477 / 1,212
漆黒の記憶
38(漆黒の記憶 完結)
しおりを挟む
「……ん、見たい……。でも見てるだけじゃ足りないかも……」
「だったらどうする?」
「したい……。白龍のを……その……俺も一緒に」
「自慰を手伝ってくれるのか?」
コツリと額を合わせ、視界に入りきらないほどに近い位置でとてつもなく淫らな視線が誘っている。
「や……、その言い方……頭も……身体も全部。俺、おかしくなっちゃいそう……」
「ああ――おかしくしてやる」
「白龍……!」
ゾクゾクと腹の底から湧き上がるような言い知れない波が指の先、髪の一本にまで疼き広がっていくようだ。
周は無意識にしがみついてくる華奢な手を取ると、既に硬くなった自らの雄に導いては握らせた。
「……ッあ! 白龍……」
「よく覚えておけ。例えどんなことがあっても、記憶が失くなったとしても。この手の感触だけは忘れるな。これはお前のもんだ。お前だけの」
「ん……、うん! 大好き……大好き白龍!」
「ああ。俺もだ。お前のすべてを――」
愛しているよ――!
睦み合い、もつれ合い、それこそ我を忘れるまで強く激しく求める気持ちのままに奪い合い……いつのまにか夜が白々と次の未来を連れてくるまで二人は共に溺れ合ったのだった。
そう、二人だけの世界で互いだけをその瞳に映して。獣の如く本能のまま、身も心もひとつに結ぶべく愛しみ合ったのだった。
冰の記憶喪失という危機から始まった衝撃の出来事であったが、無事に記憶が戻った今――これまでよりも深く強く二人を結びつける結果となった。
「もしかしたらこれは黄のじいさんがくれたプレゼントだったのかも知れん」
「じいちゃんからの?」
「あの頃、心のどこかで幼かったお前と暮らしてみたいと思っていた俺への――。そして、お前を残して香港を去ることを迷っていた俺への――な?」
「白龍……」
「じいさんに会いに行くか。改めて今こうしてお前と一緒にいられることへの感謝を伝えたい。幼い日のお前との時間を過ごさせてくれたことへの礼もだ。そしてこれからも見守ってくれと」
「白龍、ありがとう。ありがとうね、本当に……! 俺もじいちゃんに報告したい。俺は今、元気で漆黒のお兄さんと幸せに暮らしていますって」
激しく睦み合った後にはあたたかくやさしい気持ちに包まれる。そんな時を共に過ごせる幸せを噛み締めながら、二人は出会った香港の街へと夢を馳せるのだった。
黄老人が静かに眠る香港の街はきっといつでも変わらずにそこにいて、二人を見守ってくれるだろう。そしていつでもあたたかく迎えてくれるに違いない。
日を追う毎に早くなる日の出が新しい季節を運んでくるように、周と冰にとってもより一層絆が深まった時が訪れようとしている。
二人が共に暮らし始めてから二度目の――春浅き頃のことだった。
漆黒の記憶 - FIN -
「だったらどうする?」
「したい……。白龍のを……その……俺も一緒に」
「自慰を手伝ってくれるのか?」
コツリと額を合わせ、視界に入りきらないほどに近い位置でとてつもなく淫らな視線が誘っている。
「や……、その言い方……頭も……身体も全部。俺、おかしくなっちゃいそう……」
「ああ――おかしくしてやる」
「白龍……!」
ゾクゾクと腹の底から湧き上がるような言い知れない波が指の先、髪の一本にまで疼き広がっていくようだ。
周は無意識にしがみついてくる華奢な手を取ると、既に硬くなった自らの雄に導いては握らせた。
「……ッあ! 白龍……」
「よく覚えておけ。例えどんなことがあっても、記憶が失くなったとしても。この手の感触だけは忘れるな。これはお前のもんだ。お前だけの」
「ん……、うん! 大好き……大好き白龍!」
「ああ。俺もだ。お前のすべてを――」
愛しているよ――!
睦み合い、もつれ合い、それこそ我を忘れるまで強く激しく求める気持ちのままに奪い合い……いつのまにか夜が白々と次の未来を連れてくるまで二人は共に溺れ合ったのだった。
そう、二人だけの世界で互いだけをその瞳に映して。獣の如く本能のまま、身も心もひとつに結ぶべく愛しみ合ったのだった。
冰の記憶喪失という危機から始まった衝撃の出来事であったが、無事に記憶が戻った今――これまでよりも深く強く二人を結びつける結果となった。
「もしかしたらこれは黄のじいさんがくれたプレゼントだったのかも知れん」
「じいちゃんからの?」
「あの頃、心のどこかで幼かったお前と暮らしてみたいと思っていた俺への――。そして、お前を残して香港を去ることを迷っていた俺への――な?」
「白龍……」
「じいさんに会いに行くか。改めて今こうしてお前と一緒にいられることへの感謝を伝えたい。幼い日のお前との時間を過ごさせてくれたことへの礼もだ。そしてこれからも見守ってくれと」
「白龍、ありがとう。ありがとうね、本当に……! 俺もじいちゃんに報告したい。俺は今、元気で漆黒のお兄さんと幸せに暮らしていますって」
激しく睦み合った後にはあたたかくやさしい気持ちに包まれる。そんな時を共に過ごせる幸せを噛み締めながら、二人は出会った香港の街へと夢を馳せるのだった。
黄老人が静かに眠る香港の街はきっといつでも変わらずにそこにいて、二人を見守ってくれるだろう。そしていつでもあたたかく迎えてくれるに違いない。
日を追う毎に早くなる日の出が新しい季節を運んでくるように、周と冰にとってもより一層絆が深まった時が訪れようとしている。
二人が共に暮らし始めてから二度目の――春浅き頃のことだった。
漆黒の記憶 - FIN -
12
お気に入りに追加
871
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる