極道恋事情

一園木蓮

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狙われた恋人

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「正直なことを言っちまうと、これまでの人生で一番っていうくらい真剣に考えたぞ? 万が一にもお前のくれたメッセージを読み解けなかったらと思うと気が気じゃなかった」
「白龍、うん……俺もこんな伝え方で大丈夫なんだろうかって……白龍が黒の四番って言ったのを聞くまでドキドキだったよ」
「まさか……お前がディーラーで、俺が客として賭けるなんて……こんな展開になるとは想像もつかなかったからな。どこに賭ければいいかってのを打ち合わせることもできなかったしな」
「うん、そうだよね。俺もまたディーラーをやるなんて思ってなかったからさ」
「けど、冰。お前、さすがだな。俺に賭ける位置を知らせてくれた方法にも驚いたが、狙った位置に確実にボールを落としたことも信じられねえくらいだったぜ。この前の香港での勝負の時も紫月の賭けた位置にピタリとハメちまったし……神技なんてもんじゃねえな? あの時はお前、偶然だったなんて言ってたが、本当は偶然なんかじゃなかったんじゃねえのか?」
 あの時、冰は黄老人が天国から力を貸してくれたんだと思いますと言っていたが、実のところそれは冰の謙遜であって、本当はものすごい技術を持っているのではないかと思ってしまう。彼は謙虚な性質だから、自らすごいだろうなどとは決して口にしないだけで、本当に神がかっていると思えるのだ。
 だが、冰は恥ずかしそうに笑いながら首を横に振った。
「ううん、あの時は本当に偶然だったんだよ。今回とは盤の仕様がちょっと違ってたからさ」
「盤ってのはルーレットのホイールのことか?」
「うん、そう。実は張さんのお邸に連れて行かれた時さ、玄関を入ってすぐのところにルーレットのホイールが飾ってあったんだ。ちょっとアンティークな造りの、今では珍しいやつなんだけど。俺がそれをじっと見てたら、張さんが教えてくれたんだ。このホイールは今は殆どのカジノでは使われてない昔の仕様のものなんだって」
「要は古い型だってことか?」
「率直にいえばそうなるのかな。でも張さんにとっては初めてカジノに興味をもった子供の頃に使われてた思い入れのある盤なんだって。それで、張さんのお店では今でもわざと新しいのを使わずに、昔の仕様のものを使ってるって言ってた。案外、新品より高くついたりして、集めるのに苦労したとか言ってたよ」
「ほう?」
「でね、実は昔のルーレットの盤っていうのは、今普及してるものよりも溝が深くなっててさ。狙った位置にボールをハメやすい造りなんだよね。黄のじいちゃんたちの時代はそういった溝の深い盤が主流だったから、俺もそれでよく練習させられたんだよ。今はイカサマとかがしにくいようにって、溝が浅いものに改良されちゃったから。白龍の家のカジノも溝が浅いタイプだったから、あの時は本当に偶然だったんだ」
 照れ臭そうにはにかむ様子が堪らずに愛しくて、周は思わず瞳を細めてしまった。
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