて数十年かけてようやくと実現に漕ぎ着けた一大プロジェクトでしたからな。まさに”夢”なのですよ」
「夢――ね? おたくらが企業だろうが組織だろうが興味はねえし、どんな夢を描こうが実現させようが、それ自体をどうこう言うつもりはねえがね。それよりも何故俺たちがここへ連れて来られたってことだ。しかもいきなり見ず知らずの連中に眠らされて、気が付いたらここに居たってのがな。俺たちには理由を説明してもらう権利くらいはあると思うがな」
「おっしゃる通りですな。失礼をしたことはお詫びする。ではご説明しよう。皆さんをここへお招きした理由ですが――是非ともここで働いていただきたいと思いましてな」
言葉じりは丁寧だが、ニヤっと品のない企みめいた笑みは善人のものでは決してない。男はいよいよ本性を現わそうとしていた。
「言っておきますが、ここは外界とは隔離された特別な場所です。一度ここに入ったからにはもう二度と外へは出られませんぞ。皆さんには一生ここで働いていただくことになります」
さも当然といったように下卑た笑いをみせる男を前に、皆は思いきり眉根を寄せさせられてしまった。
「おいおい、ふざけんのも大概にして欲しいね。強制的に連れて来られた上に二度と外へは出られねえだと? それじゃ拉致監禁じゃねえか。明らかに犯罪だな」
レイが強気の啖呵を切るも、男の方は余裕の態度のまま鼻でせせら笑うだけだった。
「言ったでしょう、ここは外界とは完全に隔離された場所だと。皆さんが知っている外の常識は通用しないのですよ。つまり――犯罪もクソもないというわけだ」
心なしか、だんだんと話し方も荒くなってくる。男が一語発するごとにじりじりと本性を剥き出していく様子に舌打ちしたい気分にさせられた。
「は――、まるで独裁者の言うこったな。時代錯誤もいいところだ。俺たちがおとなしく『はい、そうですか』と言いなりになると思っていやがるのか?」
「あなた方がどう思おうと、それこそ私の知ったことではない。ご承諾いただけないとおっしゃるのならば――」
男がチラリと視線を動かすと、サッと部屋の扉が開いて、数人の屈強な男たちが木刀やら短刀らしきものを手に姿を現わした。その全員がすべて着物姿の浪人風情である。こんなところにまで江戸情緒を徹底したのは感心だが、やっていることは暴君そのものだ。
「言うことを聞かなきゃ暴力かよ――えらく勝手な話だな」
「どうとでも。だが、命は惜しいでしょう? ここで楯突いて痛い目を見るよりも、素直に従った方が身の為ですぞ? それに――働きに見合うだけの充分な報酬と何不自由ない贅沢な生活をお約束する。悪い話では決してないと思いますぞ」
男は部下たちに下がるように目配せをすると、勝ち誇ったような不敵な笑みと共にそう言った。
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