極道恋事情

一園木蓮

文字の大きさ
上 下
51 / 1,212
漆黒の人(香港マフィア頭領次男坊編)

51

しおりを挟む
「――怖えか?」
 そっと耳元で訊くと、冰はブンブンと一生懸命に首を横に振っては、熱のこもった大きな瞳を恥ずかしそうに細めながら見上げてくる。
 そんな彼の白い指先を掴んで自らの指を絡ませると、先刻よりもゆっくりと穏やかな仕草で唇を重ね合わせ、幾度も幾度も触れては離し、触れては離しといったように口付けた。
 冰にとってはそんなゆるやかでやさしい扱いが、かえって焦らされているようで、もどかしいのだろう。次第にゾワゾワとした欲情を煽られ、いつもとは違う感じたこともないような自我が引き出されるようだった。
 もっと激しく、有無を言わさずというくらい乱暴に貪って欲しい。獣のように襲い掛かってめちゃくちゃにして欲しい。
 自分の中にこんな激しくも淫らな感情があったのかというくらい、冰の身体は指一本爪の先まで、髪の一本に至るまで目の前の周を求めてやまなかった。
白龍バイロン……白龍バイロン……。俺、怖くなんか……ない。全然ないから……ッ、白龍あなたになら……何されても嬉し……」

 だからお願い――。優しくするより、気遣ってくれるより、もっと。そうもっと――!

「……願い……、めちゃくちゃに……して」

 普段ならば絶対に口にしない言葉だろうが、それがすんなりと出るほどに乱されたくて堪らなくなっている。全身が欲情そのものと思えるくらいだ。
「……ッカやろ……なんてこと言う……。お前、俺を獣にしてえのか?」
「……ん、うん、そう……」

 そうなってくれたらどんなに嬉しいか……!

「好き……白龍バイロン……ッ、大好き……だから! どんなふうにでも……されたい……俺」
「――ったく! どうなっても知らねえぜ」
「……ん、それが……いいん……だ」
 艶めいて掠れたその声を合図というように、今までのゆるやかだった愛撫が次第に激しさを増していく――。
白龍バイロン……そう、もっと……」

 激しく求めて!
 この世がひっくり返るくらいめちゃめちゃにされたいんだ――!

 望むだけで伝わったかのように繋がれた指には力がこもり、やさしく撫でられていた髪ごとむんずと掴まれるように荒々しさを増していく。唇全体を吸い込まれるように貪られ、歯列を割って舌先が口中を掻き回す。
 ふと重なり合った身体の中心――周の厚みのあるバスローブ越しであってもはっきりと伝わるくらいに硬く怒張した雄の感覚が腹を撫でたのに、冰は全身を電流で貫かれたかのような心持ちになった。
白龍バイロン……ッ、好き……大……好……!」
 もっと気の利いた台詞で今の高揚した気持ちを伝えようと思えども、冰にはありきたりの言葉しか思い付かない。ただ欲しくて仕方ないといった思いのままに、無我夢中で目の前の広い胸にしがみつくのが精一杯だった。

 胸元のボタンを器用に弾かれ、腰から背中を撫でるようにシャツの裾から両手を入れられて捲し上げられる。
 風呂上がりでラフな普段着だった冰のボトムにはベルトもしていなかった為に簡単にジッパーを下ろされてしまう。周の温かくて大きな掌が、ボトムの中のボクサーブリーフの中に突っ込まれて、尻をわし掴みながら撫で回す。
 思わず腰が浮いてしまい、一等敏感な身体の中心が周の眼前に突き出されるような格好に持っていかれてしまう――。
 前はかろうじてずり下ろされていなかったブリーフの上から既に硬く立ち上がった雄を甘噛みされて、冰は堪らずに嬌声を漏らした。
「……ッあ……、や……っ白龍バイロン……!」
 先走りの液が下着に染みて、濡れた跡が欲情の度合いをはっきりと示している。周は焦らすようにわざと下着越しに幾度もそこを甘噛みした。
「や……ぁあ……ッ、願い……白龍バイロン……!」
 布一枚がもどかしくて仕方ないのだろう。冰は腰を突き出しながらも、自ら下着を取らんと無意識に手を伸ばした。直にどうにかして欲しくて堪らないのだ。
 周はすべて分かっていながら伸ばされた冰の手を取り上げると、自らの口で下着を摘まんでずり下ろし、あらわになった熱を口中に含んで舐め上げた。
「……はッ……ぁ……っ、や……ぁあ……!」
 舌先を尖らせて鈴口をつつき、すっぽりと咥え込んで根元から先端までの竿を一気に吸い上げる。ほんの数回それを繰り返しただけで、冰は両脚を痙攣の如くバタつかせて、今にも絶頂に達してしまいたいといわんばかりに自ら腰を揺らした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

イタリアマフィアは殺しはできても恋愛不器用

タタミ
BL
「す、き……好きです!バートさんの、ことがっ」 ファミリーの殺しを担うマフィア・バートは、ある日下っ端のフィルから告白を受ける。 しかし、殺しにかまけて血塗られた人生を送ってきたバートには、恋愛感情を理解する情緒がなかった。 好きだの、愛だのわからないしくだらない。 今までがそうだったのだから、これからもそうだ。 フィルなんかに心動かされることなどない、と思っていたバートだったが──

処理中です...