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恋敵
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「あんたの気持ちも分からねえじゃねえけどよ、周焔ってのはそんな……服とか部屋とかの外観だけで人を見るヤツじゃねえと思うけどな」
紫月に言われて女は顔をしかめた。
「男のあなたには分からないわよ! 誰だって綺麗な女に興味を引かれるでしょうし、特に彼は容姿もお金も何でも揃ってる一流の男だもの。普通の女じゃ相手にしてくれっこないわ」
「そりゃ、あんたの思い込みだろ?」
「それなのに……! こんな子供みたいな若い……しかも男と付き合ってるだなんて信じられない! あなた、いったいどうやって焔に取り入ったのよ!」
今度は矛先を冰に向ける。
「冰君は別に取り入ったわけじゃねえよ。ま、とにかくいつまでここに居たって仕方ねえ。車を拾って帰った方が身の為だな」
確かにその通りだが、冰にはこの女のことが気に掛かってもいて、気付けば少々節介なことを口走ってしまっていた。
「あの……さっきの男の人たちはあなたのご自宅もご存知なんじゃないですか? よろしければ一緒にウチにいらっしゃいませんか?」
このまま彼女を一人で帰してまた襲われたらと思うと、ついそんな心配に駆られてしまったからだ。それに、この女のことを周に黙っているわけにもいかないし、それならばいっそこのまま一緒に連れて帰るのがいいのではないかと思ったのだ。
ところが女の方は意外にも躊躇しているようだった。
「嫌……よ。そんなの……」
冰に世話になることがプライドに障るのだろうかと思えたが、そうではなかったらしい。
「借金取りに追われてるなんてことが焔に知れたら……恥ずかしくて生きていけない……。絶対に嫌よ……!」
だが、冰が言うようにこのまま自宅に帰ったとて、すぐに彼らに捕まってしまうだろう。それはそれで困る。どうしていいか分からないとばかりに困惑状態の女に、冰は言った。
「さっきの男たちのことは黙っていると約束します。俺たちからは何も言いませんから。とにかくまた彼らが追って来る前にここを去った方が無難だと思います」
「でも……」
「とりあえずウチに行けば周にも会えますから。後のことはそれから考えましょう」
冰の言葉に紫月もうなずいた。
「冰君の言う通りだ。いつまでここでグズグズしてたら危険だ。とりあえず車を拾おう」
川沿いの遊歩道から車道を指差しながらそう促す。女は未だに迷っている様子だったが、二人にそう言われて渋々一歩を踏み出した時だった。
突如、植え込みの陰から現れた男が紫月の背後から襲い掛かり、スタンガンを浴びせたのだ。
「……ッぐ」
「紫月さんッ!?」
冰が紫月を振り返った時は、既に彼が意識を失って地面へと倒れ込む瞬間だった。と同時に自身の背中にも鈍い衝撃を感じた時には、冰もまたスタンガンの餌食となっていた。
◇ ◇ ◇
紫月に言われて女は顔をしかめた。
「男のあなたには分からないわよ! 誰だって綺麗な女に興味を引かれるでしょうし、特に彼は容姿もお金も何でも揃ってる一流の男だもの。普通の女じゃ相手にしてくれっこないわ」
「そりゃ、あんたの思い込みだろ?」
「それなのに……! こんな子供みたいな若い……しかも男と付き合ってるだなんて信じられない! あなた、いったいどうやって焔に取り入ったのよ!」
今度は矛先を冰に向ける。
「冰君は別に取り入ったわけじゃねえよ。ま、とにかくいつまでここに居たって仕方ねえ。車を拾って帰った方が身の為だな」
確かにその通りだが、冰にはこの女のことが気に掛かってもいて、気付けば少々節介なことを口走ってしまっていた。
「あの……さっきの男の人たちはあなたのご自宅もご存知なんじゃないですか? よろしければ一緒にウチにいらっしゃいませんか?」
このまま彼女を一人で帰してまた襲われたらと思うと、ついそんな心配に駆られてしまったからだ。それに、この女のことを周に黙っているわけにもいかないし、それならばいっそこのまま一緒に連れて帰るのがいいのではないかと思ったのだ。
ところが女の方は意外にも躊躇しているようだった。
「嫌……よ。そんなの……」
冰に世話になることがプライドに障るのだろうかと思えたが、そうではなかったらしい。
「借金取りに追われてるなんてことが焔に知れたら……恥ずかしくて生きていけない……。絶対に嫌よ……!」
だが、冰が言うようにこのまま自宅に帰ったとて、すぐに彼らに捕まってしまうだろう。それはそれで困る。どうしていいか分からないとばかりに困惑状態の女に、冰は言った。
「さっきの男たちのことは黙っていると約束します。俺たちからは何も言いませんから。とにかくまた彼らが追って来る前にここを去った方が無難だと思います」
「でも……」
「とりあえずウチに行けば周にも会えますから。後のことはそれから考えましょう」
冰の言葉に紫月もうなずいた。
「冰君の言う通りだ。いつまでここでグズグズしてたら危険だ。とりあえず車を拾おう」
川沿いの遊歩道から車道を指差しながらそう促す。女は未だに迷っている様子だったが、二人にそう言われて渋々一歩を踏み出した時だった。
突如、植え込みの陰から現れた男が紫月の背後から襲い掛かり、スタンガンを浴びせたのだ。
「……ッぐ」
「紫月さんッ!?」
冰が紫月を振り返った時は、既に彼が意識を失って地面へと倒れ込む瞬間だった。と同時に自身の背中にも鈍い衝撃を感じた時には、冰もまたスタンガンの餌食となっていた。
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