77 / 1,212
告げられないほどに深い愛(極道若頭編)
9
しおりを挟む
「源さんにも要らぬ手間掛けてすまねえと思ってはいるが……。だいたい――来る見合いの話といったら大概は裏の世界の組関係だ。俺自身には会ったことも見たこともねえって奴らもいるだろうによ」
半ば呆れ気味で溜め息をつく鐘崎を横目にしながら、周もまたつられたように苦笑する。
「要はお前んところの組織と繋がりを持ちてえってんだろ? 親の思惑はさておき、相手の娘にとってみりゃ、お前さんを一目見ただけで気に入っちまうんじゃねえか?」
「――実際、それの方が面倒だ」
「おいおい、言い草だな」
周が笑う。
「前に何度かそういうことがあったんだ。たまたま仕事を請け負った先の組に出向いた時だ。そこの娘が俺を気に入ったとかなんとかで、縁組みを前提に付き合わねえかってしつこく誘われてな。それこそ断るのに苦労したもんだ」
「相手の女が好みじゃなかったってわけか?」
「……俺にゃ女の好みなんてもんは元々ねえさ。そもそも結婚自体するつもりはねえしな」
「まあ――そうだろうがな」
原因は言わずもがなだ。鐘崎が以前から一之宮紫月に惚れ込んでいるのを周も知っているからだ。
「だったら早えとこ一之宮の野郎に打ち明けちまえばいいものを。何だってそう悠長にしていやがる」
他人様の恋路に口を出すつもりはないが、それにしても呆れるほど一途に想っているくせに――と、つい節介を焼きたくもなる。
「俺から見りゃ、お前ら二人は相思相愛だと思うがな」
肩をすくめる勢いで呆れ気味にそう言われて、鐘崎の方も苦笑させられてしまった。
「――さぁ、どうだかな。紫月のヤツからそんなことは聞いたことがねえ」
「そりゃ、お前が云わねえからだろ? 一之宮もああ見えて案外健気なところがあるのかも知れねえぜ。お前さんから告げてくれるのを待ってるんじゃねえのか?」
「正直なところ俺には分かんねえ……。これでも俺はヤツに惚れてるって――常日頃態度に出しているつもりだがな」
軽いスキンシップはしょっちゅうだし、時には抱き締めたりもするが、紫月の方は拒まずとも、一向に応えるつもりがあるのかないのかよく分からないのだと鐘崎は言った。
「――ったく! 焦れってえったらこの上ねえな。ンなもん、ガッと組み敷いちまえば事足りるだろうによ」
「他人事だと思って適当なこと抜かしてんじゃねえ。そういうてめえはどうなんだ。見たところ女の一人もいねえようだが――?」
「俺は単に女に構ってる時間がねえだけだ。今は社のことで手一杯だからな」
確かに周は生まれ育ったファミリーの元を離れ、一人この日本で起業し一企業を築いている男だ。彼曰く、立ち上げる際には父親から元手を助力してもらったそうだが、それもわずか三年かそこらですべて返済したという。ここからが恩返しの本番なのだと、今は社を大きくすることで手一杯なのだろう。
半ば呆れ気味で溜め息をつく鐘崎を横目にしながら、周もまたつられたように苦笑する。
「要はお前んところの組織と繋がりを持ちてえってんだろ? 親の思惑はさておき、相手の娘にとってみりゃ、お前さんを一目見ただけで気に入っちまうんじゃねえか?」
「――実際、それの方が面倒だ」
「おいおい、言い草だな」
周が笑う。
「前に何度かそういうことがあったんだ。たまたま仕事を請け負った先の組に出向いた時だ。そこの娘が俺を気に入ったとかなんとかで、縁組みを前提に付き合わねえかってしつこく誘われてな。それこそ断るのに苦労したもんだ」
「相手の女が好みじゃなかったってわけか?」
「……俺にゃ女の好みなんてもんは元々ねえさ。そもそも結婚自体するつもりはねえしな」
「まあ――そうだろうがな」
原因は言わずもがなだ。鐘崎が以前から一之宮紫月に惚れ込んでいるのを周も知っているからだ。
「だったら早えとこ一之宮の野郎に打ち明けちまえばいいものを。何だってそう悠長にしていやがる」
他人様の恋路に口を出すつもりはないが、それにしても呆れるほど一途に想っているくせに――と、つい節介を焼きたくもなる。
「俺から見りゃ、お前ら二人は相思相愛だと思うがな」
肩をすくめる勢いで呆れ気味にそう言われて、鐘崎の方も苦笑させられてしまった。
「――さぁ、どうだかな。紫月のヤツからそんなことは聞いたことがねえ」
「そりゃ、お前が云わねえからだろ? 一之宮もああ見えて案外健気なところがあるのかも知れねえぜ。お前さんから告げてくれるのを待ってるんじゃねえのか?」
「正直なところ俺には分かんねえ……。これでも俺はヤツに惚れてるって――常日頃態度に出しているつもりだがな」
軽いスキンシップはしょっちゅうだし、時には抱き締めたりもするが、紫月の方は拒まずとも、一向に応えるつもりがあるのかないのかよく分からないのだと鐘崎は言った。
「――ったく! 焦れってえったらこの上ねえな。ンなもん、ガッと組み敷いちまえば事足りるだろうによ」
「他人事だと思って適当なこと抜かしてんじゃねえ。そういうてめえはどうなんだ。見たところ女の一人もいねえようだが――?」
「俺は単に女に構ってる時間がねえだけだ。今は社のことで手一杯だからな」
確かに周は生まれ育ったファミリーの元を離れ、一人この日本で起業し一企業を築いている男だ。彼曰く、立ち上げる際には父親から元手を助力してもらったそうだが、それもわずか三年かそこらですべて返済したという。ここからが恩返しの本番なのだと、今は社を大きくすることで手一杯なのだろう。
16
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる