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告げられないほどに深い愛(極道若頭編)
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「おい、どうしたッ!? 何があった!?」
一見したところ、二人共に怪我を負っている様子はない。風邪でも引いたのかと思いきや、それどころではなく、紫月にとっては信じ難い事態であった。
「夜分にすみません! 若が来ていないかと思いまして――」
橘よりは年長で、幹部でもある清水がそう訊いた。
「遼二が……!? いや、来てねえが。ヤツがどうかしたのか」
紫月にとってはその名を耳にしただけで、とてつもない焦燥感が湧き上がる。
「実は――つい先程まで組の連中が若と一緒だったんですが、突然姿を消してしまわれたとの連絡がありまして――」
「……ッ、姿を消したってどういうことだ!?」
「今夜は依頼を請け負いがてら、道内組というところの組長と料亭で会食があったんです。うちの組からも若い衆数人が護衛がてら若に同行したんですが、肝心の会食時には人払いされてしまったんだそうです」
清水の言うには、依頼主である道内組長がどうしても鐘崎と二人きりで話がしたいとのことで、付いていった者たちは料亭の外で待機を余儀なくされたとのことだった。
「それから半刻ほど経った頃です。急に店の入り口が騒がしくなったそうで……」
様子を見に行くと、相手側の組員たちが数人でウロウロとし、怒号が飛び交い始めたのだという。
「終いには若と一緒だったはずの道内組長本人まで出てきて、ウチの若い衆相手に鐘崎を逃しやがったのかってすげえ剣幕だったそうです。何のことだかさっぱり分からねえってんで、一先ず我々のところに連絡がきたわけです」
橘も口を揃えてそう訴えてくる。
「何か急な事態が起こったのだと思い、若に電話を入れたんですが出られないんです」
「それもそのはずです! 向こうの組員らが出て行った後で座敷を確認しに行ったところ、廊下に若の携帯が落ちてるのを見つけたそうで……」
これですと言って橘が差し出してきたスマートフォンは、確かに鐘崎のものだった。
「つい今しがた、うちの組員の一人が持ち帰ってきたものです。スマホの中に我々へのメッセージでも残されたのかと思い、失礼かとは思ったんですが調べたところ、特にそれらしきは見つかりませんでした。たった一人でどちらへ行かれたのかも分かりませんし、もしかして怪我でも負われのかと思ってこちらへ伺ったわけですが……」
相手側も捜していたところをみると、彼らが鐘崎を拉致したという可能性は極めて低いと考えていいだろうか。
「ですが、万が一その騒ぎが我々の目をごまかす作戦だったということも鑑みて、今ウチの組員たちを道内の組事務所に差し向けて様子を探っています」
話を要約すると、こうだ。組長と鐘崎二人きりの会食時に何らかの緊急事態が起こり、鐘崎が姿を消してしまった。考えられる原因として、ひとつには鐘崎自身が組長の目を盗んで自ら身を隠したこと。ふたつ目は組長らによって鐘崎が拉致されてしまったこと、そのどちらかの線が強いと思うと清水は言った。
仮にし拉致だとするならスマートフォンを落としていったことにも合点がいくが、相手側も必死になって行方を追っていた様子から察するに、その線は薄いかも知れない。では、もしも鐘崎が自分で座敷を逃げ出したというなら、何故清水らに連絡をしてよこさないのかという疑問も湧いてくる。
「もしかしたらお怪我を負われていて、スマートフォンも見当たらず、連絡の取りようがないのかも知れません」
清水の言葉に紫月も蒼白となった。
一見したところ、二人共に怪我を負っている様子はない。風邪でも引いたのかと思いきや、それどころではなく、紫月にとっては信じ難い事態であった。
「夜分にすみません! 若が来ていないかと思いまして――」
橘よりは年長で、幹部でもある清水がそう訊いた。
「遼二が……!? いや、来てねえが。ヤツがどうかしたのか」
紫月にとってはその名を耳にしただけで、とてつもない焦燥感が湧き上がる。
「実は――つい先程まで組の連中が若と一緒だったんですが、突然姿を消してしまわれたとの連絡がありまして――」
「……ッ、姿を消したってどういうことだ!?」
「今夜は依頼を請け負いがてら、道内組というところの組長と料亭で会食があったんです。うちの組からも若い衆数人が護衛がてら若に同行したんですが、肝心の会食時には人払いされてしまったんだそうです」
清水の言うには、依頼主である道内組長がどうしても鐘崎と二人きりで話がしたいとのことで、付いていった者たちは料亭の外で待機を余儀なくされたとのことだった。
「それから半刻ほど経った頃です。急に店の入り口が騒がしくなったそうで……」
様子を見に行くと、相手側の組員たちが数人でウロウロとし、怒号が飛び交い始めたのだという。
「終いには若と一緒だったはずの道内組長本人まで出てきて、ウチの若い衆相手に鐘崎を逃しやがったのかってすげえ剣幕だったそうです。何のことだかさっぱり分からねえってんで、一先ず我々のところに連絡がきたわけです」
橘も口を揃えてそう訴えてくる。
「何か急な事態が起こったのだと思い、若に電話を入れたんですが出られないんです」
「それもそのはずです! 向こうの組員らが出て行った後で座敷を確認しに行ったところ、廊下に若の携帯が落ちてるのを見つけたそうで……」
これですと言って橘が差し出してきたスマートフォンは、確かに鐘崎のものだった。
「つい今しがた、うちの組員の一人が持ち帰ってきたものです。スマホの中に我々へのメッセージでも残されたのかと思い、失礼かとは思ったんですが調べたところ、特にそれらしきは見つかりませんでした。たった一人でどちらへ行かれたのかも分かりませんし、もしかして怪我でも負われのかと思ってこちらへ伺ったわけですが……」
相手側も捜していたところをみると、彼らが鐘崎を拉致したという可能性は極めて低いと考えていいだろうか。
「ですが、万が一その騒ぎが我々の目をごまかす作戦だったということも鑑みて、今ウチの組員たちを道内の組事務所に差し向けて様子を探っています」
話を要約すると、こうだ。組長と鐘崎二人きりの会食時に何らかの緊急事態が起こり、鐘崎が姿を消してしまった。考えられる原因として、ひとつには鐘崎自身が組長の目を盗んで自ら身を隠したこと。ふたつ目は組長らによって鐘崎が拉致されてしまったこと、そのどちらかの線が強いと思うと清水は言った。
仮にし拉致だとするならスマートフォンを落としていったことにも合点がいくが、相手側も必死になって行方を追っていた様子から察するに、その線は薄いかも知れない。では、もしも鐘崎が自分で座敷を逃げ出したというなら、何故清水らに連絡をしてよこさないのかという疑問も湧いてくる。
「もしかしたらお怪我を負われていて、スマートフォンも見当たらず、連絡の取りようがないのかも知れません」
清水の言葉に紫月も蒼白となった。
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