極道恋事情

一園木蓮

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チェインジング・ダーリン

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 鐘崎はウェイターたちの身のこなしや視線の配り方に違和感を覚えたので、支配人の話を聞いて疑いを強めたといったところだった。彼らは十中八九、裏の世界を知っている同業者と思える雰囲気だったからだ。ウェイターを乗っ取ってこれだけの人数を投入したということは、この場所で何らかの行動を起こす可能性が高い。
「ヤツらがああウロチョロしてたんじゃ不審物の確認は難しいか……」
 隙のない身のこなしからどうやら相手も素人ではなさそうである。しかもかなりの人数だ。脅迫状の文面といい、想像以上に大きなことをやらかすつもりなのかも知れない。
 鐘崎は自分で言うのもなんだが、同業者から見ればすぐにそれと分かってしまうような風貌をしている。こちらから見てウェイター集団がガセであると睨んだように、会場内を偵察して歩けば彼らに不審がられることは必須だ。ここはひとまず己の存在を知られずに外濠から埋めていく方が賢明と判断した。
 まずは源次郎にできる限り詳細な情報を伝えると共に、緊急事態が起きた際の一斉連絡を送信する。周や李らも受け取ることになるMG55のメッセージである。幸い周とは元々この会場で会うことになっていたし、思いの外早急に体制は整えられそうだ。肝心なのは犯人たちの目的である。
「支配人、ヤツらの目的に心当たりがありますか? どんなことでもいい、情報が欲しいのですが」
 鐘崎が訊くと、支配人の男も思い当たることをすべて羅列してくれた。
「一番の目的は我が社に対する恨みだと思うので、我が社が潰れればいいと思っているのでは……と。脅迫状にあるようにお客様を人質に取られたり怪我でも負わされたりすれば社の評判にかかわります。信頼のおけない店ということで業績が落ちれば倒産などということにもなりかねません」
「倒産か……。では直近で大きな取引きが行われる、もしくは加工前の原石などが大量に置かれている保管庫などがあれば教えてください」
「そうですね……取引き自体は既に契約も済んでいますし……」
 そう言い掛けて、支配人は『あッ!』と声を上げて青ざめた。
「原石で思い出しました! 契約した海外の鉱山からの荷物が届くのが……確か今日だったと思います! 今日の内覧会でも予約を取りますが、バレンタインや来春の新入学、就職祝いなどをターゲットに通販でも大掛かりな企画物として販売する予定でおりました。予定では今朝早くに港に着いた船から原石の積まれたコンテナを降ろして、一旦は臨海地区にある倉庫へと収めたはずです。それらをより安全な保管庫へと移す作業が今日の午後一から行われることになっていたかと……」
「原石か。時価でどのくらいの規模でしょうか」
「おそらくは……十億ほどかと」
「目的は略奪か――」
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