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極道の姐
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「まあそう焦るな。とにかく様子を見よう」
何故か僚一は落ち着いていて、この場にそぐわず楽しげだ。サリーがドキマギとしていると、下からは冰の声が聞こえてきた。
「よう、周焔。久しぶりだな? よもや俺の顔を忘れたとは言わせねえぜ」
薄ら笑いと共にふてぶてしい台詞を浴びせ掛けた冰に、サリーはもちろんのこと当の周も驚きに目を見張る様子が見て取れた。
だが、それも束の間、周の方からもそれに応えるような不敵な暴言が飛び出したのに、天井裏のサリーにとってはもっと驚かされることと相成った。
「……ちッ、冰か。まさか……てめえまで出てきやがるとはな。――とんだ災難続きだぜ」
すると、冰も更に輪を掛けたように下卑た台詞で受けて立つ。
「相変わらず腹の立つ言い方しかしねえ野郎だな! 散々っぱらコソコソ逃げ回ってくれやがったが、それも今日で終わりだ。よくも俺を騙して金を持ち逃げしてくれたな。今日という今日はぜってえ逃さねえから覚悟しやがれ!」
「……は、何のことだか分からんな」
周の方は空っとぼけた返事ながらも、その表情には笑みを浮かべている。天井にいるサリーは、まるでワケが分からないと困惑状態で僚一の腕を掴んでいた。
「ちょっと……いったいどうなってんの? あの人、周焔を助けに来たんじゃないの? あれじゃまるで敵同士じゃないの!」
だが、僚一も周同様えらく落ち着きながら薄ら笑いすら浮かべている。
「まあ見ていろ」
「見てろって……あなたねえ!」
サリーはハラハラとしながらも階下の様子に釘付けになっていた。すると、今度は唐静雨が横から口を挟むのが分かった。
「焔、あなたってホントに酷い男ね! この人のことまで裏切ってたなんて! この人がアタシの為に稼ぎ出してくれた例のお金まで盗んだっていうじゃない!」
「……は、てめえら、いつからお仲間になったってんだ? お前がこいつを庇うなんざまるで天変地異だな」
「……まあ! 何て言い草かしら! 本っ当に最低ッ! 見損なったわ!」
静雨がムキになってそう口走ったお陰で、周の方でも大まかな経緯が見えてきたようだ。まあ、最初に冰が姿を現した時のふてぶてしい台詞と堂々たる素振りで、既にこれが救出の作戦であるということを瞬時に読み取っていたのは確かである。彼がここに乗り込んできたということは、李や源次郎らもがっちりと脇を固めているはずである。そう気がついた時点で、冰に合わせるべく周も次の展開への想像を巡らせていく。なるべく冰に先にしゃべらせて、どういった作戦なのかを探りながらも、周はその過程を楽しんでいるようだった。
冰もまた、周が乗ってくれたことに安堵しながら、次の策へと移っていく。持参してきたマグナムを懐から出すと、これみよがしにそれをチラつかせながらゆっくりと互いの距離を詰めていった。
何故か僚一は落ち着いていて、この場にそぐわず楽しげだ。サリーがドキマギとしていると、下からは冰の声が聞こえてきた。
「よう、周焔。久しぶりだな? よもや俺の顔を忘れたとは言わせねえぜ」
薄ら笑いと共にふてぶてしい台詞を浴びせ掛けた冰に、サリーはもちろんのこと当の周も驚きに目を見張る様子が見て取れた。
だが、それも束の間、周の方からもそれに応えるような不敵な暴言が飛び出したのに、天井裏のサリーにとってはもっと驚かされることと相成った。
「……ちッ、冰か。まさか……てめえまで出てきやがるとはな。――とんだ災難続きだぜ」
すると、冰も更に輪を掛けたように下卑た台詞で受けて立つ。
「相変わらず腹の立つ言い方しかしねえ野郎だな! 散々っぱらコソコソ逃げ回ってくれやがったが、それも今日で終わりだ。よくも俺を騙して金を持ち逃げしてくれたな。今日という今日はぜってえ逃さねえから覚悟しやがれ!」
「……は、何のことだか分からんな」
周の方は空っとぼけた返事ながらも、その表情には笑みを浮かべている。天井にいるサリーは、まるでワケが分からないと困惑状態で僚一の腕を掴んでいた。
「ちょっと……いったいどうなってんの? あの人、周焔を助けに来たんじゃないの? あれじゃまるで敵同士じゃないの!」
だが、僚一も周同様えらく落ち着きながら薄ら笑いすら浮かべている。
「まあ見ていろ」
「見てろって……あなたねえ!」
サリーはハラハラとしながらも階下の様子に釘付けになっていた。すると、今度は唐静雨が横から口を挟むのが分かった。
「焔、あなたってホントに酷い男ね! この人のことまで裏切ってたなんて! この人がアタシの為に稼ぎ出してくれた例のお金まで盗んだっていうじゃない!」
「……は、てめえら、いつからお仲間になったってんだ? お前がこいつを庇うなんざまるで天変地異だな」
「……まあ! 何て言い草かしら! 本っ当に最低ッ! 見損なったわ!」
静雨がムキになってそう口走ったお陰で、周の方でも大まかな経緯が見えてきたようだ。まあ、最初に冰が姿を現した時のふてぶてしい台詞と堂々たる素振りで、既にこれが救出の作戦であるということを瞬時に読み取っていたのは確かである。彼がここに乗り込んできたということは、李や源次郎らもがっちりと脇を固めているはずである。そう気がついた時点で、冰に合わせるべく周も次の展開への想像を巡らせていく。なるべく冰に先にしゃべらせて、どういった作戦なのかを探りながらも、周はその過程を楽しんでいるようだった。
冰もまた、周が乗ってくれたことに安堵しながら、次の策へと移っていく。持参してきたマグナムを懐から出すと、これみよがしにそれをチラつかせながらゆっくりと互いの距離を詰めていった。
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