398 / 1,212
チェインジング・ダーリン
2
しおりを挟む
「これを送ってきた相手に心当たりがお有りですか?」
「ええ、まあ……」
「――!? あるんですか?」
ということは敵を突き止める手間は省けるか――。
「おそらくですが……今回の新店舗開店に向けて鉱石を仕入れる先の候補に上がっていた企業ではないかと。先様は是非我が社と手を組みたいとおっしゃってくださったんです。価格的には他社と比べものにならないくらいの好条件を提示されていて、最終段階まで迷ったんですが……。品質の面で納得がいかず結局はお断りすることになってしまいました」
「それを恨んでの犯行だと?」
「お断りする際にひどく憤慨なされまして……。上層部から聞いた話では取り引きを断ったことを後悔させてやると言われたそうです。そんなこともあって、ウチも警戒してはいたのですが……まさか開店直前の今日になってこのような脅迫状がくるとは……」
「届いた内容はこれだけでしょうか? 警察には届けられたのですか?」
「いえ、ファックスが来たのが本当につい先程でして。とりあえず社長には報告して、役員たちが今こちらに向かっています。警察にはその後でとのことでしたので。それで……今日は鐘崎様がお見えになると知っていたので、ご到着をお待ちしようとロビーに向かったところでお目に掛かれたというわけです」
なるほど、それであの慌てようだったということか。
まず――取引を断られた時点で既に報復を目論んでいたのなら、相手はそれ相応に準備も体制も整えていると思っていいだろう。気になるのは文面にある”血で染めて祝ってやる”という箇所だ。経済的に打撃を与えるというよりも対人間で血生臭い報復に出るつもりなのかも知れない。内覧会で人質をとられたり怪我人が出たりすれば、この宝飾店の評判は地に落ちるだろう。思ったよりも大事になる可能性が高い。鐘崎はテロ的な事態も視野に入れて迅速且つ慎重に対処する必要があると心得た。
「ご事情は分かりました。本来であれば社長さんの到着を待つべきでしょうが、あまり猶予はないように思えます。とにかくできるだけの情報が欲しい。念の為、内覧会の会場を調べさせてください」
万が一にもテロリストのような連中が入り込んでいないとも限らないし、悪くすれば爆発物のような物が仕掛けられている可能性も高い。鐘崎は会場へと向かいながら、組で留守番をしている源次郎へと応援の要請を入れた。
◇ ◇ ◇
「ええ、まあ……」
「――!? あるんですか?」
ということは敵を突き止める手間は省けるか――。
「おそらくですが……今回の新店舗開店に向けて鉱石を仕入れる先の候補に上がっていた企業ではないかと。先様は是非我が社と手を組みたいとおっしゃってくださったんです。価格的には他社と比べものにならないくらいの好条件を提示されていて、最終段階まで迷ったんですが……。品質の面で納得がいかず結局はお断りすることになってしまいました」
「それを恨んでの犯行だと?」
「お断りする際にひどく憤慨なされまして……。上層部から聞いた話では取り引きを断ったことを後悔させてやると言われたそうです。そんなこともあって、ウチも警戒してはいたのですが……まさか開店直前の今日になってこのような脅迫状がくるとは……」
「届いた内容はこれだけでしょうか? 警察には届けられたのですか?」
「いえ、ファックスが来たのが本当につい先程でして。とりあえず社長には報告して、役員たちが今こちらに向かっています。警察にはその後でとのことでしたので。それで……今日は鐘崎様がお見えになると知っていたので、ご到着をお待ちしようとロビーに向かったところでお目に掛かれたというわけです」
なるほど、それであの慌てようだったということか。
まず――取引を断られた時点で既に報復を目論んでいたのなら、相手はそれ相応に準備も体制も整えていると思っていいだろう。気になるのは文面にある”血で染めて祝ってやる”という箇所だ。経済的に打撃を与えるというよりも対人間で血生臭い報復に出るつもりなのかも知れない。内覧会で人質をとられたり怪我人が出たりすれば、この宝飾店の評判は地に落ちるだろう。思ったよりも大事になる可能性が高い。鐘崎はテロ的な事態も視野に入れて迅速且つ慎重に対処する必要があると心得た。
「ご事情は分かりました。本来であれば社長さんの到着を待つべきでしょうが、あまり猶予はないように思えます。とにかくできるだけの情報が欲しい。念の為、内覧会の会場を調べさせてください」
万が一にもテロリストのような連中が入り込んでいないとも限らないし、悪くすれば爆発物のような物が仕掛けられている可能性も高い。鐘崎は会場へと向かいながら、組で留守番をしている源次郎へと応援の要請を入れた。
◇ ◇ ◇
13
お気に入りに追加
877
あなたにおすすめの小説



ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる