極道恋事情

一園木蓮

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香港蜜月

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「それにしても冰君、ホントにすごかったな! 俺の賭けた黒の十三番にドンピシャ玉がはまった時はマジで驚いたぜ!」
 紫月がほとほと感服といった表情でいる。
「それについては俺も同感だ。間近ですげえもんを見せてもらった!」
 レイも感心顔だ。
「それにさ、カードゲームの方だってどんな魔法を使ったんだってくらい見事に相手を打ち負かしてくれてさ! もう感動も感動だったし!」
「本当だな。伝説になるくらいすげえ勝負だった」
 紫月とレイが交互交互に興奮気味で言う。誰しも思いは同じなわけだが、特に目の前でそれを見ていたこの二人にとっては格別な感動なのだろう。
「いえ、そんな……! 実は……紫月さんの賭けた黒の十三番にボールがはまったのは本当に偶然なんです」
「ええ!? そうだったのか?」
「てっきり冰君が狙った位置に落としてくれたのかと思った」
 皆が驚く傍らで冰は言った。
「いえ、本当に偶然で……俺自身驚いています。きっと……天国のじいちゃんが力を貸してくれたんだと思います」
 面映ゆい表情ながらも感慨深けに瞳を細めた様子に、皆一様に温かい気持ちに包まれたのだった。



◇    ◇    ◇



 その後、ホテルへと戻ると、部屋に入るなり冰は突如背後から周に抱き締められた。
「冰……! 本当に良くやってくれた。お陰でカジノは救われた」
「白龍……! ううん、そんな……」
 周は後方から顎先を掴むと、言葉よりも何よりも先に、奪うように唇を重ね合わせた。
「……白……ッ龍……」
 そのまま、唇を離さないままでもつれ合うようにベッドへと移動し、なだれ込むようにしてシーツの海へとダイブする。ふと触れ合った周の身体の中心は、既に硬く張り詰めて欲情を表していた。
「……白……!」
「すまねえな、冰……本当はゆっくり休ませてやらなきゃならねえのは分かっているんだが……」
 今はどうしても気持ちが抑えられない。
 周にしてみれば、冰が見事過ぎる活躍でカジノの危機を救ってくれたことに対する感謝はむろんのことながら、彼が危険な目に遭わずにこうして自らの手の中にいることを確かめたいという思いも同じくらいに強かったのだろう。それと同時に、今まで見てきた素直で可愛い彼が見せたプロとしての大人びた一面を目の当たりにしたことで、新たな魅力に抑え切れない恋慕の情が噴火のごとく湧き上がってもいたのだ。
 周は自分自身でさえ表現しようのない不思議な感情が渦巻いているのを感じていた。取り留めのない気持ちのままに、今はただ、愛する者が手中にあることを何度でも確かめたくて堪らない、そんな思いにつき動かされるように抱擁に代えるしかできずにいたのだった。
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