151 / 1,212
狙われた恋人
5
しおりを挟む
ご存じの通り、周の社屋はツインタワーになっている。メインのアイス・カンパニーが入っているのは第一タワーで、周の住居部分と系列会社が占める第二タワーを繋ぐ連絡通路が最上階にある。普段はそこを通って出勤しているわけだが、その最上階から直接車に乗り込める駐車場は第二タワーの方に設置されていた。つまり、住居の前を通って向かうわけだ。
「念の為、真田にも伝えておこう。自宅に何らかの連絡が入るかも知れねえ」
険しい表情で連絡通路を急いでいると、向こうからその真田が朗らかな様子でやってくるのが見えた。まだ彼は冰が連れ去られたことを知らないので、それも致し方ない。
「坊ちゃま、ちょうど良うございました。只今お知らせに上がろうと――。鐘崎様と一之宮様がお見えですぞ」
その報告に、周はハッと瞳を瞬かせた。
「カネが来てるのか!」
「ええ、例のケーキをお土産に持って来てくださいましてな」
「そいつぁ、有り難え!」
周は言うや否や、邸へと向かって通路を走り出した。
「坊ちゃまー……! あら、あらあら……李さんも劉さんも慌てて、どうなされましたのです?」
瞳をまん丸くしながら驚いている真田に、李がことの次第を話して聞かせた。
一方、周の方では、偶然にも訪ねてくれた鐘崎と紫月に事情を説明すると、彼らもすぐに助力すると言ってくれた。
「氷川、ここ数日の監視カメラの映像をもらえるか? 奴らが冰の顔を知っているとすると、事前に下調べに来ている可能性が高い。それを親父と源さんに送って敵を突き止めてもらう。俺たちはすぐに冰を連れ去った車を追おう」
さすがに鐘崎の考えることは俊敏だ。裏の世界で右に出る者はいないという僚一の息子だけあるというものだ。周は早速二人の側近たちに手配するよう伝えながら、リアルタイムの動向を探っていた。
「現在地はどうだ」
「高速を羽田方面に向かっています。やはりこのまま海外へ飛ぶ気でしょうか」
「念の為、もう一度香港の兄貴にも事情を伝えよう。香港行きが本当なら空港で押さえてもらえる」
その会話を横でうかがっていた鐘崎は、源次郎らに監視カメラの映像を送り終えると、自らの見解を周へと告げた。
「氷川――こうは考えられねえか? 冰をさらった奴らの目的だが、ディーラーの手腕が欲しかったとしたらどうだ」
「ディーラーの手腕だと?」
「この前の春節イベントに来ていた客の中にはカジノ関係の人間もいただろうからな。その時に目を付けられたと考えれば、今回の拉致にも合点がいく。奴らの目的はイカサマ騒ぎを見事に破った冰の腕を欲しがってのことかも知れねえと思ってな」
鐘崎の推測に、周はハッと瞳を見開くと、
「招待客と当日の来場者リストを至急親父に確認する――」
再び、すぐさま香港へと連絡を入れたのだった。
「念の為、真田にも伝えておこう。自宅に何らかの連絡が入るかも知れねえ」
険しい表情で連絡通路を急いでいると、向こうからその真田が朗らかな様子でやってくるのが見えた。まだ彼は冰が連れ去られたことを知らないので、それも致し方ない。
「坊ちゃま、ちょうど良うございました。只今お知らせに上がろうと――。鐘崎様と一之宮様がお見えですぞ」
その報告に、周はハッと瞳を瞬かせた。
「カネが来てるのか!」
「ええ、例のケーキをお土産に持って来てくださいましてな」
「そいつぁ、有り難え!」
周は言うや否や、邸へと向かって通路を走り出した。
「坊ちゃまー……! あら、あらあら……李さんも劉さんも慌てて、どうなされましたのです?」
瞳をまん丸くしながら驚いている真田に、李がことの次第を話して聞かせた。
一方、周の方では、偶然にも訪ねてくれた鐘崎と紫月に事情を説明すると、彼らもすぐに助力すると言ってくれた。
「氷川、ここ数日の監視カメラの映像をもらえるか? 奴らが冰の顔を知っているとすると、事前に下調べに来ている可能性が高い。それを親父と源さんに送って敵を突き止めてもらう。俺たちはすぐに冰を連れ去った車を追おう」
さすがに鐘崎の考えることは俊敏だ。裏の世界で右に出る者はいないという僚一の息子だけあるというものだ。周は早速二人の側近たちに手配するよう伝えながら、リアルタイムの動向を探っていた。
「現在地はどうだ」
「高速を羽田方面に向かっています。やはりこのまま海外へ飛ぶ気でしょうか」
「念の為、もう一度香港の兄貴にも事情を伝えよう。香港行きが本当なら空港で押さえてもらえる」
その会話を横でうかがっていた鐘崎は、源次郎らに監視カメラの映像を送り終えると、自らの見解を周へと告げた。
「氷川――こうは考えられねえか? 冰をさらった奴らの目的だが、ディーラーの手腕が欲しかったとしたらどうだ」
「ディーラーの手腕だと?」
「この前の春節イベントに来ていた客の中にはカジノ関係の人間もいただろうからな。その時に目を付けられたと考えれば、今回の拉致にも合点がいく。奴らの目的はイカサマ騒ぎを見事に破った冰の腕を欲しがってのことかも知れねえと思ってな」
鐘崎の推測に、周はハッと瞳を見開くと、
「招待客と当日の来場者リストを至急親父に確認する――」
再び、すぐさま香港へと連絡を入れたのだった。
22
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる