172 / 1,212
狙われた恋人
26
しおりを挟む
「――冰が狙う位置なら想像がつく。あいつならきっと赤の一番だろう」
周が自信ありげに言うと、鐘崎は不思議そうに首を傾げた。
「何故そう思う。まさかお前の名前が焔だから赤、冰にとってお前がこの世で一番大事な奴だから――とか言うんじゃねえだろうな?」
「分かってるじゃねえか。その通りだ」
周は自信満々の様子だが、はたして本当にそれで合っているのだろうか。鐘崎からすれば若干不安に感じてしまう。
「お前、そりゃちょいとばかり安易過ぎやしねえか? 賭けの対象は冰なんだぞ? 万が一にも間違った位置に賭けたら取り返しがつかねえことになる」
「……その時は最終手段だ。冰の為にも大事にはしたくねえが、俺はどうあってもあいつを手放すつもりはねえ。例え戦争をしてでも張をぶっ潰して冰を取り返すまでだ」
周の瞳には裏社会に生きる男の本質ともいうべき決意の焔がユラユラと燃え盛っていた。
「元々、俺のもんに手を出しやがったのは張の方だ。遠慮はいらねえ」
「てめ、最初っからそのつもりだったってか?」
つまり、勝敗などあってないようなもので、どう転ぼうが最終的には力で制圧するつもりだということだ。鐘崎はふうと小さな溜め息をつきながら苦笑してしまった。
「……ったく! そんなところだろうと思って張の応接室のソファの中に盗聴器を仕掛けてはきたがな。おそらく張は賭けの位置を冰と打ち合わせるに違いねえ。情報だけはあって損はねえ」
「――相変わらずに手はずがいいな」
周も苦笑を誘われつつ、と同時に素直な感謝の言葉を付け足した。
「カネ――すまねえな。てめえにまで苦労を掛けちまう」
「水臭えことを言うな。俺だって何度もお前に助けられてる。お互い様ってやつだ」
「ああ――本当にすまねえ。てめえにも親父さんにも、それに源次郎さんや皆にもご足労掛けるが――今夜が勝負だ。すまねえが力を貸してくれ」
真摯に頭を下げた周に、鐘崎も源次郎ももちろんだというふうにうなずいてみせた。
「心配するな。張の手下共は俺たちが万全の態勢を敷いて抑える。冰が言ってた毒矢のことも含めてカジノではどんな事態になっても抜かりがねえように人員を配置する。お前は余計なことを考えずに張との勝負に集中してくれればいい」
「ああ、頼りにしてるぜ」
そんな会話をしていると、鐘崎が仕掛けてきた盗聴器が早速反応したようだ。源次郎が拾った音を録音してパソコン内へと収めていく。音声からは張と冰の会話が聞こえてきていた。
周が自信ありげに言うと、鐘崎は不思議そうに首を傾げた。
「何故そう思う。まさかお前の名前が焔だから赤、冰にとってお前がこの世で一番大事な奴だから――とか言うんじゃねえだろうな?」
「分かってるじゃねえか。その通りだ」
周は自信満々の様子だが、はたして本当にそれで合っているのだろうか。鐘崎からすれば若干不安に感じてしまう。
「お前、そりゃちょいとばかり安易過ぎやしねえか? 賭けの対象は冰なんだぞ? 万が一にも間違った位置に賭けたら取り返しがつかねえことになる」
「……その時は最終手段だ。冰の為にも大事にはしたくねえが、俺はどうあってもあいつを手放すつもりはねえ。例え戦争をしてでも張をぶっ潰して冰を取り返すまでだ」
周の瞳には裏社会に生きる男の本質ともいうべき決意の焔がユラユラと燃え盛っていた。
「元々、俺のもんに手を出しやがったのは張の方だ。遠慮はいらねえ」
「てめ、最初っからそのつもりだったってか?」
つまり、勝敗などあってないようなもので、どう転ぼうが最終的には力で制圧するつもりだということだ。鐘崎はふうと小さな溜め息をつきながら苦笑してしまった。
「……ったく! そんなところだろうと思って張の応接室のソファの中に盗聴器を仕掛けてはきたがな。おそらく張は賭けの位置を冰と打ち合わせるに違いねえ。情報だけはあって損はねえ」
「――相変わらずに手はずがいいな」
周も苦笑を誘われつつ、と同時に素直な感謝の言葉を付け足した。
「カネ――すまねえな。てめえにまで苦労を掛けちまう」
「水臭えことを言うな。俺だって何度もお前に助けられてる。お互い様ってやつだ」
「ああ――本当にすまねえ。てめえにも親父さんにも、それに源次郎さんや皆にもご足労掛けるが――今夜が勝負だ。すまねえが力を貸してくれ」
真摯に頭を下げた周に、鐘崎も源次郎ももちろんだというふうにうなずいてみせた。
「心配するな。張の手下共は俺たちが万全の態勢を敷いて抑える。冰が言ってた毒矢のことも含めてカジノではどんな事態になっても抜かりがねえように人員を配置する。お前は余計なことを考えずに張との勝負に集中してくれればいい」
「ああ、頼りにしてるぜ」
そんな会話をしていると、鐘崎が仕掛けてきた盗聴器が早速反応したようだ。源次郎が拾った音を録音してパソコン内へと収めていく。音声からは張と冰の会話が聞こえてきていた。
20
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる