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チェインジング・ダーリン
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現段階で既に警察が追跡していたと仮定して、車での逃走は賢いとは言えない。
(――とすると、考えられるのはヘリか……あるいはセスナか――)
バスに乗っている犯人だけでも五人、周囲に見張りや誘導の車がいるはずだから十人は堅い。一般的なヘリでその人数に乗るのは無理がある。とすればセスナか小型機、テロ集団ならば軍用機のような大型ヘリということも考えられる。
(西へ向かっているということは――こっち方面には確か今は閉鎖された民間機の離着陸場があったな)
犯人たちは空路を使うつもりなのかも知れないと鐘崎は思っていた。これを周や源次郎らに伝えたいと思えども、今は通信手段がない状態だ。しばらくは様子を見るしかない――歯がゆいながらもここはひとまず耐えるしかない。次に何か動きがあった時の為にと常に周囲の客たちの様子などに神経を光らせる鐘崎であった。
◇ ◇ ◇
一方、周らの方でも無線での連携を取り合いながらバスを追跡していた。途中、源次郎からの通信が届き、彼はヘリで上空からの追跡を行うとのことで、より強固な体制を敷けそうだ。また、周の側近たちによる後続部隊も続々と追い付いてきていた。
紫月が運転を買って出てくれたので、周は各車に連携を取ることに集中できていたし、目視での道路状況も細かなところまで把握することが可能となり、結果としては大正解といえた。
高速道路は順調に流れていて目立った渋滞もない。
丸の内の駐車場を出てから一時間ほど走ったと思われる頃になって、ようやくと遠くの方からパトカーのサイレンが追い掛けてくる音に気が付いた。
『警察が動き出したか。最後尾、パトカーとの距離は?』
『三キロほどと思われます』
『よし! 全車、パトカーが追い付く前にバスを追い越して前へ出ろ。李はバスのすぐ脇へ付け。警察車両が追い付いて来たらバスの前へ割り込むようにして道を譲るふりをしろ! 警察に停められないようにするんだ』
周の号令で各車が移動に入る。配置が完了後、けたたましいサイレンと共に拡声器からの警告が発せられた。
「前のバス、停まりなさい!」
李がバスの直前へと車線変更をして警察車両に道を譲ると、数台の覆面パトカーがバスを取り囲むようにしてぴったりと張り付いた。
――と、その時だった。
バスの窓が開けられたと思ったら、間髪入れずに覆面パトカーに向けて一発の銃弾が発射された。
窓ガラスに着弾し、急ブレーキによってあわや玉突き衝突寸前となる。なんとか回避したものの、その直後、バスのすぐ脇を走行中の覆面刑事が目にした光景は驚くべきものだった。
目出し帽を被った犯人が老人男性一人を羽交い締めにしながら銃を突き付けていたのだ。その隣ではもう一人の犯人が『下がれ!』と警察車両を威嚇する。やむを得ずパトカーの一団はスピードをゆるめるしかなかった。
(――とすると、考えられるのはヘリか……あるいはセスナか――)
バスに乗っている犯人だけでも五人、周囲に見張りや誘導の車がいるはずだから十人は堅い。一般的なヘリでその人数に乗るのは無理がある。とすればセスナか小型機、テロ集団ならば軍用機のような大型ヘリということも考えられる。
(西へ向かっているということは――こっち方面には確か今は閉鎖された民間機の離着陸場があったな)
犯人たちは空路を使うつもりなのかも知れないと鐘崎は思っていた。これを周や源次郎らに伝えたいと思えども、今は通信手段がない状態だ。しばらくは様子を見るしかない――歯がゆいながらもここはひとまず耐えるしかない。次に何か動きがあった時の為にと常に周囲の客たちの様子などに神経を光らせる鐘崎であった。
◇ ◇ ◇
一方、周らの方でも無線での連携を取り合いながらバスを追跡していた。途中、源次郎からの通信が届き、彼はヘリで上空からの追跡を行うとのことで、より強固な体制を敷けそうだ。また、周の側近たちによる後続部隊も続々と追い付いてきていた。
紫月が運転を買って出てくれたので、周は各車に連携を取ることに集中できていたし、目視での道路状況も細かなところまで把握することが可能となり、結果としては大正解といえた。
高速道路は順調に流れていて目立った渋滞もない。
丸の内の駐車場を出てから一時間ほど走ったと思われる頃になって、ようやくと遠くの方からパトカーのサイレンが追い掛けてくる音に気が付いた。
『警察が動き出したか。最後尾、パトカーとの距離は?』
『三キロほどと思われます』
『よし! 全車、パトカーが追い付く前にバスを追い越して前へ出ろ。李はバスのすぐ脇へ付け。警察車両が追い付いて来たらバスの前へ割り込むようにして道を譲るふりをしろ! 警察に停められないようにするんだ』
周の号令で各車が移動に入る。配置が完了後、けたたましいサイレンと共に拡声器からの警告が発せられた。
「前のバス、停まりなさい!」
李がバスの直前へと車線変更をして警察車両に道を譲ると、数台の覆面パトカーがバスを取り囲むようにしてぴったりと張り付いた。
――と、その時だった。
バスの窓が開けられたと思ったら、間髪入れずに覆面パトカーに向けて一発の銃弾が発射された。
窓ガラスに着弾し、急ブレーキによってあわや玉突き衝突寸前となる。なんとか回避したものの、その直後、バスのすぐ脇を走行中の覆面刑事が目にした光景は驚くべきものだった。
目出し帽を被った犯人が老人男性一人を羽交い締めにしながら銃を突き付けていたのだ。その隣ではもう一人の犯人が『下がれ!』と警察車両を威嚇する。やむを得ずパトカーの一団はスピードをゆるめるしかなかった。
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