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極道の姐
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「美紅!」
「黒龍……ッ! ああ、良かった! 無事だったのね!」
美紅が跳ねるようにして風へと抱きついてくる。その華奢な身体を受け止めると、風もまた愛しい妻を懐の中へと抱き締めた。
「血……ッ!? 怪我をしてるの黒龍!」
派手に飛び散った血糊に驚く妻を抱き締めたままで風が笑う。
「心配するな。これはガセの血糊だ」
「血糊? まあ、そうなの!」
美紅がホッとしたように胸を撫で下ろしている。
「それよりお前、一人でここに乗り込んで来たのか?」
風が怪訝そうな顔で訊くと、今度は美紅が笑いながら言った。
「いいえ、お父様も一緒よ! いま、階下のロビーにいらっしゃるわ」
「親父が……! そうか!」
「ええ、そう。あなたたちが戻って来ないと連絡を受けて、すぐにお父様がマカオへ乗り込んで陣頭指揮を取ってくださったのよ! アタシは家で待っているように言われてたんだけれど、とてもじゃないけどじっとしてなんかいられなくて……! お母様と一緒にお父様たちの後を追い掛けて来たの」
「そうだったのか。親父が……」
だが、父の隼が来ていることは周兄弟にも分かってはいた。冰の指に輝く琥珀の指輪を目にした時点で、それが父から託されたものと理解していたからだ。
「お前にも皆にも心配をかけてすまない」
風は再び妻を懐の中へ抱き締めると、誰に憚らずといった調子で彼女に口づけた。深い深い安堵と愛情を込めたキスだった。
そんな二人の様子を微笑ましげに見つめながら周と冰が部屋の中から姿を現すと、美紅は彼らの無事を喜んで冰へと抱きついた。
「白龍、冰! あなたたちも無事で良かった! 冰のお陰で黒龍も無事だったわ!」
「お姉様……!」
「本当によく頑張ってくれたわね! アタシがお父様の元へ到着した時には、既にあなたがこのホテルに潜入した後だったんだけれど、集音器であなたの活躍をずっと聞いてたのよ! 本当にありがとう! 怖かったでしょうに……!」
敵を欺き、身を呈して乗り込んでいった冰に心からの感謝を伝えながら、美紅は大切な義弟を抱き締めた。
すると、真向かいの部屋の扉が開かれ、中からは紫月に肩を借りた鐘崎が姿を現した。催淫剤に侵された欲をとりあえず解放したものの、未だおぼつかない足取りで紫月に支えられながら出てきたのである。
「カネ! 一之宮! お前らも無事で良かった!」
周が冰の腕を掴んだまま真っ先に駆け寄って労いの言葉を口にする。鐘崎も友の無事な姿を確認できて、ホッとしたように安堵の表情を浮かべていた。そして、互いの行動を把握すべく身につけていた通信機で冰の活躍を聞いていた紫月からも労いと絶賛の言葉が投げ掛けられる。
「冰君! 今回もまたすげえ巧みな演技だったな! 俺なんか遼の介抱しなきゃなんねえのに、そっちの部屋の様子が気になって仕方なくってさ! てめえの亭主そっちのけで動向に聞き入っちゃってたぜ!」
紫月がバツの悪そうに苦笑しながら頭を掻いてみせると、周囲からはドッと朗らかな笑いが湧き起こった。
「黒龍……ッ! ああ、良かった! 無事だったのね!」
美紅が跳ねるようにして風へと抱きついてくる。その華奢な身体を受け止めると、風もまた愛しい妻を懐の中へと抱き締めた。
「血……ッ!? 怪我をしてるの黒龍!」
派手に飛び散った血糊に驚く妻を抱き締めたままで風が笑う。
「心配するな。これはガセの血糊だ」
「血糊? まあ、そうなの!」
美紅がホッとしたように胸を撫で下ろしている。
「それよりお前、一人でここに乗り込んで来たのか?」
風が怪訝そうな顔で訊くと、今度は美紅が笑いながら言った。
「いいえ、お父様も一緒よ! いま、階下のロビーにいらっしゃるわ」
「親父が……! そうか!」
「ええ、そう。あなたたちが戻って来ないと連絡を受けて、すぐにお父様がマカオへ乗り込んで陣頭指揮を取ってくださったのよ! アタシは家で待っているように言われてたんだけれど、とてもじゃないけどじっとしてなんかいられなくて……! お母様と一緒にお父様たちの後を追い掛けて来たの」
「そうだったのか。親父が……」
だが、父の隼が来ていることは周兄弟にも分かってはいた。冰の指に輝く琥珀の指輪を目にした時点で、それが父から託されたものと理解していたからだ。
「お前にも皆にも心配をかけてすまない」
風は再び妻を懐の中へ抱き締めると、誰に憚らずといった調子で彼女に口づけた。深い深い安堵と愛情を込めたキスだった。
そんな二人の様子を微笑ましげに見つめながら周と冰が部屋の中から姿を現すと、美紅は彼らの無事を喜んで冰へと抱きついた。
「白龍、冰! あなたたちも無事で良かった! 冰のお陰で黒龍も無事だったわ!」
「お姉様……!」
「本当によく頑張ってくれたわね! アタシがお父様の元へ到着した時には、既にあなたがこのホテルに潜入した後だったんだけれど、集音器であなたの活躍をずっと聞いてたのよ! 本当にありがとう! 怖かったでしょうに……!」
敵を欺き、身を呈して乗り込んでいった冰に心からの感謝を伝えながら、美紅は大切な義弟を抱き締めた。
すると、真向かいの部屋の扉が開かれ、中からは紫月に肩を借りた鐘崎が姿を現した。催淫剤に侵された欲をとりあえず解放したものの、未だおぼつかない足取りで紫月に支えられながら出てきたのである。
「カネ! 一之宮! お前らも無事で良かった!」
周が冰の腕を掴んだまま真っ先に駆け寄って労いの言葉を口にする。鐘崎も友の無事な姿を確認できて、ホッとしたように安堵の表情を浮かべていた。そして、互いの行動を把握すべく身につけていた通信機で冰の活躍を聞いていた紫月からも労いと絶賛の言葉が投げ掛けられる。
「冰君! 今回もまたすげえ巧みな演技だったな! 俺なんか遼の介抱しなきゃなんねえのに、そっちの部屋の様子が気になって仕方なくってさ! てめえの亭主そっちのけで動向に聞き入っちゃってたぜ!」
紫月がバツの悪そうに苦笑しながら頭を掻いてみせると、周囲からはドッと朗らかな笑いが湧き起こった。
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