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チェインジング・ダーリン
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だが、それならば直接倉庫へ向かえばいいものを、わざわざこの会場に脅迫状まで送ってよこしたところをみると、人質をとって原石を奪う手段に使うつもりなのだろうか。内覧会という上客の集まる日でもあるし、招待客は世間一般的に見ても身分も知名度も高い人物といえる。人質事件などが起これば大ニュースとしてマスコミも騒ぎ出すだろう。店の評判を落とすのにも一役買えるし、彼らにとっては一石二鳥というわけだ。
「ということは倉庫の方も既に敵の包囲網が完成されていると思っていいな。支配人、倉庫の場所と規模を教えてください。見取り図などがあれば尚助かるのですが」
「見取り図でしたら事務所にございます。すぐにお持ちします!」
「お願いします」
そんな会話をしていると、階下の会場内に見知った顔ぶれを見つけて鐘崎はハタと眉をしかめた。
店のスタッフに案内されながらにこやかな笑顔を見せているのは冰である。隣には里恵子の恋人の森崎瑛二の姿もあった。
「冰……何故ヤツが一人で? 氷川はどうした」
だが、森崎が一緒のところをみると、おおかたロビーあたりで偶然出会って、冰だけが先に会場内へ入ったのかも知れない。
「氷川のヤツは厠へでも行ってんのか……」
それとも自分たちと待ち合わせていたロビーの方に残っているのかも知れない。
とにかく冰を一人にさせておくわけにはいかない。彼は裏社会の人間という雰囲気は微塵も感じられないものの、ウェイターに扮した敵集団がいる場内に周と離れ離れにしておくのは非常に危険である。
「支配人、私は普通の招待客として先に会場へ潜入します。ウチの組員に伝えておきますので、倉庫の見取り図を至急鐘崎組へ送ってください!」
鐘崎はそう言い残すと冰のいる会場内へと急いだ。
そうして場内に入った鐘崎は、まずは遠目から森崎へと目配せで合図を試みることにした。彼も極道の世界に育った者だ。通常時とは違う異変が起こっていることを視線だけで感じ取ることができるかも知れないと賭けてみたのだ。
都合がいいことに冰の方はスタッフと話し込みながら展示物に目を向けていて、こちらには気付いていない。何も知らない彼は、顔を合わせれば柔和な調子で手を振ったりしてくるだろう。知り合い同士だとバレて不味いことはないが、慎重には慎重を期すに越したことはない。
どうやら森崎の方もこちらの思惑を察してくれたようで、側にいる冰に何やら耳打ちしてくれている。鐘崎の思いが届いたようであった。
そのままさりげなさを装いながら二人に近付くと、鐘崎は企業戦士的な物腰を装いながら挨拶の言葉を口にしてみせた。
「ということは倉庫の方も既に敵の包囲網が完成されていると思っていいな。支配人、倉庫の場所と規模を教えてください。見取り図などがあれば尚助かるのですが」
「見取り図でしたら事務所にございます。すぐにお持ちします!」
「お願いします」
そんな会話をしていると、階下の会場内に見知った顔ぶれを見つけて鐘崎はハタと眉をしかめた。
店のスタッフに案内されながらにこやかな笑顔を見せているのは冰である。隣には里恵子の恋人の森崎瑛二の姿もあった。
「冰……何故ヤツが一人で? 氷川はどうした」
だが、森崎が一緒のところをみると、おおかたロビーあたりで偶然出会って、冰だけが先に会場内へ入ったのかも知れない。
「氷川のヤツは厠へでも行ってんのか……」
それとも自分たちと待ち合わせていたロビーの方に残っているのかも知れない。
とにかく冰を一人にさせておくわけにはいかない。彼は裏社会の人間という雰囲気は微塵も感じられないものの、ウェイターに扮した敵集団がいる場内に周と離れ離れにしておくのは非常に危険である。
「支配人、私は普通の招待客として先に会場へ潜入します。ウチの組員に伝えておきますので、倉庫の見取り図を至急鐘崎組へ送ってください!」
鐘崎はそう言い残すと冰のいる会場内へと急いだ。
そうして場内に入った鐘崎は、まずは遠目から森崎へと目配せで合図を試みることにした。彼も極道の世界に育った者だ。通常時とは違う異変が起こっていることを視線だけで感じ取ることができるかも知れないと賭けてみたのだ。
都合がいいことに冰の方はスタッフと話し込みながら展示物に目を向けていて、こちらには気付いていない。何も知らない彼は、顔を合わせれば柔和な調子で手を振ったりしてくるだろう。知り合い同士だとバレて不味いことはないが、慎重には慎重を期すに越したことはない。
どうやら森崎の方もこちらの思惑を察してくれたようで、側にいる冰に何やら耳打ちしてくれている。鐘崎の思いが届いたようであった。
そのままさりげなさを装いながら二人に近付くと、鐘崎は企業戦士的な物腰を装いながら挨拶の言葉を口にしてみせた。
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