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厄介な依頼人
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地域住民たちは鐘崎と紫月が伴侶として生きていることを知っている。二人が子供の時分から仲睦まじくしていた経緯も見てきているし、彼らの気のいい性質もよくよく分かっているので、男同士で夫婦になると知った時も自治会を上げて応援祝福してくれたほどである。そんな鐘崎と紫月のことだ、どちらかが浮気をするなどとは思ってもいないわけだ。特に紫月の方は人懐こく、老人たちにとっては本当の孫のような存在でもある。それ故、繭という女の恋人を横恋慕したなどという話を信じられるはずもないというところなのだ。
男たちはますます怪訝そうに首を傾げると、今度は繭に向かって文句を言い始めた。
「ねえ彼女ー、いったいどうなってんだよ? アンタの男をこのイケメンが寝取ったんじゃねえの?」
「このじいさんたちの言ってることとえらく食い違うじゃん!」
「なあ、どうなんだって!」
男たちに問い詰められて恐怖を感じたのか、繭の方は言い訳さえもままならない様子でいる。一触即発の空気を見兼ねてか、紫月が宥めるように話に割って入った。
「まあ、待て待て。お嬢さんの目的は俺だろ? 俺ら、会うのは今日が初めてだけど遼からいろいろと話は聞いてるよ。じいちゃんやこの若い兄ちゃんたちを巻き込んだのはいただけねえけどさ。この際だからアンタの思ってることを全部俺に聞かせてくれよ」
繭にとっても本来一番望んでいたことだ。紫月と直接会うのは確かに今日が初めてではあるが、ずっと気に掛かってきた相手である。このまま黙っていても『話が違う』と、ゴロつきたちにも迫られる一方だし、気が短そうな彼らが苛立って暴力に出ないとも限らない。ここはもう思い切ってすべてをぶち撒けるしかない。繭はそう思ったようだった。
「アタシは……アタシは遼二さんのことが本当に好きなの! 彼にちゃんとした奥様がいるなら諦められたわ。でも、相手が男のあなただなんて……納得できないのよ……!」
「うん」
紫月はとにかく彼女の思うがままに全部吐き出させてしまおうと、何を言われても怒ったりせずに、穏やかにうなずきながら話の続きを待った。
「今は良くても将来的に見れば遼二さんだってちゃんとした奥様が必要だと思うわ。後継ぎだって欲しいだろうし、でもあなたじゃ無理でしょ? だから彼と別れて欲しい。あなたから別れるって言って欲しい。彼だってあなたがいなくなれば、落ち着いて現実を見られるはずよ。アタシがこんなに彼のことを想っているんだもの、遼二さんだって……きっと振り向いてくれると思うわ」
まさに言いたい放題である。春日野などは頭に血が昇ってしまいそうだったが、当の紫月には意外にも腹を立てたり傷付いたりといった様子は見受けられず、ここで自分が姐さんを差し置いて逆上してはいけないと必死に堪えるのだった。
男たちはますます怪訝そうに首を傾げると、今度は繭に向かって文句を言い始めた。
「ねえ彼女ー、いったいどうなってんだよ? アンタの男をこのイケメンが寝取ったんじゃねえの?」
「このじいさんたちの言ってることとえらく食い違うじゃん!」
「なあ、どうなんだって!」
男たちに問い詰められて恐怖を感じたのか、繭の方は言い訳さえもままならない様子でいる。一触即発の空気を見兼ねてか、紫月が宥めるように話に割って入った。
「まあ、待て待て。お嬢さんの目的は俺だろ? 俺ら、会うのは今日が初めてだけど遼からいろいろと話は聞いてるよ。じいちゃんやこの若い兄ちゃんたちを巻き込んだのはいただけねえけどさ。この際だからアンタの思ってることを全部俺に聞かせてくれよ」
繭にとっても本来一番望んでいたことだ。紫月と直接会うのは確かに今日が初めてではあるが、ずっと気に掛かってきた相手である。このまま黙っていても『話が違う』と、ゴロつきたちにも迫られる一方だし、気が短そうな彼らが苛立って暴力に出ないとも限らない。ここはもう思い切ってすべてをぶち撒けるしかない。繭はそう思ったようだった。
「アタシは……アタシは遼二さんのことが本当に好きなの! 彼にちゃんとした奥様がいるなら諦められたわ。でも、相手が男のあなただなんて……納得できないのよ……!」
「うん」
紫月はとにかく彼女の思うがままに全部吐き出させてしまおうと、何を言われても怒ったりせずに、穏やかにうなずきながら話の続きを待った。
「今は良くても将来的に見れば遼二さんだってちゃんとした奥様が必要だと思うわ。後継ぎだって欲しいだろうし、でもあなたじゃ無理でしょ? だから彼と別れて欲しい。あなたから別れるって言って欲しい。彼だってあなたがいなくなれば、落ち着いて現実を見られるはずよ。アタシがこんなに彼のことを想っているんだもの、遼二さんだって……きっと振り向いてくれると思うわ」
まさに言いたい放題である。春日野などは頭に血が昇ってしまいそうだったが、当の紫月には意外にも腹を立てたり傷付いたりといった様子は見受けられず、ここで自分が姐さんを差し置いて逆上してはいけないと必死に堪えるのだった。
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