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ワンコ輪舞曲
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柴犬にスピッツ、ドーベルマンにシェパード――それぞれ毛並みもフワフワのぬいぐるみのようだったり、艶のあるベルベットのようだったりして、なかなかに凝っている代物だ。
「もしかして張さん、これオーダーで作ってくれたのかな……? だってほら、この黒いのなんかものすごく大っきいよ? きっと白龍用に選んでくれたんじゃない?」
「――ッ……あの野郎ったら……」
周は頭を抱えながらも苦笑させられてしまった。
「ねえ、せっかくだから着てみようよ!」
「着るだと――?」
「そうだ! 執事さんと世話係さん用ってことは――きっと鐘崎さんと源次郎さんのことだよね?」
張の邸を訪ねた時にその二人も同行していたから、それでわざわざ彼らの分までと思ってくれたのかも知れない。
「――ったく、ヘンなところに気が回る野郎だな」
周は半ば呆れ気味だ。
「うーん、源次郎さんは多分こういうの着ないだろうから、紫月さんにどうかな? ね、ね、明日は休みだしさ。鐘崎さんと紫月さんに届けに行こうよ!」
冰の方は意外にもかなりの乗り気である。
「白龍はドーベルマンって雰囲気かな! 着たところ見てみたいなぁー!」
乗り気というよりは、すっかりワクワクとして着る気満々の様子だ。
「俺がこれを着んのかよ……」
嫌そうに肩を落としながらも、だがまあ――考えてみれば冰にこの可愛いのを着せてみるのも悪くはないと思えたりする。四人で着るならどうせ鐘崎も着ることになるわけだし、それならさして恥ずかしくはないだろうか。
「まあな、カネのヤツの着ぐるみ姿ってのも……ある意味、いいネタになりそうだしな。よし! それじゃ、明日にでも出掛けてみるとするか」
「ホント!? やった! まだそんなに遅くないし、紫月さんに電話してもい?」
「ああ……そりゃ構わねえが」
意気揚々と冰は早速に電話をかけ始めた。そんな姿を横目にしながら、マジマジとドーベルマンの着ぐるみを広げてみる周である。
「しかし――着るのはいいが、場所が問題だな……。カネん所の邸も広いには広いが……あそこは若い衆も多いしな」
誰かに見られたら、それはそれで気まずい。というよりも男の尊厳にかかわりそうである。仮にも極道の世界に生きる男が、喜んで等身大の着ぐるみを着ていたなどと知れたら、ある意味致命的といえる。
だが、冰と紫月のことだ、きっと大乗り気ではしゃぎ出すに決まっている。部屋の中ならまだしも、せっかくだからと中庭にでも出て、屋外で遊びたいなどと言い出し兼ねない。それこそ組の若い衆らから注目の的となるだろう。
「いや! いやいやいやいや、冗談じゃねえぞ……。それだきゃ、何が何でも阻止しねえと……」
ぬいぐるみになるのは、やはり冰と紫月だけで十分であろう。
「なぁ、冰。やっぱりお前と一之宮の二人で着りゃいんじゃねえか?」
「ええー! ダメだよー! 紫月さんも楽しみにしてるって言ってくれてるし!」
スマートフォンをフリフリしながら冰が笑う。
「記念に写真を撮って張さんに送ってあげようよ!」
「写真だ?」
四人並んで犬の着ぐるみ姿を思い浮かべた途端に、周はガラにもなく蒼ざめてしまった。
「まさか……輪になって踊ろうなんて言い出すんじゃあるめえな……」
張の好意は有難いが、同時に頭の痛いことでもある。
さて、どうしたものか。何とか自分と鐘崎は着ずに済む方法はないものだろうか――と、頭を悩ます周であった。
◇ ◇ ◇
「もしかして張さん、これオーダーで作ってくれたのかな……? だってほら、この黒いのなんかものすごく大っきいよ? きっと白龍用に選んでくれたんじゃない?」
「――ッ……あの野郎ったら……」
周は頭を抱えながらも苦笑させられてしまった。
「ねえ、せっかくだから着てみようよ!」
「着るだと――?」
「そうだ! 執事さんと世話係さん用ってことは――きっと鐘崎さんと源次郎さんのことだよね?」
張の邸を訪ねた時にその二人も同行していたから、それでわざわざ彼らの分までと思ってくれたのかも知れない。
「――ったく、ヘンなところに気が回る野郎だな」
周は半ば呆れ気味だ。
「うーん、源次郎さんは多分こういうの着ないだろうから、紫月さんにどうかな? ね、ね、明日は休みだしさ。鐘崎さんと紫月さんに届けに行こうよ!」
冰の方は意外にもかなりの乗り気である。
「白龍はドーベルマンって雰囲気かな! 着たところ見てみたいなぁー!」
乗り気というよりは、すっかりワクワクとして着る気満々の様子だ。
「俺がこれを着んのかよ……」
嫌そうに肩を落としながらも、だがまあ――考えてみれば冰にこの可愛いのを着せてみるのも悪くはないと思えたりする。四人で着るならどうせ鐘崎も着ることになるわけだし、それならさして恥ずかしくはないだろうか。
「まあな、カネのヤツの着ぐるみ姿ってのも……ある意味、いいネタになりそうだしな。よし! それじゃ、明日にでも出掛けてみるとするか」
「ホント!? やった! まだそんなに遅くないし、紫月さんに電話してもい?」
「ああ……そりゃ構わねえが」
意気揚々と冰は早速に電話をかけ始めた。そんな姿を横目にしながら、マジマジとドーベルマンの着ぐるみを広げてみる周である。
「しかし――着るのはいいが、場所が問題だな……。カネん所の邸も広いには広いが……あそこは若い衆も多いしな」
誰かに見られたら、それはそれで気まずい。というよりも男の尊厳にかかわりそうである。仮にも極道の世界に生きる男が、喜んで等身大の着ぐるみを着ていたなどと知れたら、ある意味致命的といえる。
だが、冰と紫月のことだ、きっと大乗り気ではしゃぎ出すに決まっている。部屋の中ならまだしも、せっかくだからと中庭にでも出て、屋外で遊びたいなどと言い出し兼ねない。それこそ組の若い衆らから注目の的となるだろう。
「いや! いやいやいやいや、冗談じゃねえぞ……。それだきゃ、何が何でも阻止しねえと……」
ぬいぐるみになるのは、やはり冰と紫月だけで十分であろう。
「なぁ、冰。やっぱりお前と一之宮の二人で着りゃいんじゃねえか?」
「ええー! ダメだよー! 紫月さんも楽しみにしてるって言ってくれてるし!」
スマートフォンをフリフリしながら冰が笑う。
「記念に写真を撮って張さんに送ってあげようよ!」
「写真だ?」
四人並んで犬の着ぐるみ姿を思い浮かべた途端に、周はガラにもなく蒼ざめてしまった。
「まさか……輪になって踊ろうなんて言い出すんじゃあるめえな……」
張の好意は有難いが、同時に頭の痛いことでもある。
さて、どうしたものか。何とか自分と鐘崎は着ずに済む方法はないものだろうか――と、頭を悩ます周であった。
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