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極道の姐
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(おい、張……。奴さん、いったい何者なんだ? さっきまでの従順そうな若者とはまるで別人じゃねえか。ホントはめちゃくちゃヤバい野郎なんじゃねえのか?)
ボスの男がヒソヒソと張に耳打ちする。
(はは……確かに。ある意味、雪吹君はヤバいヤツだと言えるだろうな)
張自身、冰の演技にはまんまと騙された経験者である。彼の風貌からは想像もできない大胆な演技を苦もなくサラリと演りきってしまうあたりは、確かに”ヤバい”と例えざるを得ない。
張としてもずっと以前から冰を知っているというわけではないが、これまで付き合ってきた限りでは、大層頭がキレて、尚且つ性質は穏やかでやさしい青年だという印象しかないわけだ。だが、今の彼の様子を見ていると、どこまでが本当の彼でどこからが演技なのかが分からなくなりそうな気にさせられてしまう。ただひとつ言えることは、張も絶大な信頼をおく香港マフィア頭領の周隼が実の息子同様と言い切ったほどである。おそらく本当の冰は張が思っているままの穏やかで人のいい青年なのだろう。それを証拠に言葉使いひとつをとっても張の知っている彼とは別人であることから、明らかに今の状態は演技なのだろう。愛する周焔を助ける為とはいえ、本来の自分とは真逆の悪人面になりきっているのである。まさに命がけの大勝負といえる。
(さっき雪吹君自身も言っていただろう? 俺たちに対しても高飛車な態度を取ってしまうがすまないと)
(ああ、確かにな。こんなことを言っちゃ悪いが、俺としてはあんな気の弱そうな若い男にロンたちを騙すことができるのかって心配だったんだが、余計な節介だったようだな。いや、驚いた……! 実に大したもんだ)
ボスの男がしきじきと関心しまくっている。
(驚くのはまだ早い。雪吹君のことだ。これからもっと俺たちを仰天させるような手腕を披露してくれるかも知れんぞ)
男の身でマフィアのファミリーに嫁ぎ、亭主を支える姐の覚悟がひしひしと伝わってくるようだ。華奢な肢体を存分に大きく見せるように振る舞って、精一杯自分を奮い立たせているのだろう。張は大勝負に挑む冰の姿を目の当たりにしながら、あっぱれとも哀れともつかない言いようのない気持ちがこみ上げてならなかった。
(まあ、滅多にない機会だ。おおよそお目に掛かれない周一族の姐さんの手腕をお前さんもよく目に焼き付けておくといい)
そう言って苦笑しながらも、内心で冰の底知れぬオーラにゾクゾクと背筋を伝う例えようのない感嘆の思いが湧き上がるのを感じたのだった。
側ではいよいよ冰が周との対面を果たすべく追い討ちに掛かっていく。
「じゃ、そろそろ周焔のツラを拝ませてもらおうか。言っておくが、ただ殺っちまうなんて甘っちょろいことはしねえからな! まずはあの野郎が巻き上げてくれた俺の金を返してもらうのが何より先だ。それまであんたらはぜってえ手出すなよ?」
大金を盾にしながら、周本人の身の安全を確実に約束させるあたりは実に巧妙といえる。案の定、ロンも素直に聞き入れるそぶりを見せている。
ボスの男がヒソヒソと張に耳打ちする。
(はは……確かに。ある意味、雪吹君はヤバいヤツだと言えるだろうな)
張自身、冰の演技にはまんまと騙された経験者である。彼の風貌からは想像もできない大胆な演技を苦もなくサラリと演りきってしまうあたりは、確かに”ヤバい”と例えざるを得ない。
張としてもずっと以前から冰を知っているというわけではないが、これまで付き合ってきた限りでは、大層頭がキレて、尚且つ性質は穏やかでやさしい青年だという印象しかないわけだ。だが、今の彼の様子を見ていると、どこまでが本当の彼でどこからが演技なのかが分からなくなりそうな気にさせられてしまう。ただひとつ言えることは、張も絶大な信頼をおく香港マフィア頭領の周隼が実の息子同様と言い切ったほどである。おそらく本当の冰は張が思っているままの穏やかで人のいい青年なのだろう。それを証拠に言葉使いひとつをとっても張の知っている彼とは別人であることから、明らかに今の状態は演技なのだろう。愛する周焔を助ける為とはいえ、本来の自分とは真逆の悪人面になりきっているのである。まさに命がけの大勝負といえる。
(さっき雪吹君自身も言っていただろう? 俺たちに対しても高飛車な態度を取ってしまうがすまないと)
(ああ、確かにな。こんなことを言っちゃ悪いが、俺としてはあんな気の弱そうな若い男にロンたちを騙すことができるのかって心配だったんだが、余計な節介だったようだな。いや、驚いた……! 実に大したもんだ)
ボスの男がしきじきと関心しまくっている。
(驚くのはまだ早い。雪吹君のことだ。これからもっと俺たちを仰天させるような手腕を披露してくれるかも知れんぞ)
男の身でマフィアのファミリーに嫁ぎ、亭主を支える姐の覚悟がひしひしと伝わってくるようだ。華奢な肢体を存分に大きく見せるように振る舞って、精一杯自分を奮い立たせているのだろう。張は大勝負に挑む冰の姿を目の当たりにしながら、あっぱれとも哀れともつかない言いようのない気持ちがこみ上げてならなかった。
(まあ、滅多にない機会だ。おおよそお目に掛かれない周一族の姐さんの手腕をお前さんもよく目に焼き付けておくといい)
そう言って苦笑しながらも、内心で冰の底知れぬオーラにゾクゾクと背筋を伝う例えようのない感嘆の思いが湧き上がるのを感じたのだった。
側ではいよいよ冰が周との対面を果たすべく追い討ちに掛かっていく。
「じゃ、そろそろ周焔のツラを拝ませてもらおうか。言っておくが、ただ殺っちまうなんて甘っちょろいことはしねえからな! まずはあの野郎が巻き上げてくれた俺の金を返してもらうのが何より先だ。それまであんたらはぜってえ手出すなよ?」
大金を盾にしながら、周本人の身の安全を確実に約束させるあたりは実に巧妙といえる。案の定、ロンも素直に聞き入れるそぶりを見せている。
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