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三千世界に極道の華
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「ほう? さすがに焔と遼二のやることだ。頼りになるな」
レイも期待に瞳を輝かせたが、ひとつ心配があるとすればそれはやはりここが地下だということだ。
「電波が届いてくれりゃいいがな。どうもここは秘密裏に作られた施設のようだし、外界から入り込むにはセキュリティも厳しそうだ。仮に突き止められたとして、ここへの出入り口だが……簡単には見つけられねえ仕掛けがありそうな気がする」
第一ここが日本国内のどの辺りに位置しているのかも分からずじまいだ。
「時間的に考えて海外ではなさそうだが、それも眠らされていた期間がどのくらいだったかにもよるな」
レイは自らの腕時計を確認しながら『十時を指している』と言った。
拉致された時刻は夕方の四時少し手前だったから、普通に考えればそれから六時間余りといったところか。
「俺の時計は日付けが入っているタイプではないんでな。ここが地下だということと薬の効き目から考えても……ひょっとしたら次の日の午前十時という可能性もある」
ところがそれは源次郎がしていた腕時計によってすぐに解決した。
「私のは日付けが入っているタイプです。敵が操作を加えていなければですが、まだ本日中の午後十時ということになりますな」
まさに痒いところに手が届く、お手柄な源次郎である。
「マジ? さすがは源さんだ! ってことは、俺たちが寝ちまってたのは六時間くらいってことか――。海外の可能性は低いな」
紫月が明るい声を出す。国内であるならば周と鐘崎に連絡もつきやすいだろうからだ。ひとまずは安心といえる。
「あとはどうやって外との連絡を取るかだが……。ここが吉原をモデルにしてるってんなら、案外出入り口は一箇所の可能性もあるか」
レイが難しい顔で考え込む傍らで、倫周が『どうして?』と首を傾げた。
「当時の吉原ってのはな、大門ってのがあってそこを潜らなきゃ出入りできなかったんだ。むろん、出入りは門番によって厳しくチェックされる。客はともかく遊女の足抜きはご法度だったからな。特に女の出入りには厳しかったそうだ。大門以外は周囲を濠に囲まれてたって話も残ってるようだぜ」
「へえ、そうなの。レイちゃん、随分と物知りだねぇ。さすがは五十代!」
「五十代は余計だ! 俺はなぁ、永遠の二十歳を自負してんだぞ。それに確かまだ五十までには一、二年あったはずだ!」
「ええー、そうだっけ? 僕の年齢からしても、とっくに超えてるはずだけどねぇ?」
「……ッ! うるせえガキだなぁ。おめえを仕込んだ時にゃ俺はまだ学生だったんだ。逆算したって五十はいってねえだろが!」
「学生って、まさか高校生? レイちゃんってもしかしてツッパリだったの?」
「バカタレ! 大学生だ。てか、おめえこそいつの時代のガキだよ! ”ツッパリ”なんざ今時死語だろうが」
「ええー、死語とかさぁ。それそのものが”死語”じゃない?」
またもやくだらない柊親子の言い合いが始まって、皆があんぐり顔になった時だった。部屋の外から何やら物音がしたと思ったら続いて扉が開けられて、三人連れの男が姿を現したのだ。その内の二人は先程エレベーター内で出会った男たちに間違いなかった。その彼らが気を遣いながら腰を低くしているところをみると、もう一人は彼らのボスといったところか。かなり恰幅のいい初老の男だが堂々としていて威厳を振りまいている。
「いよいよ敵さんのお出ましか」
レイが不敵な笑みと共に眼光鋭く身構える姿勢をみせた。
レイも期待に瞳を輝かせたが、ひとつ心配があるとすればそれはやはりここが地下だということだ。
「電波が届いてくれりゃいいがな。どうもここは秘密裏に作られた施設のようだし、外界から入り込むにはセキュリティも厳しそうだ。仮に突き止められたとして、ここへの出入り口だが……簡単には見つけられねえ仕掛けがありそうな気がする」
第一ここが日本国内のどの辺りに位置しているのかも分からずじまいだ。
「時間的に考えて海外ではなさそうだが、それも眠らされていた期間がどのくらいだったかにもよるな」
レイは自らの腕時計を確認しながら『十時を指している』と言った。
拉致された時刻は夕方の四時少し手前だったから、普通に考えればそれから六時間余りといったところか。
「俺の時計は日付けが入っているタイプではないんでな。ここが地下だということと薬の効き目から考えても……ひょっとしたら次の日の午前十時という可能性もある」
ところがそれは源次郎がしていた腕時計によってすぐに解決した。
「私のは日付けが入っているタイプです。敵が操作を加えていなければですが、まだ本日中の午後十時ということになりますな」
まさに痒いところに手が届く、お手柄な源次郎である。
「マジ? さすがは源さんだ! ってことは、俺たちが寝ちまってたのは六時間くらいってことか――。海外の可能性は低いな」
紫月が明るい声を出す。国内であるならば周と鐘崎に連絡もつきやすいだろうからだ。ひとまずは安心といえる。
「あとはどうやって外との連絡を取るかだが……。ここが吉原をモデルにしてるってんなら、案外出入り口は一箇所の可能性もあるか」
レイが難しい顔で考え込む傍らで、倫周が『どうして?』と首を傾げた。
「当時の吉原ってのはな、大門ってのがあってそこを潜らなきゃ出入りできなかったんだ。むろん、出入りは門番によって厳しくチェックされる。客はともかく遊女の足抜きはご法度だったからな。特に女の出入りには厳しかったそうだ。大門以外は周囲を濠に囲まれてたって話も残ってるようだぜ」
「へえ、そうなの。レイちゃん、随分と物知りだねぇ。さすがは五十代!」
「五十代は余計だ! 俺はなぁ、永遠の二十歳を自負してんだぞ。それに確かまだ五十までには一、二年あったはずだ!」
「ええー、そうだっけ? 僕の年齢からしても、とっくに超えてるはずだけどねぇ?」
「……ッ! うるせえガキだなぁ。おめえを仕込んだ時にゃ俺はまだ学生だったんだ。逆算したって五十はいってねえだろが!」
「学生って、まさか高校生? レイちゃんってもしかしてツッパリだったの?」
「バカタレ! 大学生だ。てか、おめえこそいつの時代のガキだよ! ”ツッパリ”なんざ今時死語だろうが」
「ええー、死語とかさぁ。それそのものが”死語”じゃない?」
またもやくだらない柊親子の言い合いが始まって、皆があんぐり顔になった時だった。部屋の外から何やら物音がしたと思ったら続いて扉が開けられて、三人連れの男が姿を現したのだ。その内の二人は先程エレベーター内で出会った男たちに間違いなかった。その彼らが気を遣いながら腰を低くしているところをみると、もう一人は彼らのボスといったところか。かなり恰幅のいい初老の男だが堂々としていて威厳を振りまいている。
「いよいよ敵さんのお出ましか」
レイが不敵な笑みと共に眼光鋭く身構える姿勢をみせた。
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