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極道の姐
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親父さんというのは、言わずもがな鐘崎の父親である僚一のことだ。その彼の同級生だった田端君江という女性が銀座のクラブでオーナーママとして切り盛りしているというので、鐘崎組としてもそういった場所での接待が必要な時には彼女の店を贔屓にしているわけだった。クライアントによっては単に料亭などでの打ち合わせの後に、そうした店でのひと時を好むタイプもいるからである。
基本的には必要以外過分な接待などの付き合いはしない方向の鐘崎組ではあるが、中にはどうしても外せない客人の場合もあるわけだ。そんな時は馴染みである君江ママの店を使わせてもらうのが定番となっていた。
「で、その君江ママの店がどうかしたってか?」
「いや。問題はママじゃなく、サリーというホステスの方だ」
そう言うと共に重めの溜め息をついた清水に、橘は不思議そうに首を傾げてしまった。
「実はそのホステスが近々ジュエラを辞めて独立するんだそうだ」
「独立っていうと、ついには店を構えるってか?」
「そうらしい。しかも雇われママじゃなく、オーナーママとしてだそうだ。それで……開店に伴い我々鐘崎組に後見になってくれないかと打診を受けてな」
「後見……だぁ? それって君江ママからもそうして欲しいっていうことなのか?」
「分からん。ただ、今回のクライアントもずっとサリーという女を係にしていたらしく、彼女が店を開くなら何らかの形で助力したいと、そんなところなんだろう」
銀座のクラブでは、客をもてなすホステスはいつも同じ女性というのが慣わしで、係と呼ばれている。つまり、一人の客に対して毎回違うホステスが付くのではなく、一度この女性と決めたら、よほどの理由がない限りそのホステスと長い付き合いを続けていくということになるのである。当然売り上げにも貢献し、誕生月などのイベントや普段店内で着る装いなどにも助力するのが付き合いの一環でもある。
今夜清水が会った依頼人も、そのサリーというホステスとそうした付き合いを続けてきたわけなのだろう。話によると、鐘崎組に後見を頼みたいと言ったのはサリーの希望らしく、たまたま依頼を通して組とツテができたクライアントが、それならばと間を取り持つ役を引き受けたとのことだった。
「けど、何だってそのサリーって女はウチの組を後見にしたいなんて言い出したんだ? 親父さんや若頭の特別な知り合いってわけでもねえんだろ?」
橘の問いに清水はクイと眉をしかめてみせた。
基本的には必要以外過分な接待などの付き合いはしない方向の鐘崎組ではあるが、中にはどうしても外せない客人の場合もあるわけだ。そんな時は馴染みである君江ママの店を使わせてもらうのが定番となっていた。
「で、その君江ママの店がどうかしたってか?」
「いや。問題はママじゃなく、サリーというホステスの方だ」
そう言うと共に重めの溜め息をついた清水に、橘は不思議そうに首を傾げてしまった。
「実はそのホステスが近々ジュエラを辞めて独立するんだそうだ」
「独立っていうと、ついには店を構えるってか?」
「そうらしい。しかも雇われママじゃなく、オーナーママとしてだそうだ。それで……開店に伴い我々鐘崎組に後見になってくれないかと打診を受けてな」
「後見……だぁ? それって君江ママからもそうして欲しいっていうことなのか?」
「分からん。ただ、今回のクライアントもずっとサリーという女を係にしていたらしく、彼女が店を開くなら何らかの形で助力したいと、そんなところなんだろう」
銀座のクラブでは、客をもてなすホステスはいつも同じ女性というのが慣わしで、係と呼ばれている。つまり、一人の客に対して毎回違うホステスが付くのではなく、一度この女性と決めたら、よほどの理由がない限りそのホステスと長い付き合いを続けていくということになるのである。当然売り上げにも貢献し、誕生月などのイベントや普段店内で着る装いなどにも助力するのが付き合いの一環でもある。
今夜清水が会った依頼人も、そのサリーというホステスとそうした付き合いを続けてきたわけなのだろう。話によると、鐘崎組に後見を頼みたいと言ったのはサリーの希望らしく、たまたま依頼を通して組とツテができたクライアントが、それならばと間を取り持つ役を引き受けたとのことだった。
「けど、何だってそのサリーって女はウチの組を後見にしたいなんて言い出したんだ? 親父さんや若頭の特別な知り合いってわけでもねえんだろ?」
橘の問いに清水はクイと眉をしかめてみせた。
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