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漆黒の記憶
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その後風呂を上がると、周は冰に寝巻きを着せてやり、自分の寝室へと連れて行った。
「どうだ、広いベッドだろう? ここならわざわざお前のベッドを持って来ずとも十分寝られそうだろうが」
周としては当然のこと、これまで通り二人で一緒に眠るつもりである。確かに目を見張るほど大きなベッドを前にして、冰も納得した様子だった。
「ホントに大きなお布団! こんなに大きくて綺麗なベッド……見たことがないよ」
ここで寝てもいいの? ――というふうにおずおずと見上げてくる仕草がなんともいえずに可愛らしい。
「ここはお前のベッドでもあるからな。遠慮はいらねえ。大の字で動き回ったってそう簡単には落ちねえから安心して寝られるぞ?」
周はヒョイと後ろから抱きかかえると、ベッドの中央に冰を横たわらせた。
「うわぁ……フッカフカだぁ! 綿菓子みたいにやわらかいお布団だね! 王様のベッドみたい!」
「王様とはいい例えだな。じゃあ俺は王様に仕える召使いだ。何でも言うことを聞いてやるぞ!」
「ええー、僕が王様なの?」
「そうだ」
「王様はお兄さんだよ! 召使いは僕ね」
楽しそうにしながらフカフカのベッドを堪能している様子が可愛らしい。二人並んで羽布団に包まると、冰は少し真剣な真顔になって周を見つめた。
「お兄さん……あのさ」
「ん? なんだ。遠慮せずに何でも言え」
「うん、あの……僕が今は大人になってて記憶が失くなっちゃってるっていうのは……分かったんだけど……。でも僕、まだ自分が大人だっていうのが信じられないっていうか……お兄さんとどんなふうにお話してたのかも思い出せなくて。敬語っていうの? 大人の人同士の話し方っていうのがあると思うんだけど、どんなふうにしゃべっていいか分からないんだ。大人のくせにこんなしゃべり方でヘンなんだろうなって……」
つまりは鏡の中の姿は確かに立派な青年だが、意識は子供であるが故に傍から自分がどのように見られるかというギャップが心配なのだろう。周はすぐに心配するなと言って微笑んでみせた。
「話し方なんぞ気にする必要はねえ。無理に”大人”を意識する必要はねえし、今のままで十分だ。それにな、俺と話す時も普段から今と大して変わらねえしゃべり方だったぞ?」
「……いいの?」
「もちろんだ。お前が俺を覚えていてくれただけで百点満点だ」
「ありがとうお兄さん……。ねえ、僕はお兄さんのこと何て呼んでたの?」
「うむ。俺のことは白龍と呼んでた」
「白龍? もしかしてお兄さんの背中の絵を見てそう呼んでたのかな」
「それもあるが、俺の字が白龍だからな」
「……! そうなんだ。お兄さん、白龍っていう字なんだ?」
香港育ちの冰には字の意味もわけなく理解できたようだ。
「どうだ、広いベッドだろう? ここならわざわざお前のベッドを持って来ずとも十分寝られそうだろうが」
周としては当然のこと、これまで通り二人で一緒に眠るつもりである。確かに目を見張るほど大きなベッドを前にして、冰も納得した様子だった。
「ホントに大きなお布団! こんなに大きくて綺麗なベッド……見たことがないよ」
ここで寝てもいいの? ――というふうにおずおずと見上げてくる仕草がなんともいえずに可愛らしい。
「ここはお前のベッドでもあるからな。遠慮はいらねえ。大の字で動き回ったってそう簡単には落ちねえから安心して寝られるぞ?」
周はヒョイと後ろから抱きかかえると、ベッドの中央に冰を横たわらせた。
「うわぁ……フッカフカだぁ! 綿菓子みたいにやわらかいお布団だね! 王様のベッドみたい!」
「王様とはいい例えだな。じゃあ俺は王様に仕える召使いだ。何でも言うことを聞いてやるぞ!」
「ええー、僕が王様なの?」
「そうだ」
「王様はお兄さんだよ! 召使いは僕ね」
楽しそうにしながらフカフカのベッドを堪能している様子が可愛らしい。二人並んで羽布団に包まると、冰は少し真剣な真顔になって周を見つめた。
「お兄さん……あのさ」
「ん? なんだ。遠慮せずに何でも言え」
「うん、あの……僕が今は大人になってて記憶が失くなっちゃってるっていうのは……分かったんだけど……。でも僕、まだ自分が大人だっていうのが信じられないっていうか……お兄さんとどんなふうにお話してたのかも思い出せなくて。敬語っていうの? 大人の人同士の話し方っていうのがあると思うんだけど、どんなふうにしゃべっていいか分からないんだ。大人のくせにこんなしゃべり方でヘンなんだろうなって……」
つまりは鏡の中の姿は確かに立派な青年だが、意識は子供であるが故に傍から自分がどのように見られるかというギャップが心配なのだろう。周はすぐに心配するなと言って微笑んでみせた。
「話し方なんぞ気にする必要はねえ。無理に”大人”を意識する必要はねえし、今のままで十分だ。それにな、俺と話す時も普段から今と大して変わらねえしゃべり方だったぞ?」
「……いいの?」
「もちろんだ。お前が俺を覚えていてくれただけで百点満点だ」
「ありがとうお兄さん……。ねえ、僕はお兄さんのこと何て呼んでたの?」
「うむ。俺のことは白龍と呼んでた」
「白龍? もしかしてお兄さんの背中の絵を見てそう呼んでたのかな」
「それもあるが、俺の字が白龍だからな」
「……! そうなんだ。お兄さん、白龍っていう字なんだ?」
香港育ちの冰には字の意味もわけなく理解できたようだ。
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