極道恋事情

一園木蓮

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極道たちのクリスマスパーティー

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 その夜のことだ。
 風呂から上がった周は、リビングにもベッドにも冰の姿が見えないことを怪訝に思い、ダイニングや冰自身の部屋まで捜して歩くこととなった。
 ふとドアの隙間から向かいのボールルームの灯りが漏れていることに気付き、そっと覗きに行くと、大きなもみの木を見上げるようにして冰が佇んでいた。
「ここにいたのか。部屋にいねえから心配したぞ」
「白龍! ごめんね。明日にはもうこの飾りを片付けちゃうんだと思ったらさ、もうちょっと見ておきたくて」
「それもいいが湯冷めしねえようにしろよ」
 周は羽織っていたガウンを脱ぐと、自分よりも一回り華奢な冰の肩へとそれをかけた。
「あったかい……! ありがとうね、白龍。あ……! でもこれじゃ白龍が風邪引いちゃう」
「俺は頑丈にできてるから心配はいらねえさ」
 クスッと笑みながらクシャクシャっと髪を撫でられて、冰は湯上がりの頬をポッと朱に染めた。さりげなく当たり前のようにいつもこうして気遣ってくれる。そんな亭主に心がキュンと摘まれる。冰は改めて今こうして彼と共にいられる幸せを噛み締めるのだった。
「楽しかったね、今日のパーティー。そういえばさ、初めて紫月さんと鐘崎さんに会ったのも去年のクリスマスの頃だったんだよね。真田さんがダイニングの方にツリーを飾ってくれて、皆んなでディナーを食べたのをよく覚えてる」
 だからよけいに今年もこうしてツリーをもう少し眺めていたい、冰の横顔からはそんな思いが滲み出ているようだった。
「そういやそうだったな。あれからもう一年か」
「うん。俺が一人で白龍に会いに来て、一緒に住まわせてもらうようになってから一年ちょっと。早かったなぁ。何だか昨日のことみたい」
「そうだな。思い返してみるといろんなことがあったからな。お前や一之宮が拉致られたりして危ねえ目にも遭わせちまったし、逆に俺とカネがピンチに陥ったりな。濃い一年だったが、俺にとってはお前がここを訪ねてくれた日のことは忘れられねえ思い出だ」
 周はそう言いながら、ここ日本で起業することを決め、まだ幼かった冰を置いて香港を離れる日のことを思い浮かべていた。
「あれから八年、いやもう九年になるのか」
 ポツリと呟かれた言葉に冰が首を傾げる。
「九年?」
「ん? ああ、俺が日本に来てからってことだ」
「そっか! 白龍が会社を立ち上げてからもうそんなになるんだね。ってことは来年で十周年だ!」
「そう考えると時の経つのは早えって思うな」
「十周年になったらお祝いしなきゃ!」
 ワクワクと瞳を輝かせる冰を見つめながら、周はまったく違うことを思い浮かべていたわけか、愛しそうに冰の肩を抱き寄せながら微笑んだ。
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