極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
217 / 1,212
恋敵

23

しおりを挟む
「そうなんですか……。それは大変ですね」
「ごめんよ、突然こんな話を聞かせてしまって。でもキミも同業だったと思ったら、つい――ね」
 張は弱音を吐いてしまって情けないというような顔つきで苦笑したが、意外にも冰としてはとっさに閃いた思いつきに瞳を見開いてしまった。
「ね、張さん。その潰しちゃいたいカジノっていうのは……どんなお店なんです?」
「ん? どんなって、体裁は俺たちの店とそう変わらない普通のカジノさ。ガイドブックなんかにも載っているし、店構えも怪しいわけじゃないから、観光客なんかも結構入っているな。まあ、彼らにとってはそれが狙いなんだけどね。一見さんに等しい客を相手にイカサマで悪どく稼いでいるのさ」
「なるほど。滅多に何度も訪れない観光客が相手なら、訴えられることも少ないというわけですね? でも――イカサマで稼げちゃうってことは、そのお店のディーラーさんも腕はいいってことなんですよね?」
「まあ、そうなんだろうな。と言ってもキミほどの神ディーラーではないだろうけどね」
「いえ、そんな……」
 おどけたようにウィンクをしながらそんなふうに持ち上げてくれる張に、冰は恐縮しつつも思い切って閃きを打ち明けてみようと思った。
「張さん、すみません。ちょっと待っていていただけますか? あ、お時間大丈夫ですか?」
「ん? ああ、構わないよ」
「ありがとうございます!」
 冰はペコリと頭を下げると、社長のテーブルへと戻って逸るようにこう訊いた。
「社長さん! あの……さっき、もしも俺が彼女の横領分を肩代わりできたら許してもいいっておっしゃってくださいましたよね?」
 突飛なことを言い出した冰に、社長はむろんのこと、一緒にテーブルで待っていた紫月も同様、驚いたように瞳を見開いた。
「お金を全額お返しできたら、彼女を闇市に売ることはしないでいただけますか?」
「え? あ、ああ……。それはまあ、構わないが……」
 だが、まさか五千万円もの大金を肩代わりできるはずもなかろうと、半信半疑で瞳を丸めている。
 冰はコクりとうなずくと、
「お金が用意できるかも知れません。数日――いえ、明日の朝までで結構です。待っていただけませんか?」
 真剣な顔つきで社長を見つめた。
「明日までって……まさか、あそこにいる知り合いの御仁に……都合してもらえることにでもなったというわけか?」
 社長は張の方をチラリと見やりながらそう訊いた。冰が少しの間話し込んでいたのを観察しながら、たまたま居合わせたその男がよほどの金持ちかなにかで、金を都合してくれるとでも言ったのかと思ったからだ。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

処理中です...