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恋敵
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それでも念には念を入れて面が割れないようにと、倫周は長い白髭のセットを持ち出してきて、真田にもメイクを施していく。まさに爺やの出来上がりである。
「真田さん、俺はかなり我が侭な言動で相手のディーラーさんを揺さぶろうと思っています。真田さんに対しても爺や扱いで高飛車な態度をとってしまいますが、びっくりしないでくださいね」
「かしこまりました。私も大役をお任せいただくことができてワクワクしておりますよ! 冰さんの演技にがんばってついていきたいと思いますので、よろしくお願い致します」
言葉通りに期待満々の様子の真田を囲んで明るい笑い声に包まれる。誰もが共にこうしていられる幸せを噛み締めるかのように和やかなひと時となった。
こうして皆が一丸となってカジノのオープンに備えたのだった。
そして、いよいよオープンの時刻がやってきた。
目的のカジノでは張と理事会の重鎮方が待ち受けており、まずはどのテーブルで勝負をかけるかの目星をつけていく。
その間、カジノでの賭け事にも比較的精通している鐘崎は、紫月と共にダイスゲームやカードゲームに参加し、少しでも勝ちを得ることに協力することとなった。それと共にイカサマが行われていないかということにも目を配る。
こうして少しずつ様々な箇所を観察して回った後、一番潰し易いと思えるルーレットのテーブルで今宵大一番の計画を実行に移すことと相成った。
我が侭お嬢様に扮した冰が真田を伴ってルーレットへと近づいていく。いよいよ二人の演技の始まりである。
「爺や、爺や! これよ、これ! アタクシ、一度やってみたかったのよ、ルーレット!」
我が侭お嬢様に扮した冰が嬉々とはしゃぎながらテーブルにつく。最初の数回は、わざと負け越して相手の出方を見極めるのが目的である。したがって、多くもないがそこそこには大金といった金額で賭けに参加することにした。
冰は意気揚々とした素人ぶりで、お付きの真田は少々ハラハラとしながら成り行きを見守っているという演出を強調してみせる。ディーラーにしてみれば、いいカモが迷い込んできたという印象を持ったようだった。
賭けは客の方が最初という方式なので、他の参加者に混じって適当な位置を指定する。
すべての賭けが出揃ったところで、ディーラーがニッと口角を上げたのを見逃す冰ではなかった。
ホイールが回されボールが止まると、結果は見事に客の全員が惨敗という形で勝敗がついた。
「ああーん、やっぱりそんなに上手くはいかないわねぇ……。何だか悔しいわ!」
冰はあからさまに残念がって、二度目の勝負にはもう少しだけ大きな金額を賭けることにする。他の客も同様で、今の分を取り戻さんと再び結構な金額が賭けられていった。
「いいわ、次こそ……!」
冰は期待顔で勝負を見つめる。だが、二度目もあっさりと客側がスられる形で終わった。
それらをもう二度ほど繰り返し、相手のやり方や癖を頭に入れていく。そろそろ勝負に出られると踏んだところで、冰がガタりと立ち上がって、ディーラー相手に食って掛かった。
「真田さん、俺はかなり我が侭な言動で相手のディーラーさんを揺さぶろうと思っています。真田さんに対しても爺や扱いで高飛車な態度をとってしまいますが、びっくりしないでくださいね」
「かしこまりました。私も大役をお任せいただくことができてワクワクしておりますよ! 冰さんの演技にがんばってついていきたいと思いますので、よろしくお願い致します」
言葉通りに期待満々の様子の真田を囲んで明るい笑い声に包まれる。誰もが共にこうしていられる幸せを噛み締めるかのように和やかなひと時となった。
こうして皆が一丸となってカジノのオープンに備えたのだった。
そして、いよいよオープンの時刻がやってきた。
目的のカジノでは張と理事会の重鎮方が待ち受けており、まずはどのテーブルで勝負をかけるかの目星をつけていく。
その間、カジノでの賭け事にも比較的精通している鐘崎は、紫月と共にダイスゲームやカードゲームに参加し、少しでも勝ちを得ることに協力することとなった。それと共にイカサマが行われていないかということにも目を配る。
こうして少しずつ様々な箇所を観察して回った後、一番潰し易いと思えるルーレットのテーブルで今宵大一番の計画を実行に移すことと相成った。
我が侭お嬢様に扮した冰が真田を伴ってルーレットへと近づいていく。いよいよ二人の演技の始まりである。
「爺や、爺や! これよ、これ! アタクシ、一度やってみたかったのよ、ルーレット!」
我が侭お嬢様に扮した冰が嬉々とはしゃぎながらテーブルにつく。最初の数回は、わざと負け越して相手の出方を見極めるのが目的である。したがって、多くもないがそこそこには大金といった金額で賭けに参加することにした。
冰は意気揚々とした素人ぶりで、お付きの真田は少々ハラハラとしながら成り行きを見守っているという演出を強調してみせる。ディーラーにしてみれば、いいカモが迷い込んできたという印象を持ったようだった。
賭けは客の方が最初という方式なので、他の参加者に混じって適当な位置を指定する。
すべての賭けが出揃ったところで、ディーラーがニッと口角を上げたのを見逃す冰ではなかった。
ホイールが回されボールが止まると、結果は見事に客の全員が惨敗という形で勝敗がついた。
「ああーん、やっぱりそんなに上手くはいかないわねぇ……。何だか悔しいわ!」
冰はあからさまに残念がって、二度目の勝負にはもう少しだけ大きな金額を賭けることにする。他の客も同様で、今の分を取り戻さんと再び結構な金額が賭けられていった。
「いいわ、次こそ……!」
冰は期待顔で勝負を見つめる。だが、二度目もあっさりと客側がスられる形で終わった。
それらをもう二度ほど繰り返し、相手のやり方や癖を頭に入れていく。そろそろ勝負に出られると踏んだところで、冰がガタりと立ち上がって、ディーラー相手に食って掛かった。
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