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漆黒の人(香港マフィア頭領次男坊編)
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「白龍……! 白龍、あの、俺……俺さ……」
周はしがみ付いてくる冰の頭ごと抱き締め返しながら、その言葉に耳を傾けた。
「ん――? なんだ? 何でも言え。お前の思うままを何でも聞かせろ」
「ケーキ……」
「――? ケーキがどうした」
「ケーキが好きになったって言ったでしょ? 甘いお菓子が好きな人の影響だって……初めてあのホテルのラウンジでケーキを食べた時。俺、白龍がケーキ好きになったのは……恋人の影響なのかって思ってたんだ」
「恋人? 誰の?」
「白龍のだよ……!」
「――何でケーキから恋人なんていう発想が出てくるんだ」
「だって甘いものが好きっていえば、普通女の人だって思うじゃない! それに白龍、めちゃめちゃカッコいいし、恋人がいない方が不自然だって思って。でもそう考えたら……なんかすごく苦しくなった。もしも白龍に恋人がいたらって思ったら……すごく苦しくて……俺」
「もしかして――お前の様子がおかしかったのはそのせいか?」
周は珍しくも驚かされてしまっていた。
「そ……んなに……おかしかった?」
「ああ。元気がねえし、口数も少ねえ。てっきり香港が懐かしくなったホームシックかと思っていたが――」
「……ん、ホームシックとかじゃなかった……」
「お前も俺に惚れてる。そうだな?」
「惚……ッ、うん……うん、俺」
まさか白龍がそんなふうに想ってくれてるなんて、これっぽっちも思わなくて――その言葉は言わせてもらえなかった。むんずと髪ごと掴まれ、引き寄せられた冰の唇は、周によって塞がれてしまったからだ。
冰にとっては初めてともいえる激しいほどの口付けは、長く熱く貪る如く濃厚なものだった。
「……白……龍」
真っ赤に染まった頬の熱を隠すように、冰は逞しい肩にしがみついたままで視線を泳がせる。
「――俺の”惚れてる”ってのはこういう意味だぞ?」
すべてを奪われても怖くねえのか――? というように、真っ直ぐな視線が射るようだ。黒曜石の瞳の中には雄の欲情がゆらゆらと赤い炎のように揺れている。まさに焔の如くだった。
「ん……うん……白龍、俺……好き……大好き!」
今の気持ちをどう伝えていいか、戸惑うように恥ずかしげにうつむきながらも懸命にそれだけを口にする。まだ若く、経験の少ない純朴な冰にはそれが精一杯なのだろう。周にはそんな仕草のすべてが愛しくて堪らなかった。
周はそのままグイと冰を姫抱きすると、中華風の装飾が美しいベッドまで連れて行って、ふわりとそこへ座らせた。
ゆっくりと押し倒し、スレンダーな身体ごと包み込むように覆い被さる。おそらくは男性同士でこういった行為が初めてなのだろう彼を怖がらせないように、周は愛おしむ気持ちのままに横たわる彼の髪をゆるりと指に絡めては撫で上げた。
周はしがみ付いてくる冰の頭ごと抱き締め返しながら、その言葉に耳を傾けた。
「ん――? なんだ? 何でも言え。お前の思うままを何でも聞かせろ」
「ケーキ……」
「――? ケーキがどうした」
「ケーキが好きになったって言ったでしょ? 甘いお菓子が好きな人の影響だって……初めてあのホテルのラウンジでケーキを食べた時。俺、白龍がケーキ好きになったのは……恋人の影響なのかって思ってたんだ」
「恋人? 誰の?」
「白龍のだよ……!」
「――何でケーキから恋人なんていう発想が出てくるんだ」
「だって甘いものが好きっていえば、普通女の人だって思うじゃない! それに白龍、めちゃめちゃカッコいいし、恋人がいない方が不自然だって思って。でもそう考えたら……なんかすごく苦しくなった。もしも白龍に恋人がいたらって思ったら……すごく苦しくて……俺」
「もしかして――お前の様子がおかしかったのはそのせいか?」
周は珍しくも驚かされてしまっていた。
「そ……んなに……おかしかった?」
「ああ。元気がねえし、口数も少ねえ。てっきり香港が懐かしくなったホームシックかと思っていたが――」
「……ん、ホームシックとかじゃなかった……」
「お前も俺に惚れてる。そうだな?」
「惚……ッ、うん……うん、俺」
まさか白龍がそんなふうに想ってくれてるなんて、これっぽっちも思わなくて――その言葉は言わせてもらえなかった。むんずと髪ごと掴まれ、引き寄せられた冰の唇は、周によって塞がれてしまったからだ。
冰にとっては初めてともいえる激しいほどの口付けは、長く熱く貪る如く濃厚なものだった。
「……白……龍」
真っ赤に染まった頬の熱を隠すように、冰は逞しい肩にしがみついたままで視線を泳がせる。
「――俺の”惚れてる”ってのはこういう意味だぞ?」
すべてを奪われても怖くねえのか――? というように、真っ直ぐな視線が射るようだ。黒曜石の瞳の中には雄の欲情がゆらゆらと赤い炎のように揺れている。まさに焔の如くだった。
「ん……うん……白龍、俺……好き……大好き!」
今の気持ちをどう伝えていいか、戸惑うように恥ずかしげにうつむきながらも懸命にそれだけを口にする。まだ若く、経験の少ない純朴な冰にはそれが精一杯なのだろう。周にはそんな仕草のすべてが愛しくて堪らなかった。
周はそのままグイと冰を姫抱きすると、中華風の装飾が美しいベッドまで連れて行って、ふわりとそこへ座らせた。
ゆっくりと押し倒し、スレンダーな身体ごと包み込むように覆い被さる。おそらくは男性同士でこういった行為が初めてなのだろう彼を怖がらせないように、周は愛おしむ気持ちのままに横たわる彼の髪をゆるりと指に絡めては撫で上げた。
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