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極道の姐
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「弾は実弾と違って血糊が噴き出すように細工されている。なるべくならば敵の目の前で弾丸を見せないようにした方が賢明だ」
「承知しました」
隼が一通り仕様を確認した後、銃が冰へと手渡される。
「では早速出向くとしよう。もしも中の様子に動きがあったらすぐに通信機で知らせてくれ」
僚一を先頭にして一同はロンらのいるホテル跡地へと向かったのだった。
◇ ◇ ◇
まずは正面玄関からボスの男がロンを呼び出す。その間に僚一と紫月は密かに裏手へと回り、予定通り屋上から潜入することとなった。
「皆さん、演技とはいえ、これから先は皆さんに対しても高飛車な態度をとってしまいますが、どうかお許しくださいね」
律儀にも冰がそんなことを言うので、張もボスの男も微笑ましげにして彼を見つめる。
「兄さん、お若いのに感心なことだな。あんたはマフィアのお偉いさんなんだからな。遠慮なく堂々としててくれ。俺たちを顎で使うくらいの気持ちで構わんぞ」
ボスの男はそう言って笑ったが、内心ではこんなに人の好さそうな青年にロンらを騙す演技ができるのかと心配させられてしまうほどだった。もしも見破られそうになったら手助けをしてやらなければと思っていたのだが、ホテルの玄関が近付くにつれて冰の顔付きも発するオーラもみるみると変わっていく様子に驚かされることとなる。門を叩く頃には、すっかりふてぶてしく変わった冰の雰囲気に唖然とさせられたほどだった。
そうしてボスの男がロンに渡りをつけると、ほどなくして唐静雨も姿を現した。いよいよここからが冰の勝負どころである。片手をポケットへと突っ込んだ不敵な態度で冰は唐静雨の前に立った。
「唐静雨さん、久しぶりだな。俺を覚えているか?」
ふてぶてしい薄ら笑いと共にそう言うと、彼女の方は驚いたように冰を見つめた。むろんのこと、唐静雨にとっては忘れるわけもない憎きライバルの顔だ。何故こんなところに彼がいるのかと、相当に驚いた様子だった。
「あなた……焔の……! まさか……」
もう企てがバレて、冰が側近たちを伴って助けにやって来たのかと思ったようだった。
そこですかさずボスの男がロンと静雨に冰を紹介する。
「この御方はマカオを仕切るマフィアの幹部であられる。お若いが、組織の中でも重鎮だ。此度この御方がお前さんらに加勢したいとおっしゃるんでお連れした」
「マカオのマフィアですって? 何の冗談かしら? あなた、焔とは祝言を挙げたんじゃなくて?」
静雨が警戒心をあらわにしながら棘のある言葉を浴びせ掛ける。冰は薄く苦笑しながら、普段からは想像もつかないような下卑た台詞で受けて立った。
「承知しました」
隼が一通り仕様を確認した後、銃が冰へと手渡される。
「では早速出向くとしよう。もしも中の様子に動きがあったらすぐに通信機で知らせてくれ」
僚一を先頭にして一同はロンらのいるホテル跡地へと向かったのだった。
◇ ◇ ◇
まずは正面玄関からボスの男がロンを呼び出す。その間に僚一と紫月は密かに裏手へと回り、予定通り屋上から潜入することとなった。
「皆さん、演技とはいえ、これから先は皆さんに対しても高飛車な態度をとってしまいますが、どうかお許しくださいね」
律儀にも冰がそんなことを言うので、張もボスの男も微笑ましげにして彼を見つめる。
「兄さん、お若いのに感心なことだな。あんたはマフィアのお偉いさんなんだからな。遠慮なく堂々としててくれ。俺たちを顎で使うくらいの気持ちで構わんぞ」
ボスの男はそう言って笑ったが、内心ではこんなに人の好さそうな青年にロンらを騙す演技ができるのかと心配させられてしまうほどだった。もしも見破られそうになったら手助けをしてやらなければと思っていたのだが、ホテルの玄関が近付くにつれて冰の顔付きも発するオーラもみるみると変わっていく様子に驚かされることとなる。門を叩く頃には、すっかりふてぶてしく変わった冰の雰囲気に唖然とさせられたほどだった。
そうしてボスの男がロンに渡りをつけると、ほどなくして唐静雨も姿を現した。いよいよここからが冰の勝負どころである。片手をポケットへと突っ込んだ不敵な態度で冰は唐静雨の前に立った。
「唐静雨さん、久しぶりだな。俺を覚えているか?」
ふてぶてしい薄ら笑いと共にそう言うと、彼女の方は驚いたように冰を見つめた。むろんのこと、唐静雨にとっては忘れるわけもない憎きライバルの顔だ。何故こんなところに彼がいるのかと、相当に驚いた様子だった。
「あなた……焔の……! まさか……」
もう企てがバレて、冰が側近たちを伴って助けにやって来たのかと思ったようだった。
そこですかさずボスの男がロンと静雨に冰を紹介する。
「この御方はマカオを仕切るマフィアの幹部であられる。お若いが、組織の中でも重鎮だ。此度この御方がお前さんらに加勢したいとおっしゃるんでお連れした」
「マカオのマフィアですって? 何の冗談かしら? あなた、焔とは祝言を挙げたんじゃなくて?」
静雨が警戒心をあらわにしながら棘のある言葉を浴びせ掛ける。冰は薄く苦笑しながら、普段からは想像もつかないような下卑た台詞で受けて立った。
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