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恋敵
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「お前、不安には思わなかったのか? いきなり現れた見ず知らずの女に元恋人だなんて吹かれたんだ。驚いたろうに」
口づけから解放すると同時に長い指先で髪を漉きながら周が問う。すると、冰は意外にも穏やかにはにかみながらこう答えた。
「うん、最初聞いた時はビックリしたけど、でも白龍みたいにカッコいい人だもん。付き合ってた女性がいたっておかしくないし、当然かなって。ただ、今もまだ諦められないでいるみたいだったからさ。それについてはどうしようってちょっと思ったけど……。でも案外平気でいられたのは紫月さんのお陰なんだ」
冰にとって紫月は、周と自分の仲を一等よく知る人物であり、それと同時に周が二股を掛けるような男でないことを信じ切ってくれている周の長年の親友だ。そんな彼が傍に居てくれることは何より心強く、励みに思えていたのだ。
「何て言ったらいいんだろう。あの時は紫月さんが白龍のように思えてさ。不思議な安心感をもらえたっていうか……紫月さんを通して白龍と鐘崎さんもすぐ側で見守ってくれているような感じがしたっていうか……。とにかく自分でもビックリするくらい冷静でいられたんだよね。それに、あの女の人が何を言っても、その都度紫月さんが受け止めてくれてさ。まるで盾になるみたいに守ってくれたっていうのかな。俺はすっかりお任せしきりだったけど、すごく助かったんだよ。一人だったら心臓バクバクしちゃってパニくってたかも」
えへへと苦笑ながらもそんなことを言った冰を、背中から包み込むように抱き締めた。
「例え誰が好意を持ってこようが、俺にはお前だけだ。未来永劫、俺が愛するのはお前ただ一人だと誓う。それだけは忘れてくれるなよ?」
「白龍、うん……俺もね、なんていうか無意識にだけどそう思ってたんだなって、今になって気付いたんだ。静雨さんが今でも白龍を好きだとしても、会えば白龍が何とかしてくれるだろうって。不思議なんだけどさ、白龍のことを好きだと言われても不安には思わなかったっていうか、自分でもびっくりするくらい落ち着いていられたんだよ」
「つまり――信じてくれてたってことだな?」
「あー、そっか! そうなんだね、きっと」
「俺がお前を裏切るようなことはしねえと信じられたから落ち着いていられた――そうだな?」
「うん」
「それでいい。俺たちは――例えどんな横槍が入ろうと、互いを信じ合える本物の伴侶という証だ。俺は恋人として、そして生涯の伴侶としてお前だけを愛すると誓う。何があってもこれだけは揺るがねえからな」
「ん……うん! 俺も白龍だけを……んと、その……あ、愛……」
頬どころか耳まで朱に染めながら『愛している』という言葉を恥ずかしそうに口ごもって言えずにいる様子がたまらなく愛おしかった。周はそのまま華奢な身体を軽々と姫抱きすると、待ちきれないというように真っ直ぐベッドへと向かった。
やさしく丁寧に服をくつろげながら、
「周冰――」
色香のある声でポツリとそうつぶやかれたのに、冰は不思議そうに瞳を見開いた。
「……え?」
「お前の名だ。明日、香港へ帰ったらすぐにでも籍を入れたい」
「白龍……?」
「本当は披露目の宴と共にそうする予定だったが、とてもじゃねえが待っていられない気分だ。俺とお前が伴侶だという明らかな形の為にも一刻も早く同じ性を名乗りたい」
「白龍……」
「これは俺の我が侭だが――お前が嫌でなければ是非ともそうして欲しい」
「嫌だなんて! そんなことあるわけない……!」
口づけから解放すると同時に長い指先で髪を漉きながら周が問う。すると、冰は意外にも穏やかにはにかみながらこう答えた。
「うん、最初聞いた時はビックリしたけど、でも白龍みたいにカッコいい人だもん。付き合ってた女性がいたっておかしくないし、当然かなって。ただ、今もまだ諦められないでいるみたいだったからさ。それについてはどうしようってちょっと思ったけど……。でも案外平気でいられたのは紫月さんのお陰なんだ」
冰にとって紫月は、周と自分の仲を一等よく知る人物であり、それと同時に周が二股を掛けるような男でないことを信じ切ってくれている周の長年の親友だ。そんな彼が傍に居てくれることは何より心強く、励みに思えていたのだ。
「何て言ったらいいんだろう。あの時は紫月さんが白龍のように思えてさ。不思議な安心感をもらえたっていうか……紫月さんを通して白龍と鐘崎さんもすぐ側で見守ってくれているような感じがしたっていうか……。とにかく自分でもビックリするくらい冷静でいられたんだよね。それに、あの女の人が何を言っても、その都度紫月さんが受け止めてくれてさ。まるで盾になるみたいに守ってくれたっていうのかな。俺はすっかりお任せしきりだったけど、すごく助かったんだよ。一人だったら心臓バクバクしちゃってパニくってたかも」
えへへと苦笑ながらもそんなことを言った冰を、背中から包み込むように抱き締めた。
「例え誰が好意を持ってこようが、俺にはお前だけだ。未来永劫、俺が愛するのはお前ただ一人だと誓う。それだけは忘れてくれるなよ?」
「白龍、うん……俺もね、なんていうか無意識にだけどそう思ってたんだなって、今になって気付いたんだ。静雨さんが今でも白龍を好きだとしても、会えば白龍が何とかしてくれるだろうって。不思議なんだけどさ、白龍のことを好きだと言われても不安には思わなかったっていうか、自分でもびっくりするくらい落ち着いていられたんだよ」
「つまり――信じてくれてたってことだな?」
「あー、そっか! そうなんだね、きっと」
「俺がお前を裏切るようなことはしねえと信じられたから落ち着いていられた――そうだな?」
「うん」
「それでいい。俺たちは――例えどんな横槍が入ろうと、互いを信じ合える本物の伴侶という証だ。俺は恋人として、そして生涯の伴侶としてお前だけを愛すると誓う。何があってもこれだけは揺るがねえからな」
「ん……うん! 俺も白龍だけを……んと、その……あ、愛……」
頬どころか耳まで朱に染めながら『愛している』という言葉を恥ずかしそうに口ごもって言えずにいる様子がたまらなく愛おしかった。周はそのまま華奢な身体を軽々と姫抱きすると、待ちきれないというように真っ直ぐベッドへと向かった。
やさしく丁寧に服をくつろげながら、
「周冰――」
色香のある声でポツリとそうつぶやかれたのに、冰は不思議そうに瞳を見開いた。
「……え?」
「お前の名だ。明日、香港へ帰ったらすぐにでも籍を入れたい」
「白龍……?」
「本当は披露目の宴と共にそうする予定だったが、とてもじゃねえが待っていられない気分だ。俺とお前が伴侶だという明らかな形の為にも一刻も早く同じ性を名乗りたい」
「白龍……」
「これは俺の我が侭だが――お前が嫌でなければ是非ともそうして欲しい」
「嫌だなんて! そんなことあるわけない……!」
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