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香港蜜月
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「ふん、鼻の下伸ばしたヤツが何を言う」
「るせー。鼻の下だろうが、どこの下だろうが短えよりは長え方がいいに決まってる」
「は! 品のねえこと抜かしてんじゃねえ」
「大は小を兼ねるって言うだろうが」
「阿保か、てめえは! 何の話してんだ」
傍らでは、旦那衆の低次元な企みに気付く様子もない紫月と冰がおしゃべりに花を咲かせながら、カボチャやニンジンなどの甘味のある野菜を中心にヘルシーな魚介類と薄めのステーキを楽しんでいる。
各人の目の前には大きな鉄板が設られており、シェフがその場で好みの肉を焼いてくれるというスタイルだ。口に入れるととろけるようなやわらかいステーキからホタテやアワビなどの魚介類、色とりどりの野菜など種類も豊富で、調理の様子を見ているだけでも楽しい。
何はともあれ、二組の恋人たちは真田と源次郎と共に賑やかな夕卓のひと時を楽しんだのだった。
その後、旦那衆が強い大黒柱と称して、嫁を幸せにすべく挑んだのは言うまでもない。
◇ ◇ ◇
次の日、”大黒柱”たちが張り切ったせいで、紫月と冰は昼過ぎまで寝過ごすハメとなった。
それとは裏腹に、当の大黒柱二人は朝早くから機嫌も上々、すっかり気持ちの良く目覚めてしまい、共に伴侶は夢の中だしで手持ち無沙汰で仕方ない。暇を持て余した鐘崎が周を誘いにやって来て、源次郎と真田の部屋を訪れての麻雀大会が始まった。
「そういや今夜は親父さんのカジノで春節記念のイベントだとかと言っていたな?」
「ああ。始まるまではまだたっぷり時間があるからな。冰たちが目を覚ましたら、そこらのショップでも見に行こうかと思ってる」
「なんだ、ショッピングか。何か買ってやるつもりなのか?」
「今夜の為のタキシードは一応用意してきてはあるんだが……。昨日、冰と出掛けた際に通り掛かった贔屓のショップでちょっといいカフスを見つけたんでな。あいつが気に入れば揃いでつけるのも悪くねえと思ってよ」
「カフスか。そんなにいいデザインだったのか?」
「ああ。付いてる宝石がガーネットとダイヤだったんだ」
「ほう?」
その二つの宝石に特別な意味でもあるのかと訊きたげな鐘崎の視線を悟って、横から真田が口を挟んだ。
「ガーネットとダイヤモンドは、坊っちゃまと冰さん、お二人のお名前にちなんだ石なのですよ。お二人がスマートフォンにつけていらっしゃるストラップにも同じ石がはまっておりましてな」
「ああ、例の組紐のやつか」
鐘崎も見たことがあるので知っているのだ。
「るせー。鼻の下だろうが、どこの下だろうが短えよりは長え方がいいに決まってる」
「は! 品のねえこと抜かしてんじゃねえ」
「大は小を兼ねるって言うだろうが」
「阿保か、てめえは! 何の話してんだ」
傍らでは、旦那衆の低次元な企みに気付く様子もない紫月と冰がおしゃべりに花を咲かせながら、カボチャやニンジンなどの甘味のある野菜を中心にヘルシーな魚介類と薄めのステーキを楽しんでいる。
各人の目の前には大きな鉄板が設られており、シェフがその場で好みの肉を焼いてくれるというスタイルだ。口に入れるととろけるようなやわらかいステーキからホタテやアワビなどの魚介類、色とりどりの野菜など種類も豊富で、調理の様子を見ているだけでも楽しい。
何はともあれ、二組の恋人たちは真田と源次郎と共に賑やかな夕卓のひと時を楽しんだのだった。
その後、旦那衆が強い大黒柱と称して、嫁を幸せにすべく挑んだのは言うまでもない。
◇ ◇ ◇
次の日、”大黒柱”たちが張り切ったせいで、紫月と冰は昼過ぎまで寝過ごすハメとなった。
それとは裏腹に、当の大黒柱二人は朝早くから機嫌も上々、すっかり気持ちの良く目覚めてしまい、共に伴侶は夢の中だしで手持ち無沙汰で仕方ない。暇を持て余した鐘崎が周を誘いにやって来て、源次郎と真田の部屋を訪れての麻雀大会が始まった。
「そういや今夜は親父さんのカジノで春節記念のイベントだとかと言っていたな?」
「ああ。始まるまではまだたっぷり時間があるからな。冰たちが目を覚ましたら、そこらのショップでも見に行こうかと思ってる」
「なんだ、ショッピングか。何か買ってやるつもりなのか?」
「今夜の為のタキシードは一応用意してきてはあるんだが……。昨日、冰と出掛けた際に通り掛かった贔屓のショップでちょっといいカフスを見つけたんでな。あいつが気に入れば揃いでつけるのも悪くねえと思ってよ」
「カフスか。そんなにいいデザインだったのか?」
「ああ。付いてる宝石がガーネットとダイヤだったんだ」
「ほう?」
その二つの宝石に特別な意味でもあるのかと訊きたげな鐘崎の視線を悟って、横から真田が口を挟んだ。
「ガーネットとダイヤモンドは、坊っちゃまと冰さん、お二人のお名前にちなんだ石なのですよ。お二人がスマートフォンにつけていらっしゃるストラップにも同じ石がはまっておりましてな」
「ああ、例の組紐のやつか」
鐘崎も見たことがあるので知っているのだ。
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