436 / 1,212
極道たちのクリスマスパーティー
11
しおりを挟む
黒をベースに深い焦げ茶色の糸で端の方にだけ幾何学模様が織り込まれており、裾には長めのフリンジが美しい。
「白龍は移動は殆ど車だからさ、コートはそれこそすごくカッコイイのを持ってるし……。そういえばあんまりマフラーしてるのを見たことがないなって思ったんだ。車から降りてちょっとだけ外を歩く時とかにいいかなって」
そうなのだ。訪問先の企業などで駐車場から建物内までの短い区間を歩く時など、コートを羽織るまでもないかなという場合にいいのではないかと思ったわけだ。
周は早速首に巻き付けると、『どうだ?』と言って嬉しそうに口角を上げてみせた。
一見にしてどこのブランドのものと分かるロゴのような模様は入っていないが、生地の風合いなどから高級感と品の良さは一目で分かるようなタイプのものである。マフラーそのものももちろん気に入ったが、使うシチュエーションや機能、それに見た目など、いろいろなことを考えながら選んでくれた冰の気持ちを思えば、周にとってそれは何よりも嬉しいものだった。
「うん……! やっぱり白龍は何でも似合うね! 元がカッコイイから当たり前か」
冰が嬉しそうにそんな感想を言う。
「本当にすげえあったけえぞ! 今ちょっと首に巻いただけなのに、室温が上がったのかってくらいだ」
「うん、何かそうみたいね。店員さんがさ、襟元に一枚あるとないのじゃ感じる寒さが全然違うんですよって言ってた」
「なるほどな。首をあっためるだけでこんなに違うものか。それに何と言っても肌触りが抜群だ! 軽いしあったけえし、それにデザインも言うことなしだ」
「ホント?」
「ああ、本当のホントだ!」
「良かったー! 最初ね、白龍だから名前にちなんで白か――それとも”焔”のイメージのワイン色でもいいかなって思ってたんだけど、俺にとって白龍は一番最初に会った時の印象が強くてさ。”漆黒の人”にはやっぱり黒かなって」
そうだ。初めて出会ったその時、幼い冰が周に抱いた印象を黄老人が”まさに漆黒が似合うお人だ”と教えたというエピソードである。今でもその頃の思いを大切に覚えていてくれる愛しき伴侶に、周はこれ以上ないというくらい瞳を細めては感激の気持ちを噛み締めたのだった。
「ありがとうな、冰――。一生大事に使わせてもらう」
「そんな……一生だなんて……古くなったらいつでも交換していいよ」
「いいや、一生だ! こういうものは大事に使えば一生もつものだからな。こんなに嬉しいことはねえ」
「白龍ったらさ、大袈裟なんだから」
「大袈裟でも何でもねえさ。なんて言ったってお前が俺の為に選んでくれたんだから、その気持ちだけでも感無量だ」
「白龍は移動は殆ど車だからさ、コートはそれこそすごくカッコイイのを持ってるし……。そういえばあんまりマフラーしてるのを見たことがないなって思ったんだ。車から降りてちょっとだけ外を歩く時とかにいいかなって」
そうなのだ。訪問先の企業などで駐車場から建物内までの短い区間を歩く時など、コートを羽織るまでもないかなという場合にいいのではないかと思ったわけだ。
周は早速首に巻き付けると、『どうだ?』と言って嬉しそうに口角を上げてみせた。
一見にしてどこのブランドのものと分かるロゴのような模様は入っていないが、生地の風合いなどから高級感と品の良さは一目で分かるようなタイプのものである。マフラーそのものももちろん気に入ったが、使うシチュエーションや機能、それに見た目など、いろいろなことを考えながら選んでくれた冰の気持ちを思えば、周にとってそれは何よりも嬉しいものだった。
「うん……! やっぱり白龍は何でも似合うね! 元がカッコイイから当たり前か」
冰が嬉しそうにそんな感想を言う。
「本当にすげえあったけえぞ! 今ちょっと首に巻いただけなのに、室温が上がったのかってくらいだ」
「うん、何かそうみたいね。店員さんがさ、襟元に一枚あるとないのじゃ感じる寒さが全然違うんですよって言ってた」
「なるほどな。首をあっためるだけでこんなに違うものか。それに何と言っても肌触りが抜群だ! 軽いしあったけえし、それにデザインも言うことなしだ」
「ホント?」
「ああ、本当のホントだ!」
「良かったー! 最初ね、白龍だから名前にちなんで白か――それとも”焔”のイメージのワイン色でもいいかなって思ってたんだけど、俺にとって白龍は一番最初に会った時の印象が強くてさ。”漆黒の人”にはやっぱり黒かなって」
そうだ。初めて出会ったその時、幼い冰が周に抱いた印象を黄老人が”まさに漆黒が似合うお人だ”と教えたというエピソードである。今でもその頃の思いを大切に覚えていてくれる愛しき伴侶に、周はこれ以上ないというくらい瞳を細めては感激の気持ちを噛み締めたのだった。
「ありがとうな、冰――。一生大事に使わせてもらう」
「そんな……一生だなんて……古くなったらいつでも交換していいよ」
「いいや、一生だ! こういうものは大事に使えば一生もつものだからな。こんなに嬉しいことはねえ」
「白龍ったらさ、大袈裟なんだから」
「大袈裟でも何でもねえさ。なんて言ったってお前が俺の為に選んでくれたんだから、その気持ちだけでも感無量だ」
13
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる